南スーダン: 人口の6割が消息不明の町、そこで何が......?

2013年08月28日掲載

南スーダンのジョングレイ州ピボール郡では、紛争への不安と洪水被害により、大勢の人びとが人道援助を受けられないでいる。約9万人がブッシュに隠れており、今も安否が明らかでない。国境なき医師団(MSF)が診療所を運営しているグムルク周辺に滞在している約2万8000人の消息は確認済みだが、必要な援助の届いている人はごくわずかだ。

ピボール郡の推計人口は14万8000人。そのうち、周辺国と首都ジュバに避難した3万人と、グムルク周辺に滞在している2万8000人の消息が、現地管轄局によって確認されている。残る約9万人は、安全な場所を求めて郡内を転々としているか、人目に触れない場所にいるとみられる。

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紛争でブッシュへ避難

雨でぬかるんだ道をはだしで歩く少年たち

南スーダンでは、2013年5月に、正規軍のスーダン人民解放軍(SPLA)と民兵組織「ダヴィド・ヤウヤウ」の武力衝突が激化。ピボール郡では、ほぼ全域の住民がブッシュへの避難を余儀なくされた。さらに7月、ルオ・ヌエル人とムルレ人の激しい民族間抗争が、新たな混乱の渦を巻き起こした。

MSF診療所の周辺地域には約2万8000人が滞在している。この辺りは沼沢地で治安も悪い。その中で、人びとの滞在場所は珍しく往来のしやすい地域だ。それにもかかわらず、援助は立ち遅れており、国連による援助対象者の登録も数日前に再開されたばかりだ。

グムルクのMSF診療所は小規模だが非常に忙しく、1日平均90~100件の診療をしている。患者の病気は、雨季の間の数週~数ヵ月、ブッシュに隠れていたことが直接的な原因だ。肺炎などの呼吸器感染症やマラリア、下痢などが多くみられ、で、現在は栄養失調児への対応ニーズも高まっている。

ピボール郡でのMSFの緊急対応コーディネーターであるカロリーナ・ロペスは「皆、グムルクに来ると、食糧配給を1日中座って待っています。大半の人が最近の戦闘で家畜を失い、今年の作付けの季節も暴力的な状況に悩まされました。そのため、大変な窮地に陥っているのです。(配給がすべての人に行き渡っているわけではなく)、とても多くの人が、雨季の夜に空の袋を持って仮設避難所に歩いて戻っていくのです」と話す。

治安悪化で診療所へ行けず

MSF診療所で診察を待つ患者たち

もう1つの懸念は、2013年7月の抗争が激しかったという報告があるにもかかわらず、グムルクに派遣された外科チームが戦闘に起因する負傷を事実上1例も診ていないことだ。グムルクで活動するMSFの外科医マーシャル・ルデックは「傷口がひどく化膿した約20人の子どもと女性を治療しましたが、男性は銃創の外科措置を求めて来た1人だけです。私たちの知る限り、ブッシュで最後に大きな衝突があったのは約1ヵ月前。重傷を負いながら、それほど長く生き続けられる人はいないでしょう」と推測する。

診療所を訪れた患者によると、軍隊の駐留地であるグムルクに来ること自体に不安を抱く人もいるようだ。診療所に来院した女性は「夫はグムルクに足を踏み入れようとしません。町に行けば軍隊に殺され、ブッシュに行けば敵対する民族に殺されるかもしれないと思っているからです」と話す。

ある父親は、肩の銃創が原因で深刻な感染症にかかっている娘を連れて来院した。自身も衰弱している上、雨で洪水の水位が高まり、徒歩2時間の距離を2日間かけて移動した。「ブッシュにはまだ病気の人が大勢います。早く診療所でみてもらわなければ、死んでしまいます」と訴える。

雨季が激しさを増し、生活環境が悪化の一途をたどるピボール郡の状況は依然として危機的だ。広大な湿地帯の移動と輸送には困難が伴う。しかし、MSFは消息の明らかでない約9万人の所在を確認し、その状況を把握、最優先のニーズに対応するため、いっそう力を注いでいく。

一方、グムルク周辺の2万8000人に対する援助は可能な状況だ。ジョングレイ州で活動する各人道援助団体の活動拡大が求められる。

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