マリ:武力衝突続き、医療施設は「壊滅状態」

2013年03月13日掲載

国境なき医師団(MSF)は2012年4月から、マリ北部3県のうち、2県で医療施設を支援し、窮地に置かれた人びとに無償の医療提供を続けてきた。しかし、都市圏外では治安の悪さがリスクとなり、医療チームの活動を阻んでいる。また、毎日数百人が難民となって隣国モーリタニアへ出国。緊急事態は収束していない。

MSFの現在の活動地は、トンブクトゥ、ニアフンケ、グルマ・ラルス、ガオ、アンソンゴ、ドゥエンザ、コナ。南部のクティアラでも、2009年以来、350床の病院の小児科部門と5つの保健区域で小児科プログラム(1次・2次医療)を展開している。さらに、隣国モーリタニア、ニジェール、ブルキナファソでもマリ人難民を対象に活動中だ。MSFは1992年からマリで活動を続けている。

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治安悪化で自宅から出られず

MSFスタッフから脚のけがの治療を受ける男性

武力衝突の前線は南下しているが、北部でもまだ、立ち入れない地域がある。その地域の住民は、安全への懸念から外出を控えている。

MSFの緊急対応プログラム・コーディネーターであるロサ・クレスターニは「情勢が安定せず、活動地である都市圏外の住民のニーズについては調査できていません」と話す。地元住民の間に緊張と疑念が漂う現状が、医療提供のさらなる障壁となる恐れもある。

クレスターニは「自宅から出られない患者がいることを懸念しています。そうした患者は食糧の調達も難しいため、栄養失調のリスクも高いのです。住民が暴力の標的にならず、必要不可欠の医療・人道援助を安全に受けられるような状況でなくてはなりません」と指摘する。

マリ北部では、武力衝突への懸念から、約1年にわたり、大勢の人びとが国内中部や周辺国への避難を余儀なくされてきた。身の安全を案じた一部の優秀なマリ人医療スタッフも、やむなく退避している。クレスターニは「以前から不安定な運営を迫られ、薬剤の枯渇にも見舞われていた保健医療施設が、今回の紛争でさらに弱体化し、壊滅状態に陥ってしまいました」と話す。

MSF、北部を中心に5万件以上を診療

MSFの栄養治療を受けている子どもたちと母親

MSFは有志のマリ人と、2012年4月に、北部の町・トンブクトゥの地域病院で活動を開始した。以来、同病院とMSFが支援する周辺の複数の診療所で、合計5万件以上の診療と400件以上の分娩介助が行われ、50人を超える負傷者が治療を受けている。この病院には、ニジェール川流域のニアフンケやグルマ・ラルスの中央病院からも患者が移送されてくる。

中部のモプティ県では、コナの地域診療所とドゥエンザの紹介先診療所がMSFの支援を受けている。2012年11月以降、MSFが治療した患者数は約8000人。2013年2月から3月12日の間には、コナで兵器の爆発による負傷者5人を治療した。東部のガオ県のガオとアンソンゴでも、2012年9月以降、約1500人を治療している。

クレスターニは「MSFの活動目的は、必要としている人びとに医療を無償で確実に届けることです。主な活動内容は、マラリア・呼吸器感染症の治療と、産婦人科分野の対応です。紛争時の医師は、負傷者の治療だけでなく、安全で衛生的な出産環境の確保も行います」と説明する。

周辺国でマリ人難民の援助も

これまでに約17万人の難民が到着しているブルキナファソ、モーリタニア、ニジェール各国のキャンプでも、MSFが1次・2次医療を提供している。2013年はこれまでに、3ヵ国で合計約1万2000件の診療を行い、5000人に予防接種を行った。

最も多くの難民を受け入れているモーリタニアには、約7万人が滞在するムベラ・キャンプがある。1月末から2月初旬にかけて、モーリタニア側の国境通過地点ファサラで登録された難民数は1日平均300人。大半がトンブクトゥ、レレ、グンダム、レルネブ、ニアフンケから来た女性や子どもで、当分は帰国の見通しも立たず、現在も劣悪な環境で過ごしている。

クレスターニは「自宅から出られない患者がいることを懸念しています。そうした患者は食糧の調達も難しいため、栄養失調のリスクも高いのです。住民が暴力の標的にならず、必要不可欠の医療・人道援助を安全に受けられるような状況でなくてはなりません」と指摘する。

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