ミャンマー: ラカイン州の民族間抗争、MSFの援助活動にも影響

2013年02月07日掲載

ミャンマー西部のラカイン州で民族間抗争が勃発してから8ヵ月。人命が奪われ、大勢の住民が現在も救急医療を受けられずにいる。国境なき医師団(MSF)は、同国担当局や地域の有力者に、ラカイン州の全住民が暴力・虐待・嫌がらせを受けることなく生活し、窮状にある人びとを人道団体が援助できる環境を確保するよう要請する。

MSFはミャンマーで1992年から医療・人道援助活動を続けている。ラカイン州での活動も20年にわたり、HIV/エイズや結核治療のほか、1次医療・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を提供。抗争が勃発する2012年6月以前までは、年間約50万件の診療を行っていた。特に、同州内すべての民族が、2005年以降に、MSFのマラリア治療を受けている。その数は120万人を超える。

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公的医療が機能不全、出産にも大きなリスク

ラカイン州パウットー郡の避難キャンプに滞在する男性が打ち明ける。「女性の身が非常に心配です。私のキャンプには200人以上の妊婦がいます。医療施設での出産は望めません。キャンプで産むしかないのです。医師もいない泥土の上で……」

同州では、ラカイン人のほか、一般に"ロヒンギャ"と呼ばれるイスラム系など複数の民族が暮らしている。

MSFは世界各地の活動の中でも最も大規模なプログラムを、約20年にわたり、同州で展開。1次医療や母子保健医療、マラリア・HIV/エイズ・結核といった病気の治療を提供してきた。

同州は国内で2番目に貧しく、他州に比べて保健医療予算が乏しい。MSFは長年、州内全域で民族や宗教の別なく、大勢の人びとの治療にあたっている。

難民・国内避難民をとりまく過酷な環境

2012年6月の民族間衝突で人命が失われ、非常事態が宣言された。避難した推計7万5000人の多くが住まいを焼失している。同年10月、新たな暴動が人道危機を助長。さらに推計4万人が避難を余儀なくされた。避難キャンプは急造で、住居・水・衛生設備・食糧・医療が不足している。公式推計によると、避難した人びとの大多数がイスラム教徒だという。

一方、自宅にとどまっている人も多い。しかし、保健医療体制が復旧しておらず、医療を受けることが非常に難しくなっている。

隣国バングラデシュに逃れた人も多い。同国では既に30万人のロヒンギャ人が暮らしているが、大半が正式な難民登録を受けていない。そのため、長年にわたり過酷な環境下で苦しい生活を強いられている。ある仮設キャンプでは、MSFがキャンプ外の人びと(未認定難民)および地元バングラデシュ人を対象に医療を提供している。

近隣のタイやマレーシアに避難した人もいる。主な理由は、自身や家族への激しい暴力を避けるためだという。マレーシアに逃れた少年(15歳)は「私の村の人も大勢が目の前で殺されました。本当です。この目で見たんです」と話す。

暴力で状況が悪化、MSFへの威嚇・脅迫も

人びとの過酷な生活環境は、抗争と避難生活でさらに悪化し、医療を受けることが難しくなっている。

ロヒンギャ人は、ミャンマーでは国籍を認められておらず、基本的な権利も自由もない。厳しく不条理な扱いを受けており、保健環境も長年、看過できないほどに劣悪だ。公的医療は機能不全で、栄養失調・母子保健・1次医療が著しく不足している。

抗争の被害が甚大な地域の中には、MSFなどの医療・人道援助の再開や新規開始がなかなか進まない場所がある。MSFの救命医療活動も、認可の遅滞、情勢不安、一部の強硬なラカイン人勢力による脅迫・威嚇行為に著しく阻害されている。

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