ケニア:キベラ南診療所を開設、無償の医療援助を拡大

2013年06月07日掲載

国境なき医師団(MSF)は、ケニアの首都ナイロビにキベラ南診療所を開設した(2013年5月16日)。同診療所は、ナイロビで最も不利な境遇に置かれた人びとに、HIV/エイズやその他の慢性疾患管理を含む包括的な1次医療・母子保健医療を提供していく。

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人びとが治療を諦めないために

MSFはナイロビのスラム地区キベラで唯一、医療を無償提供する機関だ。以前から、診療所1ヵ所と性的暴力被害者の治療施設1ヵ所で活動してきた。同地域では劣悪な衛生環境が病気の原因となっており、既存の2施設で行われた診療件数全体の60%以上を呼吸器感染症、下痢、皮膚病が占める。

MSFのケニアでの活動責任者であるギュム・モリニは 「キベラの人びとは極限的な生活環境で生き抜くための"生活の知恵"を身につけています。そうした不利な立場に置かれているからこそ、無償で医療が受けられる機会やはり不可欠です」と話す。

モリニはさらに、「MSFの活動地では、経済的に困窮した人びとが、ごくわずかの診療費を理由に必要な治療を諦めてしまうケースが少なくありません。だからMSFの医療はすべて無償なのです。そうでなければ、人びとは、病状が非常に深刻なときにしか治療を受けなくなるでしょう。患者の健康が危うくなるだけでなく、保健医療体制に対する財政的な打撃も大きくなります」と指摘する。

24時間対応の母子保健部門を設置

新しく開設したキベラ南診療所

慢性疾患治療とその他の医療の一本化により、患者は1ヵ所で医療を受けられるようになる。HIV/エイズ、高血圧、糖尿病といった慢性疾患患者は合併症にもかかっていることが多い。MSFの包括的アプローチは、そうした関連疾患の早期診断・治療・経過観察を向上させる。

モリニは「抗レトロウイルス薬(ARV)の普及によって、HIV感染は死刑宣告から、管理可能な慢性疾患へと姿を変えました。数百万人が、医学的な経過観察の生涯必要な慢性疾患患者となったことで、保健医療の側もそれに応じた変化を求められています」と話す。

キベラ南診療所には、定期的な通院に応じる外来診療部門に加え、分娩台3台と産後ケア用ベッド6床を備えた24時間体制の母子保健部門も設けられた。また、ベッド数8床の観察室、診断検査室、産科、その他の急患のための搬送システムも備えている。

さらに、患者自身の健康管理能力の向上を促す健康教育講習会、カウンセリング、社会的支援なども提供。管理・運営は、5年後をめどに段階的に、ナイロビ郡に引き継がれていく予定だ。

MSFは1998年にキベラで活動を開始。2012年には10万件を超える診療と、新生児2350人の分娩介助、HIV/エイズ感染者4100人のARV治療を行っている。活動開始以来、アドヒアランス(患者自身の能動的参加による服薬順守)を促し、患者を励ますためのHIV/エイズ感染者支援グループの組織、結核・HIV治療の一本化、医師から看護師への職務移譲の推進といった複数の革新的な治療モデルを率先して導入。火災や選挙後の暴動といった数多くの緊急事態にも対応してきた。

MSF、落成式に合わせ、マルチメディア展「Urban Survivors」を開催

MSFは、キベラ南病院の落成式に合わせ、世界各地のスラム地区の深刻な人道問題に焦点を当てたMSFのマルチメディア展「Urban Survivors(都市周縁で生き延びる人びと)」を開催した。

「Urban Survivors」は、フォト・エージェンシー「NOOR」と共催のマルチメディア企画。都市部の健康問題を対象としたMSFの活動を取り上げ、ハイチ・ポルトープランスの性的暴力被害者や、バングラデシュ・ダッカの栄養失調児の治療、パキスタン・カラチの路上に避難中の洪水被災者援助など広範な実例を紹介する。こうしたスラム地区の多くに、MSF以外の無償の医療提供機関はない。

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