中央アフリカ: 政変から3ヵ月、MSFが医療援助を拡大する理由とは?

2013年06月10日掲載

中央アフリカ共和国の政変から3ヵ月。大勢の人びとが最低限の医療も受けられない状況に置かれており、国境なき医師団(MSF)は医療援助活動の拡大を続けている。首都バンギの北に位置するウハム州の州都ボサンゴアで新たに立ち上げた緊急医療プログラムでは、1日平均300件以上の外来診療を提供。武装グループを避け、住民がブッシュに避難している複数の地域で移動診療も展開中だ。

MSFは1996年から中央アフリカで活動。現在は、マンベレ・カデイ州カルノー、ウハム州バタンガフォ、カボ、バミンギ・バンゴラン州ンデレ、ウハム・ペンデ州ボギラ、パウア、オー・ムボム州ゼミオでプログラムを展開している。

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5歳未満児の53%がマラリアに感染

バタンガフォの病院で医療援助活動を行うMSFスタッフ

ボサンゴアでの活動は、保健医療の深刻な不足を受けたもので、約15万人を対象としている。町の保健医療従事者の一部が職場を離れ、避難したためだ。活動の重点は、マラリア、下痢、栄養失調、そして性的暴力と性差別に起因する暴力被害の治療。

これまでに外来部門で診療を受けた5歳未満児の53%に、マラリア感染が確認された。産前ケアの対象となった妊婦の半数もマラリアと診断された。6月上旬には、2ヵ月の予定で緊急対応活動を開始。政変勃発後、薬が手に入らなくなっていたボサンゴア病院のHIV/エイズ患者に抗レトロウイルス薬(ARV)治療を行っている。

政変時の略奪で薬が不足

MSFの医療コーディネーターであるチュリー・バイサは「政変の際に略奪が起き、薬が不足しています。治療中断を余儀なくされたHIV陽性患者は約1万1000人います。今回の緊急対応活動は、健康改善と、HIV/エイズによる苦痛の緩和および救命という、MSFの患者に対する不断の責務に基づくものです」と話す。

同国保健省担当局によると、政変以前にボサンゴア病院の活動で登録されたHIV/エイズ患者は約310人。そのうち、170人がARV治療を受け、残る約140人がARV以前のケアを受けていた。同病院に薬の補充を求めた患者は、この2週間で88人だったという。

最低限の医療環境確保に協力を

MSFによるマラリアの検査を受ける患者

北東部のバタンガフォでは、2013年4月に地元民とチャドからの遊牧民の衝突があり、十数村が焼き落とされた。その地域からの避難者約8000人の状況をMSFが調査している。6月第3週には、国内で避難している人びとの集まる地域で移動診療を開始し、蚊帳、毛布、せっけんなどの救援物資を配給する予定だ。

比較的平穏の戻っているバンギでは、総合病院での3ヵ月にわたる緊急対応を終了した。MSFの治療を受けた患者は1072人。36%が銃創患者で、149人に手術が必要だった。政変時に避難したスタッフも復職したため、活動を平時対応に戻した。手術室と滅菌室の状態も整い、有事に備えて薬剤も備蓄済みだ。

ただ、同国はマラリア流行の季節に入っている。国内の広い地域で医療援助が行き渡っていないことから、既に深刻な死亡率が、さらに悪化する恐れがある。

MSFの活動責任者であるエレン・ファン・デル・フェルデンは「首都以外の地域の保健医療体制は長年、貧弱なままです。マラリア流行は新たな危機です。最も必要とされていることは、保健医療施設の十分な薬剤確保など最低限の医療環境です。薬剤の輸入と国内全域への流通が最大の争点となるでしょう。MSFは、他のNGO、資金援助国、国連に、この国での人道援助を求めます」と呼びかけている。

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