ラオス:MSF、母子保健プログラムを新規立ち上げ

2013年01月08日掲載

国境なき医師団(MSF)とラオス政府は、2年にわたる交渉の末、ベトナムとの国境付近にあるラオス北東地域で母子保健プログラムを実施する協定に調印した。実施期間は4年間の予定。

世界保健機関(WHO)の2009年統計によると、ラオスの妊産婦死亡率は405(出生10万対)とアジア諸国の中でも極めて高く、隣国ベトナムの約3倍にあたる。また、5歳未満児の死亡率は70(出生1000対)。東南アジアでは最高で、アジア全域でもアフガニスタンに次いで2番目に高い。

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産科・新生児・5歳未満に援助を集中

MSFとラオス政府による調印式の様子

今回の協定でMSFは、妊産婦・乳児死亡率の高さが顕著であるフアパン県内の5郡で活動を展開する。フアパンは国内で2番目に貧しい県で、社会経済上の問題を数多く抱えている。安全な水や医療施設を利用できる人口は全国平均を大きく下回る。

MSFは同地域で活動する唯一のNGOとなる。対象人口は14万人で、郡病院5ヵ所と診療所10ヵ所に拠点を置き、産科医療、新生児医療、小児医療(5歳未満児が対象)を提供する。

併せて移動診療も実施し、遠隔地や不利な条件に置かれている人びとのニーズにも対応する。また、この地域の検査施設や薬局の改善、上下水道や電気などのインフラ整備にも着手する予定だ。いずれも、新生児や妊産婦の不必要な死を減少させる重要な要素となる。

さらに、プログラムの一環として、自然災害や病気発生へのMSFの対応力強化にも取り組む。すでに物資調達を始めとする基盤整備は始まっており、2013年の第1四半期には医療活動を開始する見込みだ。

貧困・地形・人材難――医療アクセスを阻む3つの壁

ラオス では、国民の約30%が貧困線以下の生活をしていると言われており、その多くはフアパン県のような遠隔農村地域の住民だ。

ラオスの医療制度は、患者の自己負担とコスト回収が前提のため、多くの女性にとって医療サービスは手の届かないものとなっている。こうした経済的障壁に加え、産前・分娩・産後ケアの重要性に対する国民の認識不足が原因で、ラオスの産前ケア受診率および専門技能者に介助された出産の比率はアジア全域で最低水準となっており、出産の85%が自宅分娩だ。

低品質の機材、水道や電力の不備、そして非常に隔離された起伏の激しい地形が、この地域での医療提供をさらに困難にしている。

ラオスにおけるMSFの活動責任者であるシルヴィー・ゴーセンスによると、対象地域の診療所の半数は、雨季には行くことができなくなる。また、多くはまだ水道も電気も通っておらず、徒歩でしか行けない診療所も1ヵ所ある。ゴーセンスは「つまり、この地域の医療の質は極めて低いのです。このことが、多くの女性が自宅分娩を選択し、昔ながらの"産婆"に頼っている理由の1つだと思います」と話す。

有資格者の不足も医療サービスを制限する要因である。従って、本プログラムでは助産専門技能者の教育・訓練を盛り込む。また、病院連携システムを改善し、最も弱い立場にある人びとに焦点をあて、妊娠・出産関連の合併症への緊急対応能力を強化する予定だ。

ゴーセンスは「これほど多くのラオス人女性が出産によって生命を脅かされている現状を見過ごすことはできません。MSFはこれまでも、資源が乏しく死亡率が衝撃的に高かった国で活動してきました。緊急産科ケアは低コストで拡充できます。それによって、妊娠・出産関連の合併症で死亡するリスクを劇的に減らすことができるのです」と説明する。

MSFは、何世代にもわたってラオスの母子に影響をおよぼしてきたこの悲劇的な状況を改善するために、資源の効率的利用と、持続可能な解決策の実行を目指している。ゴーセンスは「そのためにも、ラオス保健省との協力関係に期待しています」としている。

MSFは1989年まで、タイのラオス人難民キャンプで活動していた。1989年から2001年には、ラオスのサラワン、ボケオ、チャンパサックの各県で、タイからの帰還難民に対する援助活動を行った。また、MSFはラオスで初めて抗レトロウイルス薬(ARV)治療を導入。2001年から2008年にかけ、サワンナケート病院およびセーターティラート病院でARV治療を行った。2009年10月から2010年3月にかけては、セコン県カルム郡において台風ケッツァーナの被災者への緊急対応にあたった。

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