南スーダン:妊産婦と赤ちゃんの命を守る

2013年09月09日掲載

南スーダンでは、出産がしばしばリスクとなる。特に、西エクアトリア州の妊産婦死亡率は世界で最も高い水準に達する。国境なき医師団(MSF)の助産師たちは、出産の安全性向上のため、伝統的な手法を用いる現地の分娩介助者と連携する。さらに、妊婦型の人形を使って、介助者に安全な技術を伝えている。

MSFは2008年から、西エクアトリア州ヤンビオの病院で活動。母子保健医療を支援し、HIVの母子感染予防プログラムと小児医療・外科医療活動を展開している。同病院の産科部門におけるMSFの活動と、伝統的分娩介助者との連携により、2012年は合計1951件、2013年上半期は合計1254件の分娩介助が行われた。

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安全性の向上と現地状況への配慮

産科聴診器で胎児の発育状況を検査するMSFスタッフ 産科聴診器で胎児の発育状況を検査するMSFスタッフ

MSFのアイシャ・アケロ助産師が「自宅出産の場合、どのような問題に直面していますか?」と介助者に問いかける。1人が「腕から先に生まれてくる子もいるのですが、対処の仕方がわかりません」と答える。アケロ助産師は「最善の対応策は、妊婦をそっとして、病院に連れて行くことです」と答える。

介助者に対しても、妊婦を病院に連れて行って出産させることが奨励されている。しかし、多くの女性が、最終的には自宅分娩を選ぶ。病院までの移動距離が長いこと、移動手段が不足していること、そして文化的価値観が理由だ。そのため、介助者が妊婦の自宅で赤ちゃんを取り上げているケースが多い。

アケロ助産師の活動地は都市圏から遠く離れている。この地域で、アケロ助産師は、介助者が直面する問題について相談を受けている。介助者は、部屋の中心に寝かせた妊婦型の人形を使い、安全な技術を学ぶ。

介助者がよく知る文化的な配慮と最新の産科医療の知識を組み合わせ、母親や子どもが亡くなる事例を未然に防ぐことが狙いだ。「頭が見えたら、もう待ったなしです。分娩を進めなければなりません。ただ、身体のほかの部位が見えた場合の最善策は速やかに医療施設に行くことです」。アケロ助産師の説明が続く。

地域社会との連携を重視

MSFが支援する病院で順番を待つ患者たち MSFが支援する病院で順番を待つ患者たち

南スーダンの妊産婦死亡率は世界で最も高く、世界保健機関(WHO)の発表によると、出生数10万人に対し2045人。主要な死因は分娩後の出血だ。自宅から医療施設の距離が遠く、合併症を発症して手遅れになることも少なくない。過酷な生活環境、マラリアなどの病気の高い罹患率、技能の確かな医療スタッフの不足などから、妊産婦死亡率が世界で最高水準になってしまっているのだ。

伝統的な分娩介助者は、こうした状況下で女性の命を救う要となる。彼らは町で相談を受けたり、妊婦の自宅を訪ねたりするほか、地域社会をよく知っている。妊婦も、介助者を非常に信頼している。介助者との連携は、現地の母子保健向上を目指すMSFの重要な戦略だ。

同州ヤンビオのMSF医療コーディネーターである京寛美智子は「病院で待っているだけではだめです。私たちが地域社会に入っていかなければ、女性たちは病院に来ないでしょう。自宅分娩も、介助者が付き添うことも、この地域の慣習ですから」と話す。

さらに、MSFは介助者に、産科合併症で苦しむ妊婦を、地域の保健医療施設に搬送するように勧めている。ヤンビオの病院には緊急帝王切開を行う設備が整っているためだ。

テレジナ・シモンさんは、州南部のガングラ地区出身の介助者だ。「地域を巡回し、病院出産も可能だということを伝えています」と話す。しかし、常にそうできるとは限らない。「赤ちゃんの頭部が出てきてしまい、母親を病院に搬送する時間がないケースもあります」。このように、あらゆる事態に備えなくてはならないことも認識している。

シモンさんが介助者になろうと思い立ったきっかけは、長女の出産だった。「食事を用意して一緒に食べはじめたところで、娘が痛みを訴えたのです。近寄ってみると、もう赤ちゃんの頭が出ていました」。それ以来、シモンさんは、地域のすべての妊婦に対応できるよう備えている。

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