イラク: シリア内戦で難民急増、キャンプの現状は?

2013年04月16日掲載

イラクのクルド人自治区に置かれたドミーズ難民キャンプ(ドホーク市近郊)の登録難民数が、日を追うごとに増加している。新規難民の1日平均登録は700~1000人。キャンプ内の援助活動は、山積するニーズに応じきれていない状況だ。

ドミーズ・キャンプにおけるMSFの援助活動

2012年5月以降、MSFはドミーズの中心的な医療活動団体になっている。一般医療と心理ケアを提供し、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)プログラムも開始。外国人スタッフと現地採用スタッフから成るチームの人員を合計60人にまで拡充した。

2013年4月10日までに6万4800件以上の診療を行った。また、生後6ヵ月~30歳の3万1000人を対象としたはしかの予防接種も計画中だ。

MSFは、衛生キットの配給や、給水・浄水活動でも中心的役割を担っている。2013年1月中旬以降、16万リットルの水を1800世帯に提供。4月上旬から中旬にかけては、衛生キット3500組を配り、同月末までにさらに4500組を配給する予定。

内戦を避け、周辺国に逃れたシリア人は100万人を超える。イラクを避難先に選んだ人も多い。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2013年3月末現在で、クルド人自治区は12万5000人以上のシリア人難民を受け入れている。

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住居不足で過密状態、感染症が流行

ドミーズ・キャンプの滞在者が生活しているテント

人びとは数時間かけて悪路を移動し、シリアを出国する。ある女性は「内戦のせいでシリアを離れることになりました」と話す。故郷のカーミシュリー(シリア北東部)は完全に包囲され、燃料も水も電力もない状態だった。「山間部を抜けてきたのですが、幼い5人の子どもたちも自力で歩くしかなく、ここに到着するまで非常に苦労しました」と振り返る。

ドミーズ・キャンプは2012年4月に設置された。当初は1000世帯の受け入れが想定されていたが、現在は3万5000人を超える人びとが滞在している。すでに飽和状態で、援助も明らかに足りていない。イラク担当局も尽力しているが、受け入れ能力は限界に達している。各援助提供者も、すべてのニーズに対応するべく悪戦苦闘している状況だ。

さらに、新規難民の住居不足が深刻化している。大半の人びとが、テント、毛布、マットレス、食糧を複数世帯で共有せざるを得なくなっている。

キャンプには1ヵ所だけ診療所があり、MSFはそこを拠点に活動。スタッフを2倍に増強し、週平均3500件の診療を提供している。多くの病気は劣悪な生活環境に起因するものだ。2013年に入り、同地を襲った厳しい冬の寒さが過酷な状況に拍車をかけた。

MSFのプログラム責任者であるエミリー・ハレドは「MSFの患者の半数が呼吸器感染症です。10人以上が1つのテントで生活する過密状態が一因です。冬が終わって寒さが和らいだことや、給排水・衛生システムが貧弱なことから、最近は下痢が多く見られるようになっています。キャンプでの生活環境改善策の確立が急務です」と話す。

<4人の子どもを持つ難民の男性の話>

ドミーズ・キャンプに到着し、難民登録所に並ぶ人びと

農業地帯に住んでいました。その日の午前5時、私たちは自宅にいました。末娘が私のところに来て言いました。「お父さん、兵隊が来てる!」。外に出てみると、政府軍の兵士から背中に銃を突きつけられ、「動けば、撃つ」と脅されたのです。

危害を加えられるのではないかと心配でした。妊娠中の妻は怯えながらも、兵士たちに「夫は何も悪いことはしていない」と言いました。すると、兵士たちは身分証を返し、去っていったのです。しかし、軍はその後、1日おきにやって来て、村の家のドアや窓を壊していきました。

子どもたちは怯えて泣いてばかりいました。そこでカーミシュリーに避難しました。さらに国境を越えてイラクに入り、ドミーズに到着しました。

ここでは他の家族とテントを共有しています。毛布も足りません。子どもは4人とも寒さで体調を崩しています。

私たちは国連の難民登録を受けました。作成された書類は私が保管しています。ですが、難民の数は非常に多く、路上で過ごす人までいるほどです。イラク行政も援助団体も、すべてのニーズをまかなえてはいません。

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