ミャンマー:深刻な医療不足、複数の感染症が流行

2013年02月08日掲載

ミャンマー・ラカイン州の民族間抗争を逃れ、避難キャンプなどに滞在している人びとが、深刻な医療危機に見舞われている。公的な保健医療体制が機能していない上、敵対勢力に脅かされ、外出もままならないためだ。国境なき医師団(MSF)が医療・人道援助を続けているが、MSFスタッフにも威嚇・脅迫が繰り返されている。避難キャンプの現況を報告する。

ラカイン州におけるMSFの活動概要はこちら。

MSFは数十年にわたり、ミャンマーをはじめ世界各国で医療を提供。さまざまな民族出身の人びとの医療ニーズに応えてきた。ミャンマー国内では、合計2万6000人以上のエイズ患者の命をつなぐための抗レトロウイルス薬(ARV)治療を行い、2008年の「ナルギス」や2010年の「ギリ」といったサイクロン被災直後には他団体とともに迅速な対応に乗り出し、大勢の被災者を対象に医療、緊急物資の配給、水源の浄化を行っている。

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15キャンプで援助活動、なお追いつかず

避難キャンプのテントで生活する家族

かつては共存状態にあった民族間に、衝突、根深い敵意による対立、そして分裂が生じている。ロヒンギャ人を中心に大勢の人びとが避難し、帰宅できないままだ。人びとは田園やその他の狭い場所に滞在しており、深刻な医療ニーズが生じている。

2012年10月以降、MSFは移動診療で一部地域へ赴き、1万件以上の診療を行った。それでも医療ニーズには追いついていない。MSFは現在、大規模キャンプ15ヵ所で活動中だが、その他の小規模キャンプ十数ヵ所に対応するだけの余力はない。小規模キャンプの環境も大規模キャンプに劣らず過酷と見られている。

MSFにとって大きな障壁となっているのは、現地の医師やその他の職種に、十分な人手が集まらないことだ。ラカイン州での任務を恐れているためで、一部のラカイン人によるMSFスタッフへの脅迫や威嚇が原因だ。

MSFは、医療不足が政府や他団体によって補填されていないことを憂慮している。また、政府には、(1)人道援助のための安全な環境構築にいっそう注力すること、(2)国内の他地域から医療スタッフを募ること、(3)ラカイン州における緊急医療活動を後押しすることを要請している。

過酷な住環境で病気が蔓延

MSFスタッフから子どもの下痢についての説明を受ける避難者たち

MSFが移動診療を展開できた地域で、特によく見られる病気は皮膚感染症・寄生虫病・慢性の咳・下痢・気道感染症だ。避難キャンプでは住居も不足していることが多く、風雨をしのぐこともできない上、毛布も不十分だ。子どもを中心に多くのキャンプで重度の栄養失調も確認されている。

先ごろあるキャンプで行われた移動診療では、対象となった5歳未満の子どもの40%が急性の下痢にかかっていた。

同州パウットー郡の避難キャンプに滞在する男性は「子どもたちの命が下痢で脅かされています。医療が足りません。トイレも足りません。地面を40cmも掘れば塩水が出てきます。どうしろというのでしょう……。最も近い水源は、丸木舟で40分もかかる場所にあります。(2012年10月に)ここに来て以来、飲用水の入った容器を受け取ったのも1度きりです」と訴える。

移動を恐れ、水の調達も困難

ポンプの水で身体を洗う避難者

下痢の患者数が多い理由は、清潔な水の調達が難しいためとみられている。水源は豊富だが、調達する手段が乏しいのだ。キャンプの男性は「飲用水の唯一の水源は、近くの村の家畜との共用です。とても水のきれいな池が5分の距離にあるのですが、そこへ行くことを控えています」と話す。

キャンプ内に引きこもることで、人びとの衰弱に拍車がかかっている。しかし、敵対勢力からの攻撃を恐れ、外出を避けたり、外出中止を余儀なくされたりしている。

患者の搬送にも大きな壁

重病患者や救急患者は病院に搬送する必要がある。しかし、病院への紹介にも制約は多い。患者も搬送者も敵意と脅迫に直面するからだ。搬送すること自体も難しく、時間的な遅れが人命を脅かすこともある。

チャウット郡出身の男性は「結核治療薬が手に入らないので、治療を中止するしかありません。抗争が始まる前は郡病院に行っていましたが、それも今はできないのです」と話す。

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