EU地中海諸国首脳会議:MSF、EU全参加国に ヨーロッパ南部沿岸に到着する移民の受け入れ改善を要求

2008年07月11日掲載

ロサルノでMSFが不法移民のために運営する診療所の様子。(2006年撮影) ロサルノでMSFが不法移民のために
運営する診療所の様子。(2006年撮影)

7月13日にフランスのパリで開催される欧州連合(EU)首脳会議の場で「地中海諸国連合(Union for the Mediterranean)」が発足することを受け、国境なき医師団(MSF)は、会議の全参加国に対して、ヨーロッパ南部沿岸地域に到着する移民の受け入れ状況を緊急に改善するよう要求する。

2000年以降、MSFはEU南部の境界一帯において、ヨーロッパ沿岸地域に船でたどり着く移民に対する緊急医療援助と健康状態の診断を実施してきた。MSFはこのような移民の状況を深く憂慮しており、この問題に関わる全参加国に対して、移民の健康診断と緊急医療援助の実施を保証するよう要求している。また、EU加盟国が地中海のパートナー諸国との協調を沿岸警備のみに限定するのではなく、国際法に従って移民の受け入れ状況を改善し、緊急医療援助の保証に加えて亡命手続きに関する情報が得られるよう保証することを要求している。

MSFのイタリアにおける活動責任者、アントニオ・ヴィルジリオは語る。「取り締まりと監視を強化しても、ヨーロッパに入ろうとする移民を阻止することはできません。こうした人びとは戦争や暴力、飢餓、そして極度の困窮状態から逃れようとしているのであり、唯一のチャンスは危険な航海に出ることなのです。人びとは、より小型で不安定な船でさらに長い期間航海するようになってきており、以前よりも多くのリスクを冒さなければなりません。2008年に入って、イタリアのランペドゥーサ島で活動するMSFのチームは、移民が以前よりも医療援助を必要とするようになってきていると指摘しています。長期間の船旅という厳しい状況を経た結果、その多くはショック状態、低体温症や日焼けによる火傷に苦しみながら、悲惨な状態で到着します。」

モロッコで活動するMSFのチームは、モロッコとスペインの沿岸地域における境界地帯の取り締まり強化が、移民の取る海路に著しく影響を及ぼしたことに気づいた。取り締まりの結果、モーリタニアやセネガルの南部からスペインのカナリア諸島へ向けて航海するケースが増え、移民の船旅はさらに長くより危険なものになっている。

移民の医療ニーズに応えるため、MSFはスペイン(タリファ、セウタ、メリラ、カナリア諸島)、イタリア(ブリンディシ、ランペドゥーサ)、モロッコ、ギリシャを含む、多くの国の沿岸地域で緊急医療プログラムを実施している。国際医療援助団体として、MSFがヨーロッパへの入り口でも活動を求められるという現状は、現在これらの地域において、移民が利用できる適切な医療援助が不足していることを、如実に示すものである。

イタリアのランペドゥーサ島で、MSFは船で到着する移民に対する健康診断を実施している。毎年1万2千人から1万5千人の移民がこの島に到着しているが、地域の保健当局はこれらのサービスを提供していない。

今年に入って、ランペドゥーサ島で活動するMSFのチームは、到着する移民の数が目立って増えていることを目のあたりにしている。2008年の1月から6月までの間に146艘が着岸したが、2007年の同期間中は71艘だった。チームはまた、航海に出る人びとの構成に変化が生じていることにも気付いている。女性(+11%)と子ども(+4.6%)が増加しており、現在その30%はアフリカの角と呼ばれるアフリカ大陸東部の出身で、ソマリアのように戦時下にある国から来ている。

ギリシャでも、昨年と比較して移民流入の大幅な増加が確認されている。一例として、レスボス島の一時収容センターでは、2008年の1月から5月までの間に報告された移民数は、2004年全体の到着人数の2倍を超えている。

またギリシャの港、パトラ近郊に設けられた仮設キャンプにおいても、イタリアと同様にMSFのチームは、到着する移民構成の新たな変化を記録している。以前はクルド人主体だったが、現在はほぼアフガニスタン人のみとなっている。

戦時下にある国からの移民は亡命希望者と見なされるべきであり、到着後には亡命手続きに関する適切な情報提供が行われなければならない。昨年、ギリシャだけで11万2千人を超える不法移民が到着した。しかし、合計約2万5千人の亡命申請者のうち、移民資格を認可されたのはわずか8人にすぎなかった。

MSFの活動

イタリアでは、MSFのチームは到着直後の健康診断(トリアージ)、およびランペドゥーサ湾での緊急医療搬送のフォローアップを実施している。

ギリシャでは、ミティリニ島(レスボス島)にある移民収容センターで新たに活動を開始した。また、パトラにある仮設キャンプで一次医療と心理ケアを提供し、生活環境の改善にも取り組んでいる。

モロッコでは、サハラ以南出身の移民に対してウジダ、ラバト、カサブランカで移動診療による一次医療を提供し、また治療が必要な患者の公立病院への紹介も行っている。

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