シリア:前線が近づき立ち往生する人びとに避難先を─MSF、トルコと欧州連合に国境開放を要請

2016年06月03日掲載

シリア北部・アザーズ郡では、推定10万人が過激派組織「イスラム国」 の前線とトルコ国境の間で身動きが取れない状態に陥っており、トルコ国内の避難先にたどりつけるよう、トルコ側の国境開放が求められている。国境なき医師団(MSF)は、ヨーロッパは倫理的・法的な義務に従って、紛争を逃れてくる人びとに対し庇護を約束しなければならないと主張。MSFがアザーズ郡で運営する病院は5月27日、前線が近づいたため閉鎖に追い込まれている。

「トルコだけが頼り」

現在も数kmしか離れていない場所で戦闘が行われており、人びとは戦闘に巻き込まれ、「イスラム国」の支配下に置かれる差し迫った危険にさらされている。アザーズ郡にあるMSFのアルサラマ 病院で看護チームリーダーを務めるヤヒア・ジャラドは「なんとか対処しよう、家を失ったことも忘れようと努めていますが、孤立地域から動けず、行き場を失っているのが現実です」と話す。マレア町では既に数千人が「イスラム国」に包囲されている。

MSFで中東地域のオペレーション・ディレクターを務めるパブロ・マルコは「トルコ政府とトルコの人びとは莫大な労力をかけてシリア難民を助けており、既に300万人近い人を受け入れています。今アザーズの人びとにとっても、トルコだけが頼りです。私たちはトルコに対し、再びその寛容さを発揮してアザーズで身動きが取れなくなっている人びとに対して国境を開いてくれるよう、要請しています」と話す。

シリア難民に対して国境を閉じるという欧州連合(EU)の恥ずべき決定は、援助の債務を放棄しているだけでなくトルコが新しい難民を受け入れづらい状況をつくっている。「EUは、難民の渡欧を防ぐ方法に固執するかわりに、トルコと連携してシリア難民を対象とした難民審査を加速し、まずアザーズから来る人びとに対応すべきです」とマルコは続ける。

「イスラム国」の前線まで5km

身動きの取れない状態に置かれた民間人は、わずか25km2という狭い場所に追い込まれている。片側では5kmと離れていない場所に「イスラム国」の危険な前線が迫っており、反対側では、クルド人支配下にあるアフリーン地区とトルコ国境があり、国境は急患以外には閉ざされている。マルコはまた、「軍事攻撃から逃れるため数え切れないほどの移動を重ねてきたアザーズの人びとには、もう残された避難場所はありません。アザーズ郡内に残っていた世帯や、子ども、高齢者は、シリアに残ることを希望し続けていたか、出て行くすべがないためにやむなく残っていたかのどちらかですが、彼らの命は危険にさらされています。国際社会は、彼らが避難する権利を保障すべきです」と話す。

MSFをはじめとした団体は、過去数ヵ月間アザーズの人びとに援助を提供してきた。市場や病院が爆撃され、戦闘から全村避難した場所をいくつも見てきた。MSFの現地スタッフの大半は自身も避難者であり、数万人の人でごった返しパンク状態にあるキャンプか、最低限の生活基盤もない非公式キャンプに滞在している。

5月27日、前線が接近したためMSFはアルサラマ 病院にいた患者を避難させ、病院の閉鎖に追い込まれた。MSFは現在も患者の容体安定化と他の施設への移送を行なっており、避難者に救援物資を配布している。

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