イラク:増え続けるシリア人難民、MSFが医療援助

2013年10月03日掲載

シリア内戦が始まって2年半が経つが、現在も毎日、数千人が国外へと避難する事態が続いている。近隣諸国に避難した人の合計は200万人を超えた。イラクも避難者を受け入れている国の1つだ。国境なき医師団(MSF)はイラク北部で、2012年5月から活動を続けている。

2012年5月以来、MSFは4万2000人以上のシリア人難民が暮らすドホーク県内のドミーズ難民キャンプで活動し、は総合診療と心理ケアを提供している。国境地帯での状況を見守りつつ、緊急ニーズに対応できる態勢を維持している。また、ドホーク市内に落ち着いた7万人ほどの難民の健康上のニーズ調査を進めている。

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山中で7ヵ月待機、そして国外へ

数時間歩き続けて国境を越え、気を失ってMSFの治療を受ける男性 数時間歩き続けて国境を越え、
気を失ってMSFの治療を受ける男性

ゼイナさんは、夫と4人の子どもとともにシリア・イラク国境を越えた。「私たちはシリア北部のテル・ブラクから来ました。家を出てもう7ヵ月になります。村の人は全員出て行きました」とはなす。

ゼイナさん一家は、住まいも仕事もお金も、時には食べ物もないまま、7ヵ月間もシリア国内の山中で生活していた。その後、イラクのカーミシュリーに行くことを決め、山づたいに国境を越えた。「国境は封鎖されていたので、近くの学校に仮住まいをしなければなりませんでした。再び国境が開いたと聞いて早朝に出発しました。国境を越えるのに徒歩で2時間かかりました。ここに来られて本当にほっとしています」

両国国境が2013年8月15日、3ヵ月ぶりに開かれてから、6万人ともみられるシリア人難民がイラク国内のクルド人自治区にたどりついた。再開当日は7000人が越境し、それから数ヵ月間、毎日約800人のシリア人が越境してきている。

安全な避難場所への長い道のり

国境は9月中旬から再び2週間封鎖されたが、その後再開。MSFは、人びとが一斉に到着した場合に対応するため、国境周辺の難民キャンプで受け入れ態勢を整えている。

人びとの多くは、家族や家財を故郷に残し、酷暑の中、不毛の谷間を徒歩で歩き続けて国境にたどりつく。大多数がシリアの首都のダマスカスや北部の町・アレッポから来ているが、最近では、戦闘が激化しているハサカ県からの避難者が増えてきている。

MSFは国境の両側に診療所を設置。一時滞在キャンプへの移送を待っている人びとを対象に、診療を行ったり、水を配給したりしている。一時滞在キャンプは、ドホーク、エルビル、スレイマニア各県で設置が進んでいる。

命の危機に直面して越境を決意

長引く避難生活で慢性疾患の治療を中断している人も少なくない 長引く避難生活で慢性疾患の治療を中断している人も少なくない

MSFのドホーク県での活動責任者であるポール・ヨンによると、患者の多くは子どもや妊婦、そして最近出産したばかりの母親だ。長距離の移動や長時間の待機で、中程度から重度の脱水症状になっている人が多くみられるという。

MSFは、高血圧、ぜんそく、てんかんなどの慢性疾患の患者も診療している。ヨンは「医療体制が崩壊したシリアで、服用などしていた薬が手に入らなかった患者もいます。ショック状態でMSFの診療所に来る患者もいます。いずれも、内戦のシリア国内で避難を続け、命が危うい状況に直面して国境を越えることにした人たちです」と話す。

国境地帯のイラク側では、8月中旬以降、一時滞在キャンプへの移送を待つ人びとを対象に、1040件の総合診療を行った。また、一時滞在キャンプへ到着しても何も持っていない人が多く、貯水容器やビニールシートなどの救援物資を290世帯に配布した。近日中に、エルビル県内の数ヵ所の難民キャンプで総合診療を始める予定だ。一方、シリア側の国境では、MSFは982件の診療を行い、イラクへの越境を待つ3万3000人に水を配給した。

新たに難民として生きる

イラクに入国するシリア人は、クルド人自治区当局、国連の難民担当機関、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による登録を受ける。登録後、イラク北部に多く立ち上げられつつある難民キャンプの1つに移送される。シリアで内戦が始まって以来、国内で何度も避難を繰り返し、“難民”としての生活が始まりつつあった人にとって、難民キャンプがその終着点となるのかもしれない。

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