RCEP:有害な知財関連条項が、途上国の患者の“生命線”を断つ恐れ

2018年07月20日掲載

日本やインド、中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16ヵ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉会合が7月17日より、タイの首都バンコクで開かれている。国境なき医師団(MSF)と公衆衛生の専門家は、この貿易協定に有害な知的財産権に関する条項が含まれれば、手頃な価格のジェネリック薬(後発医薬品)へのアクセスに重大な悪影響が及ぶと懸念している。途上国に暮らす数百万の人びとの生命線となる薬や治療の普及が妨げられると危惧されるからだ。RCEP参加国の人口は世界の50%近くを占め、その中には、世界で最も貧しく取り残されたコミュニティも含まれている。 

ミャンマーのMSF診療所の薬局で薬を受け取る患者(2012年1月)ミャンマーのMSF診療所の薬局で薬を受け取る患者(2012年1月)

特許独占と競争の不在はすでに保健予算を圧迫

MSF必須医薬品キャンペーンで医療コーディネーターを務めるグレッグ・エルダー医師は、「ジェネリック薬が入手できなくなったときに、失われてしまう命のことを考えるよう、RCEP交渉参加国には強く求めます」と話す。「現に世界中で何百万もの人びとがインド製のジェネリック薬に頼って生きています。必要とされている治療の前にRCEP協定が立ちふさがるようなことはあってはなりません」

C型肝炎、結核、がん治療に用いられる新薬には、既に世界中で劇的な価格高騰が起きており、先進国の保健医療予算さえも圧迫している。背景には特許の独占とジェネリック薬による競争の不在がある。例えば、日本でC型肝炎治療薬ソホスブビルの価格は推奨治療期間12週間分で、推定4万米ドル(約450万9600円)になるが、インドではこの薬のジェネリック版の価格は12週間分で約87米ドル(約9808円)に設定されている。

RCEP交渉の漏えい文書によると、日本と韓国は、多国籍製薬企業による市場独占を延長・拡大するような条項を推進することで、価格低下につながるジェネリック薬との競争をより長期間にわたって制限し、遅らせようとしている。提案されている条項は、製薬会社の特許期間を延長すると同時に、臨床試験データ独占を最も有害な形で導入するという内容となっており、TRIPSプラス規定として知られる国際貿易規定をはるかに超えている。

エイズアクセス財団でプログラム・マネージャーを務めるチャレルムサク・キッティトゥラクル氏は、「RCEPのこうした有害条項は、製薬企業に無制限の権限を与えるようなものです。日本と韓国は、薬が独占的な高価格となり、各国政府が保健上の責務を果たせなくなるような取り決めの推進を止めるべきです」と訴えている。 

“途上国の薬局”を守れ

こうした有害な取り決めは、RCEP域内はもとより世界中でジェネリック薬との競争を制限し、購入しやすい医薬品の入手に重大な影響を及ぼす可能性がある。インドに対してRCEPの有害な知財条項への同意を促す圧力は高まる一方であるが、懸念すべき事態だ。インドのジェネリック薬メーカーによる市場競争は、過去にHIV治療薬の価格引下げに大きな役割を果たしており、HIV治療薬は対2001年比で99%下がったという実績がある。

MSF必須医薬品キャンペーンの南アジア地域責任者を務めるリーナ・メンガニーは、「ジェネリック薬を製造し“途上国の薬局”と呼ばれるインドに対する悪影響は、どんなものであれ世界の最貧国にはね返っていくでしょう。RCEPの交渉国は、自分たちが署名しようとしているものが引き起こす事態を十分に理解する必要があります」と述べている。 

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