シリア:5年目に突入するシリア内戦——医療施設・医療者への攻撃で援助活動は停滞

2015年03月12日掲載

シリア内戦が5年目を迎える。長期にわたる紛争で保健医療体制は荒廃、待望される援助も武力衝突に巻き込まれている多くの人びとのもとに届いていない。医療施設や医療者への攻撃も相次ぐ中、国境なき医師団(MSF)も活動を制限せざるを得ない状況にある。膨大な医療ニーズに対する援助の拡大が求められている。

最低限の医療すら受けられない事態

国境なき医師団(MSF)インターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は「ぼっ発から4年経つこの内戦では相変わらず、民間人と戦闘員の区別もなく残酷な暴力行為が見られ、保健医療要員・施設の保護規約の尊重もありません。人命の喪失と民間人の苦痛が耐えがたい水準に達していながら、人道援助がこれほど限定的な現状は容認できません」と訴える。

シリアの保健医療体制は4年に及ぶ紛争で荒廃。物資と優秀な医療従事者の不足や、医療施設への攻撃が原因で、最低限の医療すらほとんど望めなくなっている。国内第2の都市アレッポでは紛争ぼっ発前、推計2500人の医師が勤務していたが、現在開業している病院に残る医師は100人に満たない。その他の医師は市外に逃れて国内避難民となるか、拉致や殺害の犠牲となっている。

MSFでも創立以来44年の歴史の中で最大規模の医療プログラムを展開すべきところだが、現実はそれができていない。なぜできないのか。

活動を拡大できない理由

徐々に悪化していく安全状況と、2014年1月の過激派組織「イスラム国」によるスタッフ5人の拉致を受け、MSFは活動の縮小を余儀なくされた。拉致という重大な事件により、「イスラム国」支配地域の医療施設が閉鎖に追いやられただけでなく、MSFの外国人スタッフの大部分がシリア国内で活動することが困難となった。スタッフの安全確保がもはや確実ではなくなったため、とリュー医師は話す。

MSFは5ヵ月にわたるスタッフの拉致・拘束の後、「イスラム国」支配地域から撤退した。またその一方、政府統治地域では今日まで医療プログラムの立ち上げにすら至っていない。

MSFは現在も国内6ヵ所で医療施設を運営し、政府統治地域と反政府組織支配地域にある100以上の医療施設を支援するネットワークを構築。このネットワークにより、献身的なシリア人医療者たちが、多くの場合極めて危険な状況に置かれながらも職務を継続し、紛争で身動きのとれない人びとに最低限の医療を届けることが可能になっている。しかし、こうした有意義な支援も限られた場所でしか実践できず、国内の医療者が直面する膨大なニーズに対応するには程遠い。

リュー医師は「シリアでは大規模な国際人道援助が切実に求められています。MSFも過去の数多くの紛争地域における実績の通り、援助が民間人に届き、MSF自らが安全で効果的な活動を行えるよう、紛争の全当事者と話し合う構えです。それが実現しない限り、人びとの命綱は、シリア人医師と民間人活動家のネットワークだけです。シリアの人びとのために私たちがもっとできること、すべきことがあるのです」と訴えた。

<参考情報>
MSFは周辺国のレバノン、ヨルダン、イラクでもシリア人難民を対象とした医療援助プログラムを続けている。シリア危機の概況報告書(日本語)はこちら:

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