コンゴ民主共和国:はしかの流行に対応――MSFの革新的な戦略とは?

2013年09月25日掲載

コンゴ民主共和国は、2010年から続くはしかの流行で甚大な被害を受けている。すでに20万人以上が感染し、4500人以上の子どもたちが命を落とした。国境なき医師団(MSF)は、新たなはしか対策の一環として、集団予防接種を実施した。これまでも地元保健省と協力して予防接種を行っており、受けた人は2年間で400万人に上る。同国北部のワンバで活動したテッシー・ファウチュ看護師に話を聞いた。

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熱帯林が広がり、道路もなく……

MSFが提供しているはしかの予防接種を受ける子ども MSFが提供しているはしかの予防接種を受ける子ども

ファウチュ看護師が参加したのは、オリエンタル州での予防接種プロジェクト。同州は、同じく北部地域の赤道州、南西部の西カサイ州、バンドゥンドゥ州などと並び、はしか流行の被害を最も受けている地域だ。

ファウチュ看護師は「はしか流行の兆候が見られれば、どんなに交通が不便でもその地域に赴き、できるだけ多くの子どもたちに予防接種をする必要があります」と話す。現地へ足を運ぶことが集団予防接種の成功の鍵だが、大きな困難を伴う場合もあるという。

例えば、オリエンタル州へ行く方法は非常に限られている。熱帯林が広がり、道路はほとんどなく、あっても未整備で路面状態は劣悪だからだ。ファウチュ看護師は「雨季の前に州都キサンガニからワンバへ向かった時は、片道450kmを移動するのに2日間かかりました。帰りは、車やトラックがぬかるみにはまり込んで動かなくなり、さらに時間がかかりました。」と振り返る。中には、到着まで1週間もかかるケースもあるという。

接種率97%で流行拡大を抑止

こうした孤立地域では予防接種率が低く、多くの5歳未満児がはしかによって命を落としているさらに、若者や成人にも多くの症例が確認されている。MSFはワンバで、予防接種の対象年齢を生後6ヵ月から15歳に設定。感染拡大を防ぐために、一部の成人にも予防接種を実施した。

ファウチュ看護師は「対象人口の95%が予防接種を受ければウイルスの循環が抑えられ、予防接種を受けていない住民への感染リスクも減らせます。ワンバでは、97%にあたる5万人以上の子どもたちに予防接種を実施し、流行拡大を防止することができました」と説明する。この新プロジェクトを実施したMSFチームは、次に西カサイ州へ移動してはしかの流行に備える。

流行地域・周辺地域の2段階で取り組み

MSFは、はしかに関連する死亡率を低下させるために、革新的な2段階戦略を展開している。まず、緊急対応として、はしかの流行が最も著しい地域で集中的に活動を展開する。地域の基幹病院や診療所などを支援し、感染者の治療にあたる。

ファウチュ看護師によると、ワンバでは860人以上のはしかの患者を治療した。また、感染拡大を封じ込めるために、流行地域の住民に予防接種を行った。1日あたり400~500人の子どもたちに予防接種を行い、完了するまで3~4日間かかったという。

2段階目は、流行地域の周辺で集団予防接種を展開する。少ない資源を有効活用するため、はしかの感染者がいる地域を優先し、早期の流行抑制に的を絞った活動を実施した。ファウチュ看護師は「状況に素早く対応するために、当初の予防接種計画に固執せず、その時々で入手した情報に応じて活動しました」と振り返る。

資源の有効活用で課題をクリア

集団予防接種の技術的な課題は、ワクチンを適切に保存するためのコールド・チェーン(低温輸送システム)だ。MSFは、ワクチンを2~8度の環境で保管できるようにコールド・チェーンを集中管理している。断熱ボックスを使用すれば5日間まで低温で保持できるため、孤立地域で集団予防接種を実施する場合でも、現地で電気を調達しなくてよくなる。

ファウチュ看護師は「MSFの活動で、なるべく冷蔵庫を使わずに済ませ、限られた資源を有効活用することで孤立地域でも集団予防接種が可能であることが証明されました」と語る。この戦略を活用すれば、最低限のコストで死亡率を低下させることができる。「この取り組みは、同国の保健省に戦略の有効性を示す意義もありました。最終的には、政府や関連組織がこの戦略を採用してくれることを期待しています」

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