RCEP:中国で開催される会合を前に、医薬品の流通を犠牲にしないよう各国に要請

2016年10月17日掲載

10月17日から21日にかけて、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)貿易協定が中国・天津で開催される。国境なき医師団(MSF)は16ヵ国の交渉参加国に対し、この協定内で医薬品の流通を妨げる条件は例外なく拒否するよう強く求める。9月14日に国連事務総長「医薬品アクセスに関するハイレベル・パネル」が発表した報告書は、医薬品の流通を阻害しかねない貿易協定の影響について警告しており、各国はこの勧告に従うべきだ。RCEP参加国には、安価なジェネリック薬(後発医薬品)輸出国であり「途上国の薬局」として知られているインドのほか、オーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国とASEAN10ヵ国が含まれている。

薬価の高騰を促すデータ保護

漏えいしたRCEP協定の交渉文書によると、日本と韓国が製薬会社の特許期間を延長し、臨床試験データ独占を最悪の形で導入する条項を提案していることが明らかになった。施行条項によって濫用を無制限に認めるもので、ジェネリック薬メーカーから患者に渡るジェネリック薬の流れを阻む条項が数多く含む。

特に問題となっている条項は「データ保護」に関するもので、特許の障壁がない場合でも、ジェネリック薬の薬事登録と国内での流通を妨げる法的保護措置である。データ保護が米国・ヨルダン自由貿易協定の一環として導入されたヨルダンを例に挙げると、2002年から2006年にかけて、2001年以降登録・販売にいたった103の医薬品のうち81製品は、データ保護に妨げられてジェネリック薬による競争がなく、隣国エジプトに比べて価格が800%に達したものもあった。

MSF必須医薬品キャンペーンの薬剤師、ジェシカ・バリーは「ある国がデータ保護を認めると、安価なジェネリック薬が市場から押し出されて価格が急騰するのを見てきました。RCEP協定の交渉担当者は製薬企業に対して、これまでより長期にわたって法外な価格を請求する手段を与えるべきではありません」と話す。

「途上国の薬局」インドへの影響

この協定に含まれている有害な知的財産条項は、全ての交渉参加国にとって不利益である一方、インドがこの協定に参加していることは特に懸念すべきだ。インドのジェネリック薬産業は、特に途上国の人びとを含む世界の数百万人にとって命綱となっている。例えばインド製の安価なジェネリック版HIV治療薬によって、現在、HIVとともに生きる1700万人の人びとが治療を受けている。MSFがHIV、結核、マラリアの患者を治療するために購入する全医薬品の3分の2は、インドで製造されている。

もしインドが、RCEP協定に含まれる医薬品の流通を妨げる粗悪な条項に署名すれば、ジェネリック薬の製造と輸出が危うくなる。しかしインドは、薬剤耐性結核やウイルス性肝炎、非感染性疾患、薬剤耐性など、新たな公衆衛生対策に不可欠な安価なジェネリック薬とワクチンを提供してくれることを世界から期待されている。

MSFインドの事務局長、ピーテル・ポール・ド・フローテは「MSFの活動では、HIVと結核と診断された数十万人が、インド製の安価なジェネリック薬のおかげで現在も元気に暮らしています。これは市場競争を促す、インド特許法が持つ進歩的な公衆衛生面のセーフガードなしには不可能だったことです」と話す。「私たちはRCEP協定の交渉国に対し、インドで製造される命を救う安価な医薬品の流通を危険にさらしかねない有害な条項を、この協定から全て削除するよう呼びかけています。世界各地の途上国に住む数百万人の命がこの貿易協定にかかっているのです」

人権保護にも反する貿易協定

MSF必須医薬品キャンペーン政策分析ディレクターのロヒト・マルパニは「国連事務総長『医薬品アクセスに関するハイレベル・パネル』が発表した報告書は、知的財産権保護の措置を強めた貿易協定は、二国間協定でも地域協定でも、各国による医薬品の流通推進策を妨げ、人権に反するとしています」と話す。「RCEP交渉国がこの報告書の勧告に留意し、医薬品の流通にとって粗悪な取引に署名する前に十分考慮してくれることを願っています」


参考資料:Trading Away Health:The Regional Comprehensive Economic Partnership(英語)

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