ギリシャ:高価なワクチンが難民児童の予防接種の障壁に

2016年07月15日掲載

国境なき医師団(MSF)は、中東などからの難民が滞在するギリシャ国内の複数の難民キャンプなどで、子どもを対象にワクチン接種活動を行っている。この数週間で接種を行ったのは、生後半年から15歳の合計5000人以上。ワクチンの対象は10の疾患だが、そのひとつである肺炎は今も世界の5歳未満児の単独の死因として最も多く、危機的状況を生きる子どもには特に脅威となっている。しかし肺炎球菌(※)ワクチン(PCV)には、各国政府やNGOに法外な価格が課されており、MSFは価格の引き下げを要請しているが実現に至っていない。

  • 重症肺炎を引き起こす菌の一種

世界最低価格の20倍

MSFは、緊急事態に携わる各国政府と人道援助団体向けにPCVを値下げするよう、肺炎ワクチン生産者であるファイザーとグラクソ・スミスクライン(GSK)の2社に求めてきた。子ども1人の予防を完了するには、3回のPCVの接種が求められる。今回ギリシャでは、接種1回分あたり60ユーロ(約6900円)の価格で国内の薬局から購入したが、これは世界最低価格である接種1回分あたり約2.80ユーロ(約320円)の20倍に及ぶ。

肺炎ワクチンの世界最低価格が適用されるのは、Gavi―ワクチン同盟を介した世界最貧国への販売のみ。ギリシャでは、難民など窮地に置かれた子どもたちへの接種を行っていながら、MSFを含めた人道援助団体は最低流通価格でのワクチン調達ができない。

また今回の集団予防接種でMSFが用いたワクチンのうち、PCVに加え6種混合ワクチンも法外な価格となっており、接種1回分あたり約65ユーロ(約7500円)に設定されている。

製薬企業は価格引下げを拒否

MSFギリシャの医療活動支援ユニットディレクター、アポストロス・ヴェイジス医師は、現代でも最大級の危機を生きる子どもたちを守る手立てが必要であり、ファイザー社とGSK社は肺炎ワクチンの価格を引き下げるべきだと話す。「シリア、イラク、アフガニスタンでは保健医療システムが崩壊し、避難キャンプの内外で暮らす子どもたちの大部分が自国や避難の途中で予防接種を受けられずにいます。そうした子どもたちの生活環境はとてもひどく、生き延びるための避難で健康が損なわれるべきではありません。子どもたちを肺炎などの致命的な病気から、何としても守らなければならないのです」

MSFは危機に見舞われた子どもたちを肺炎から守るため、ファイザー社およびGSK社との価格引き下げ交渉を6年以上にわたり試みてきた。これまでのところどちらの企業も価格引下げを拒否しており、危機の中で暮らす人びとを守るための解決策は見出せていない。

MSFは2016年5月、危機に見舞われた人びとと全ての開発途上国を対象に、子ども1人あたり5米ドル(約520円/全3回接種)まで価格を引き下げるよう求めた、170ヵ国41万6000人以上の署名をファイザー社に手渡している。

MSFは5月、ギリシャ・マケドニア共和国の国境沿いに位置するイドメニで3000人の子どもにワクチンを接種し、その後、ギリシャ本土のアッティカ地方の複数キャンプ、サモス島、首都アテネへ展開。さらに今後何週かは、保健省と連携し、イピロスとレスボス島のキャンプの子どもたちにワクチン接種を行う。

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