武器を持たない人を実弾で撃つ 日本人医師らが見たガザの惨状

2018年06月07日掲載

渥美外科医(左)と佐藤看護師(右) 渥美外科医(左)と佐藤看護師(右)

一般市民が銃撃されている。国境なき医師団(MSF)の日本人外科医と手術室看護師が中東パレスチナ の病院で見たのは、手足を撃たれ、傷が化膿した状態で病院へやってくる若者たち。ガザ地区で2018年3月30日から続く、パレスチナ難民の帰還を求める抗議デモ「帰還の行進」で、イスラエル軍は境界線に近づくガザ市民を銃撃している。ガザの病院で負傷者の治療に当たった外科医の渥美智晶医師と、手術室看護師の佐藤真史看護師が、6月6日に会見を開き、現地で見た患者のようすを語った。

コーランを唱えて泣く少年

PFBS病院で手術に臨む佐藤看護師(左から2番目) PFBS病院で手術に臨む佐藤看護師(左から2番目)

5月6日からガザに入った佐藤看護師は、約3週間、市内にある3ヵ所の病院で勤務した。赴任間もない5月14日、在イスラエル米大使館がエルサレムへ移転すると、病院は急にあわただしくなった。

「14日はガザのPFBS病院で勤務していました。MSFの別チームが活動していたアル・アクサ病院に、多くの患者さんが来ているということで、スタッフの半数がサポートに駆けつけました。自分は翌日、アル・アクサ病院に行きました。患者さんは若い男性が多く、なかには足を撃たれた10歳の男の子もいました。デブリードメント(※)の手術をしている間、泣きながらコーランを唱えている姿が印象に残っています」

若者の6割が失業しているというガザ。未来に希望が持てず、銃撃されるリスクがあると知りながら、危険を承知で境界線へ向かう。佐藤看護師は「四肢切断や、障害が残ったまま生きていく人がたくさんいます。これからの将来、痛みや悲しみが続く中でどうやって希望を持ってもらえるのか、自分も心を痛めながら手術に臨みました」と語る。

  • ※感染を起こした傷や壊死した組織を切除する処置

ガザで手足を失うということ

銃創患者の治療にあたる渥美外科医 銃創患者の治療にあたる渥美外科医

渥美外科医はこれまでにMSFで10回の活動に参加し、シリアやイエメンなどの紛争地での経験も豊富に持っている。5月21日にガザへ出発し、デモで負傷した患者を治療した。

「日本では銃の傷はほとんど見ません。あったとしても、初速が遅く破壊力も小さい。でもガザではライフルなどの破壊力の大きな銃で、骨が露出してしまったり、血管が切れてしまったり、手術も複数回になって治療が長引きます。衛生面で感染リスクも高くなります」

難しいのは、手足の切断の決断だ。「四肢切断は、慎重にならざるを得ませんでした。日本であれば、バリアフリーが定着してきて、障害を持つ人のための施設もありますが、ガザで手足を失えば、行動が奪われる。弱者が弱者になる。社会的抹殺を受けることにもなります」

傷が悪化してから病院に来る患者

日本とは違う医療環境で患者は何度も手術が必要となる 日本とは違う医療環境で
患者は何度も手術が必要となる

境界線に近づけば、女性でも幼い子どもでも銃で撃たれる。負傷者は圧倒的に男性が多いなか、渥美外科医が治療した患者に、28歳の女性がいた。夫と一緒に抗議デモに来て銃撃され、きちんと病院で処置を受けたのは、銃撃から10日も経ってからのことだ。

「彼女は、自分が抗議していたというより控えの場所にいたようです。ドーン、という音がして、気がついたら、境界線近くで負傷者の容態を安定させる診療所にいた。激痛だったとは思いますが、骨が折れていなかったので歩けたこと、女性だし、宗教的なこともあって病院に来るのが遅くなり、来たときには傷は化膿していました」

封鎖され、一般市民が自由に出入りできないガザでは、医療も市内にある施設と、MSFのように外から入ってくる援助でしか受けられない。専門的な治療を受けたくても、完全な感染コントロールの下で専門医が診る日本の医療環境とは、全く違う状況だ。

人道的にしてはいけない行為

現地の状況を知ってほしいと語る渥美外科医と佐藤看護師 現地の状況を知ってほしいと語る
渥美外科医と佐藤看護師

渥美外科医は、「武装していない人を実弾で撃つ、これだけ大勢の人が短期間に負傷することは、人道的にしてはいけない行為です」と語る。「日本は島国で、ガザは遠い場所で関係ないと思うのが大半でしょう。関心を持つ、というのは、できそうで、なかなかしないことです。そのために実際に現場へ行った自分たちが、こういう現状があると話していく。日本の人が、まず(この状況を)知ってもらいたい」

佐藤看護師も、「知ってシェアすることで、ガザの人たちが、自分たちは見捨てられていないと感じられるようなメッセージを送ってほしい」と語った。

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