中央アフリカ共和国: 政情不安続き、医療ニーズが急増

2013年09月18日掲載

中央アフリカ共和国は、反政府勢力「セレカ」による首都バンギの制圧から半年が経ってもなお、国内状況が安定していない。国際社会はこの事態を懸念している。フランスは、ようやく自国の外交政策の優先事項にこの問題を組み込んだ。さらに、アフリカ諸国・機関と国連安全保障理事会にこの問題を取り上げるよう求めた。

その間も、情勢不安と新たな緊張状態・暴力が続いている。これまでのところ直接的な被害を受けていない地域も、同様の事態に直面している。国境なき医師団(MSF)は、同国で1996年から継続的に活動し、大勢の患者、暴力の被害者、医療を受けられない人びとのニーズに応える援助を続けている。

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マラリアのピーク時にスタッフ・物資が不足

MSFの診察を待つ母子 MSFの診察を待つ母子

MSFの活動責任者3名は「この国の現状と今後の動向が非常に気がかりです。MSFの現地チームも暴力や安全に関わる事件の増加を実感しています。MSFの患者でもある地域住民が最大の被害者で、予断を許さない状況です」と口をそろえる。

この国が経験してきた数十年におよぶ政治・軍事的混乱は、慢性的な人道・健康危機の状態にまで達している。2013年3月のクーデターで状況がさらに悪化し、いまだに正常化していない。公的保健医療は長年の危機的状況で衰退している。例年どおり、マラリアが流行のピークに達している現在、医療物資・スタッフが不足し、人びとの医療ニーズの増加と緊急性に対応できていない。

さらに、定期予防接種と薬剤供給も滞っている。特にそのあおりを受けているのは結核とHIV/エイズの患者だ。MSF活動責任者の1人であるエレン・ファン・デル・フェルデンは「活動先の医療施設で多くの疾病患者を治療していますが、暴力でけがを負った人の数が急増しています」と話す。

MSF、活動プログラムを拡充

襲撃を受けて人びとが避難し、無人となった村 襲撃を受けて人びとが避難し、無人となった村

国内各地の医療ニーズに応えるため、MSFは既存の活動を改編するとともに、各地で新規プログラムを開始した。ウハム・ペンデ州パウア周辺がその一例だ。この地域は武力衝突や暴力の被害を免れているが、治安は目に見えて悪化している。MSFチームがパウアの中央病院で手術を行った銃創患者は、1日平均6人にも及ぶ。

さらに、大勢の人びとが、迫りくる武装グループの襲撃を避けてパウアになだれ込んだ。避難者の集団移入が、中央病院の小児科、外科、産科、入院、結核治療、予防接種各部門の業務規模に影響を及ぼす可能性がある。

2013年8月5日には、オート・コト州のブリアで15歳以下の子どもを対象とした小児医療プログラムを立ち上げた。MSFの活動責任者であるジョーダン・ワイリーは「この地域は孤立しています。MSFは5月に現地の保健状況を調査し、1週間で788人の患者を診察しています。患者数はそれ以来、増え続けています」と報告する。

全患者のうち、マラリア患者が4分の3以上を占める。また、入院した子ども36人のうち、大半が重症マラリアだった。そのほか、呼吸器感染症や下痢の患者もいた。約500人の子どもが栄養失調検査を受け、入院の必要な子どもはMSFの栄養治療センターで受け入れた。MSFはこの地域で、次回の定期予防接種の支援も行う予定だ。

HIV/エイズ治療中断の患者に薬を供給――ボサンゴア

ウハム州ボギラとボサンゴアでは、緊急プログラムを立ち上げ、多数の栄養失調およびマラリア患者の来院に対応している。ボサンゴア周辺では武装グループ間抗争がたびたび報告されており、戦闘員・民間人の双方に被害が出ている。MSFはこの地域で、マラリア、下痢性疾患、栄養失調、性暴力と銃創を中心とする暴力被害者に活動の焦点を当てている。

ボサンゴアでは1日平均約200人の5歳未満児が診察を受ける。MSFは、3月のクーデター以来、薬物治療を受けられずにいた患者350人に抗レトロウイルス薬(ARV)と抗結核薬を供給した。また、救急産科プログラムも立ち上げた。

ボギラでは多くの世帯が暴力や虐待を逃れ、今もブッシュでしのいでいる。しかし、雨風にさらされ、生活の糧もない。MSFの移動診療チームは連日、病気や栄養失調で入院の必要な子どもを連れて帰還する状況だ。7月には8556件の診療を行った(前年同期は5673件)。

マラリアの5歳未満児、入院患者の8割に――バタンガフォ

ウハム州バタンガフォの病院でも、暴力被害者の受け入れ数が急増。この数週間で、戦闘員・民間人を合わせて18人の銃創患者を治療した。MSFは、同病院とバタンガフォ郊外の複数の医療施設で活動を継続。移動診療チームが週3回、地域を巡回し、帰宅できない避難者を援助している。

マラリアはこの地域でも最もよく見られる病気だ。1~7月の症例数は3万1556件。同じ期間にバタンガフォで入院した患者1818人の83%が、マラリアと合併症(貧血や重度栄養失調)に苦しむ5歳未満児だった。バタンガフォの病院が受け入れた患者数は、前年同期の3万3000人を超え、3万8000人以上にのぼった。

はしか流行の恐れも――ガジ

MSFの診療所の前で説明を聞く患者たち MSFの診療所の前で説明を聞く患者たち

同様に北部のウハム州カボとバミンギ・バンゴラン州ンデレの病院では、1~7月にMSFの治療を受けた人の多くがマラリア患者だった。カボの来院数合計3万5424件のうちマラリア患者は1万4268件(40.3%)、ンデレでは計1万5774件のうち4916件(31.2%)を占めた。同期間にMSFは、支援対象の医療施設11ヵ所で5万2169件の診療を行っている。

マンベレ・カデイ州ガジでは、8月上旬以降、はしかの感染が69件も確認されている。流行を抑えるため、MSFは小児救急プログラムを新たに立ち上げた。MSFの活動責任者であるシルバン・グルクスは「5歳未満児1万2000人を対象に、予防接種プログラムを開始しました。新生児には併せてポリオの予防接種と駆虫治療も行います。この地域では腸内寄生虫がよく見られるのです」と話す。

この新規プログラムには、子どもたちの栄養状態を観察する目的もある。そこで、周辺地域7ヵ所に栄養治療センターが開設され、ガジには重症患者のための容体安定化センターが設置された。数週間で51人の子どもが栄養治療プログラムの対象となり、MSFの支援する複数の医療施設には合計1175件の来院があった。このうち60%がマラリアに関するものだった。皮膚疾患や呼吸器疾患も多く、治療の対象となっている。

首都ではMSFも襲撃対象に――政府に徹底した安全対策を要求

8月27日夜、首都バンギの北部の住民4000~5000人がセレカ軍の急襲を受けて避難。市内の空港の滑走路に滞在し、離着陸を妨げている。また、9月上旬、車でバンギを通過中のMSFチームが、制服の男たちに襲撃された。車が強奪されたが、その後、返還された。

MSFは、こうした襲撃事件やこれまでに直面した安全上の問題を非難する。3月の事件では、バンギのMSF事務所が略奪に遭い、乗り物が盗まれた。MSFは首都内外の国民の保護を徹底するように同国政府に改めて要求する。

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