エチオピア:孤立地域の栄養失調――MSFの治療プログラムで効果

2013年10月02日掲載

エチオピアのアファール州で、国境なき医師団(MSF)が栄養治療・栄養補助の活動を行っている外来治療施設に、ザハリ・ヌルちゃん(1歳)が来院した。祖母のエイサ・ワサイトゥさんが連れて来たのだが、エイサさんは「孫のことは諦めていました。ほかの3人の孫と同じく、ザハリも助からないだろうと思っていました」と話す。

ザハリちゃんは来院時、重度の急性栄養失調で衰弱していた。母親は慢性疾患と精神病を患っており、子どもたちの面倒を見られる状態ではない。エイサさんが唯一の保護者だった。

ザハリちゃんはMSFの援助プログラムの対象者となった。栄養治療センターに入院して2ヵ月、栄養失調治療に加え、肺炎の専門治療を受けたザハリちゃんは少しずつ生命力を回復。数週間前の計量では、体重も3.2kgから4.9kgに増加していた。

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人口の26%が重度栄養失調の地区

MSFの診察を受ける赤ちゃん MSFの診察を受ける赤ちゃん

MSFのナビユ・アヤレウ看護師は「ザハリちゃんを見ると、とてもうれしい気持ちになります。誰もが諦めかけていた命が救われ、元気になったのですから」と話す。

MSFは2013年4月から、アファール州の独特の地形を縦横に移動し、栄養危機に対応してきた。広大な同州で、MSFが活動対象に定めた地域は、都市部から遠く、顧みられない場所だ。州を5つの地域に分けたうち、最も孤立したアファール第4地域のテル地区に、MSFは拠点を置いた。

テルは、寒暖の差が極端な乾季には激しい砂嵐にさらされる。雨季には激しい嵐で枯れ川が奔流となって決壊し、未舗装の道路は不通になる。MSFの活動対象地域は12のケベレ(地方行政区)で、互いの距離が非常に遠く、住民が保健医療から完全に疎外されていた。事前調査では、同地の推計人口8万7374人のうち、26.6%が重度の急性栄養失調にかかっているという深刻な事態が判明した。

アファール州で活動するMSF医療チームリーダーのフランク・カタンブラは「MSFが栄養治療センターに受け入れた症例の大半が、合併症を伴う重度の急性栄養失調でした。合併症の多くは肺炎または結核でした」と話す。MSFは栄養治療に加え、肺炎や結核などさまざまな病気の治療を提供している。

地域の意識が変化、治癒率は8割に

MSFの活動が当初から受け入れられ、順調だったわけではない。サラマ・ハサンさんの生後9ヵ月の赤ちゃんは、MSFの栄養治療センターに3回入院した。ハサンさんは、子どもが栄養失調なんて信じられない、と思っていた。きっと、栄養治療センターから退院する時に“邪悪な風”に吹かれたせいで病気になったのだ、と考えたのだ。

そうした意識も徐々に変わり、現在は、母子ともに大多数の患者の容体が安定している。これまでに合計726人の栄養失調児をこのプログラムに受け入れ、そのうち134人が栄養治療センターに入院。妊婦・授乳期の母親416人を含む中程度の急性栄養失調患者1154人も同プログラムの援助対象となった。

MSFのエチオピアでの医療コーディネーターであるジャン=フランソワ・サンソブールは「治った患者は全体の78.2%に達しました。治療を中止した人が4.5%。この地域では、患者が病院に行くことや、MSFが患者のもとへ行くことが難しく、医療提供は決して簡単ではありません。その点を考慮すれば、かなりの好結果だと思います」と話す。

アファール人は遊牧民で、家畜のための水と牧草を求めて転々とする。彼らの生活のそうした側面が、治療を受けにくい主要因だ。さらに、地理的に移動が難しく、MSFのサポートも届きにくい。そうした環境でも、MSFの活動は現地でも有意義だ。MSF憲章で明文化されている原則に従い、医療援助の提供に加え、アファール人が抱える医療問題を明らかにし、基礎医療提供の必要性を説いている。

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