モロッコ:MSF、 欧州に向かう移民への性暴力を非難。現地当局とEUに対策を求める

2010年04月01日掲載

2010年3月、国境なき医師団(MSF)は報告書「性暴力と移民:モロッコで窮地に陥ったサハラ以南アフリカ諸国出身女性の隠された現実」(英語)を発表した。同報告書によると、2009年5月から2010年1月の間に、ラバトとカサブランカで活動するMSFの治療を受けた63人の移民女性(うち21%は未成年者)のうち3人に1人が、出生国、旅の途中、またはモロッコ国内で1回以上の性的暴行を受けたことがあると証言している。女性たちの多くは、紛争に関連した暴力、あるいは強制的な結婚やドメスティック・バイオレンスから逃れるため、自国を離れざるを得ない。

MSFはモロッコ政府に対し、性暴力や売春の強要など性的搾取を受けている移民の身の安全や医療ケアの改善を求めている。また、欧州連合(EU)加盟国は、厳格化しつつある各国の移民・難民抑制政策が、移民のなかでも特に弱い立場にある女性や少女の健康と安全にもたらす深刻な影響を認識するべきである。自らが体験した苦痛についてあえて話そうとする女性はほとんどいないため、MSFが収集した情報は全体のごく一部である。今後、モロッコ当局とEU加盟国が対応すべき問題ははかりしれないほど大規模になっている可能性がある。

自国で男性集団に性的暴行を受けた後、紛争を逃れるため国外へ脱出してきた26歳のコンゴ人女性はパスポートを持っていなかったため、トラック運転手が彼女を座席の下に隠し、モーリタニアからモロッコまでの密入国を仲介した。女性の証言によると、旅の途中、トラックは砂漠の真ん中で止まった。 「運転手とその友人が口論を始め、それから運転手は私に近づいてきて、私を殴りました。私が倒れると、運転手は私の胸をつかみ、私を罵倒しました。それから運転手の友人が私をレイプしました。私は叫び声を上げましたが、砂漠の真ん中なので誰にも聞こえません。レイプが終わると彼らは逃げていきました」 その後、彼女は別の車の運転手に助けられ、モロッコにたどり着いた。

アルジェリアのマグニアとモロッコのウジュダの国境地帯は、この旅のなかでも特に危険な部分となっている。MSFが得た証言によると、63人の女性のうち、59%がこの地域で性的暴行を受けている。アルジェリアとの国境は公式に閉鎖されているにもかかわらず、モロッコ警察は依然として移民を国境地帯へ追放し続けている。追放は夜間に行われることが多いため、暴行を受ける可能性も高くなる。

モロッコ国内でウジュダの市場に向かっていたところを逮捕され、警察署に移送された19歳の移民女性は、既に拘束されていた他の28人のサハラ以南アフリカ諸国出身の移民とともに即時国外退去処分となり、夕刻にはアルジェリアとモロッコの国境地帯へ追放された。この女性は、男性3人と女性3人で歩いていたところを、モロッコ人強盗団に襲われたと証言する。「女性は全員、3人の強盗にレイプされました」

モロッコで活動するMSFのチームは、EUの移民・難民抑制政策の結果として、同国内で身動きが取れなくなり、ヨーロッパにたどり着くことも、自国に帰ることもできない移民の数が増加したことを確認している。弱い立場におかれた非合法な移民たちは、ますます深まる失望感や絶望感を抱えながら、自力で生き延びるしかない状況に追い込まれており、特に女性の場合は事態が深刻である。ウジュダを除いても、MSFが聞き取りをした移民女性の3人に1人が、モロッコ国内で性的虐待を経験している。

MSFの活動責任者、アルフォンソ・ヴェルデュはこう締めくくる。「私たちはモロッコの移民女性たちが直面している現実を無視することはできません。社会的、医学的、心理的、法的サポートを含む包括的な対応策が求められています」

MSFは2000年から、モロッコでサハラ以南アフリカ諸国出身の移民に対する医療援助を行っている。以来MSFはいくつかの医療プログラムを実施し、タンジェ、カサブランカ、ラバト、ウジュダの生活環境の改善に努めている。
-医療援助を補うアドボカシー活動には、政府当局やその関係者に、移民の保護と援助を求めるロビー活動も含まれる。MSFが強調しているのは、サハラ以南アフリカ諸国出身の移民が医療を受けら、彼らの尊厳が守られるようにすることである。2005年に公表した報告書の中で、MSFは、モロッコとスペインの治安当局が移民に対して行った暴力と虐待について記録し、2008年には追跡調査報告を両国の当局に提出した。

2003年から2009年の間に、MSFは2万7431件の診察を行い、このうち4482件(16.3%)は損傷と外傷によるものだった。またモロッコ保健省との緊密な連携のもと、7500人以上を同国の医療施設へと運んだ。

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