マラウイ:急募!地方勤務可能な医療スタッフ――MSF奨学金で現地人材を育成

2013年07月22日掲載

「昔から、いつか保健医療に携わる仕事に就けたらと思っていました。望みがかなって嬉しいです」と話すのは、チムウェムウェ・ナルソさん。マラウイのチョロ郡で医療教育を受けるために、国境なき医師団(MSF)の「マラムロ奨学金」を取得した。マラウイが抱える保健医療の課題と、奨学金設立の背景について報告する。

「マラムロ奨学金」
MSFは、チョロ郡に必要な保健医療スタッフの職種と、人材不足の影響が最も深刻な地区を特定するためのニーズ調査を実施。その結実が「マラムロ奨学金」で、地域の人材不足に応じるための長期的な人材確保を促す仕組みとして設立された。 奨学生はいずれも一通りの技能・経験のある保健医療スタッフだ。看護師・助産師13人、医療助手10人、准医師5人、検査技師2人。授業料、滞在費、月額給付金、医療器具一式をMSFから受給する代わりに、採用地で保健省職員として勤務するという5年契約の締結を求められる。

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未充足求人率65%、深刻な医療スタッフ不足

「マラムロ奨学金」を受けて勉学に励む学生たち

チョロ郡は南部の田舎で、MSFが15年以上前から活動している。マラウイの保健医療の主要な課題の1つが、深刻な人材不足だ。マラムロ奨学金は、この課題を解消するための画期的なアプローチとして、保健省と協力し、2010年に設立した。

マラウイは世界で最も開発の停滞した国に数えられ、HIV/エイズの有病率でも世界の上位10ヵ国に入る。推計96万人、割合にして成人人口の10.6%がHIV感染者だ。ここ何年かでHIV/エイズ対策は進展しているが、主な保健医療関連職の未充足求人率は平均65%。つまり、必要なスタッフ数の35%しか確保できていない計算になる。これが、HIV/エイズ治療・ケアの提供と保健医療全般における高い障壁となっている。

特に状況が深刻なのは都市部以外の地域だ。全人口の80%以上が住んでいるが、看護師などの保健医療スタッフは国内全体の30%を下回る。

人材不足の主な理由は、公営の教育機関が輩出する人材の少なさだ。マラウイ医大卒の医師は年間平均60人にすぎない。また、財政難のため、マラウイ保健大学の2012年度修了生はわずか392人で、過去5年で最少だった。一方で、マラウイの人口は約1500万人に達する。

"地方"の医療・生活環境を敬遠

午前中から診療所前に長い列を作る患者たち

チョロ郡のフェリーネ・カリアティ看護担当官は「人材こそ保健省が最も求めるものです。特に、マラウイ人口の大半が暮らし、国内の健康問題の大半を抱える"地方"で勤務可能な人材を求めています」と話す。

限られた貴重な人材が"地方"での勤務に定着しにくいことが、人材不足のもう1つの理由となっている。厳しい生活・労働環境に加え、患者数が多い。数少ない現役の保健医療スタッフも、都市圏外での勤務には消極的だ。

マラムロ奨学金で学んでいるナルソさんは、地方に人材が集まらない理由について「地方には水も電気もないことが多いので、大抵の保健医療従事者は行きたがりません。施設も大半が不便な場所にあり、通信網もなく、職員は完全に音信不通になる可能性があります。救急車さえ呼べないかもしれないのです。電話連絡のために特定の場所まで歩いていかなければなりませんが、その間、他の患者は置き去りになります」と話す。

こうした地域での保健医療提供は、医療スタッフにとって1つの挑戦だ。需要も非常に高い。チョロ郡では、医療スタッフが1日平均200人以上の患者を診察する。看護師は、最低限の範囲でも、1日に約5~6件の分娩を介助しなければならない。

長期的観点での人材育成戦略が重要

MSFのマラウイでの活動責任者であるロッド・ガーステンヘイバーは 「人手不足の地域出身の奨学生を採用することで、地元に貢献したいという意欲を自然な形で高めることができます。奨学生の中には、保健医療スタッフの不足で、人員の補充ができないことの意味と影響を経験している人も大勢います。マラムロ奨学金で学ぶことは、職能習熟の貴重な機会を得ているだけでなく、実体験に裏打ちされた非常に高い意欲と結び付いているのです」と話す。

奨学金受給者が地方勤務を長く続けるかどうかは定かではない。その他の保健医療関係者・資金提供者に、保健医療スタッフの長期的な人材確保・定着戦略の検討、そしてマラウイの教育機関への融資を呼び掛けていくことも重要だ。教育機関の多くが、学生受け入れを続けるため、乏しい財源のやりくりに苦心している。

奨学生ナルソさんの決意

チョロ郡の病院で研修を続けるナルソさん

奨学金プログラムの最初の対象者となったナルソさんは、2012年12月、マラムロ大学を卒業。2年の課程を修了し、医療助手の資格を取得した。チョロ郡病院での臨床研修を修了したのち、9月に郡内の診療所への配属が予定されている。

ナルソさんは誇らしげに語る。「5年は長くはありません。すべてはどれだけの意欲と情熱を持って臨むかにかかっています。医療の世界で働くことを幼いころから夢見てきました。今度は私の地元が奨学金の恩恵を受ける番です。私が地域に直接貢献できるのです。以前は専門教育を受けていない介助者として、患者をサポートしていましたが、今後は治療にも携わります」

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