増え続ける人口に土地が足りない 世界で最も混雑する難民キャンプの今

2018年05月24日掲載

クトゥパロン=バルカリ難民キャンプのMSF外来診療所で診察を待つロヒンギャの女性
クトゥパロン=バルカリ難民キャンプのMSF外来診療所で診察を待つロヒンギャの女性

バングラデシュ・コックスバザール県にある巨大なクトゥパロン=バルカリ難民キャンプは区域で分けられている。そのなかの17区は、他の区域と同様に、竹と防水シートでできた急ごしらえの住居にすりきれた色とりどりの旗が目印として結ばれている。

見た目は他の区域と変わらない。だが17区は、世界で最も人口が密集したクトゥパロン=バルカリ難民キャンプのなかでまだ人が住んでいない部分が多くある。ここは新しく拡張された区域で、ミャンマーから新たに避難してくるロヒンギャ難民と、キャンプ内の他の区から移ってきた人を受け入れている。

難民キャンプの井戸へ水をくみにいくロヒンギャの少女
難民キャンプの井戸へ水をくみにいくロヒンギャの少女

2017年8月25日にミャンマーのラカイン州で起きた衝突以降、集団的な暴力と迫害を逃れて多くのロヒンギャが国境を越え、バングラデシュにやって来た。2018年に入ってからも5000人余りが到着し、その数は推定69万3000人と言われている。

丘陵地帯に120エーカー(東京ドーム約10個分)の広さにわたって新たに造られたキャンプでは、拡張工事が続いている。日に日にどころか、刻々と、ブルドーザーは昼夜を問わず動き、工事作業員が鋤(すき)とシャベルで地面を掘り続けている。

「大事業ですが、残念ながらそれでも足りません」と国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーターを務めるフランチェスコ・セゴーニは話す。「用地が全く足りないのです。キャンプはひどく混雑しています。移転は既に始まっているのに、下水設備と衛生環境は最低限の基準にも届いていません。雨が降ると、洪水や地すべりだけでなく、病気が集団発生するリスクも急増します。トイレが浸水すれば汚染は避けられないでしょう。MSFは最悪の事態に備えています」

4月、間もなくやってくる雨期を前に激しい雨が降った
4月、間もなくやってくる雨期を前に激しい雨が降った

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、約20万人がこうしたリスクにさらされており、キャンプの15%は冠水する恐れがある。約680エーカー以上の用地がバングラデシュ政府から提供される計画が進んでいるが、いつになるのかは決まっていない。たとえ提供されても、必要な広さを大きく下回っている。UNHCRは、1万人を受け入れるために100エーカーが必要だとしている。

クトゥパロン=バルカリ難民キャンプのMSF外来診療所
クトゥパロン=バルカリ難民キャンプのMSF外来診療所

キャンプの医療ニーズに応えるため、MSFは対応を強化している。クトゥパロン=バルカリ難民キャンプで運営する病院4ヵ所と一次医療施設3ヵ所、診療所10ヵ所に加え、4月にはキャンプ17区の境界近くにベッド数100床の病院を開院。この病院には50床の隔離施設もある。

それに先立って、MSFは2月にベッド数74床の病院をゴヤルマラに開院した。また、クトゥパロンの診療所では、4月初旬に新しい産科を併設した。さらに、ジフテリア患者用の30床があるラバー・ガーデン病院では、緊急事態対応計画の一環として、受け入れ態勢を拡充。急性水様性下痢の患者を受け入れられるよう100床まで増床していく。

難民キャンプでは清潔な水は医療と同じくらい重要になる
難民キャンプでは清潔な水は医療と同じくらい重要になる

難民に清潔な水を提供することも急務だ。特に、新設された拡張区域では対応が急がれている。セゴーニは「清潔な飲料水の提供はキャンプ内でも絶対最優先です。命を救う医療活動と同じくらい重要です。新しい区域にあちこち出かけて行って、とどまることなく進化していく情勢に追いついていこうとしているので、まさに時間との闘いです」と話す。

MSFはこれまでに数百基の手押し井戸を提供したほか、25本の掘り抜き井戸を掘削して電動モーター式ポンプを取り付けている。

配水網チームリーダーのホセンが井戸にモーター式ポンプを取り付ける
配水網チームリーダーのホセンが井戸にモーター式ポンプを取り付ける

うだるような暑さになった4月下旬のある日、MSFの配水網チームリーダーを務めるアラファト・ホセン(25歳)は、キャンプ17区に造られた深さ約約37mの井戸にモーター式ポンプを取り付ける仕事に取り掛かった。

コックスバザールの住民がMSFの新しい病院から12人のボランティアと一緒に出てくる。これから取り付ける発電機を担ぎ、キャンプ中に2本しかない幹線道路を通って現場に向かう。

一行は雨期の先駆けのような土砂降りの中で作業し、無事にポンプを取り付けた。これでキャンプの住民と新しく到着した難民に水を供給できる。理想は、深井戸1本で1日に最大4000人に、1人あたり5リットルの飲料水を供給することである。

「うまくいっていますよ」とホセンは話す。「でもやることはまだたくさんあります。配水網を敷いたり、他の深井戸にもポンプを取り付けたり」

地元住民がトレーニングを受け、ロヒンギャ難民に浄水器の使い方を教える
地元住民がトレーニングを受け、ロヒンギャ難民に浄水器の使い方を教える

深い井戸の掘削と給水ポンプ取り付けとともに、MSFは、5歳未満の子どもを持つ母親、妊婦など、最も弱い立場にある人に浄水器「アクアフィルター」も配布している。これまでに600人余りが浄水器を受け取っており、今後も数千個が配布される。

「地域住民に研修を受けてもらい、浄水器を受け取った人に使用法や手入れの仕方を説明できるようにしています。また、配布後1週間、1ヵ月、3ヵ月の間隔で、分らないことがないかフォローしています」。そう話すのは、キャンプの近くで暮らすMSFの現地スタッフ、ハラール・ウッディーンだ。

「これまでのところ、受け取った人は本当に喜んでくれています。家族で使うほか、隣人と共同で利用を始めた人もいます。安全な水は貴重なので、アクアフィルターはとても大切です」

人口過密の巨大キャンプに清潔な飲料水を! 雨の中、国境なき医師団(MSF)の現地スタッフが深井戸から水をくみ上げるポンプを取り付けています。 バングラデシュの丘陵地帯に広がるロヒンギャ難民キャンプ。62万人が暮らすこの巨大なキャンプでは、間もなく訪れる雨期を前に水の整備を進めています。今も人口が増え続けるなか、水は医療と同じくらい重要。すべての人びとが清潔な水を手に入れられるよう、対応が急がれています。

国境なき医師団 日本さんの投稿 2018年5月23日(水)

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