C型肝炎治療の待機者が2500人。治癒する人を増やすために必要な対策は?

2018年04月11日掲載

2017年1月以来、国境なき医師団(MSF)はインド・ウッタルプラデシュ州の都市メーラトでC型肝炎を無償で診断・治療するパイロット・プロジェクトを運営している。2017年は1198人の患者がこのプログラムでC型肝炎の治療を開始し、うち290人に治癒宣言が出された。

治療待機者が2500人

メーラトのPLシャルマ区立病院でC型肝炎の治療を始めた時、多くの患者が来ると予想していたが、その数はMSFの想定を上回るものだった。数週間で対応が追いつかなくなり、治療待機者リストを作ることになった。そしてそのリストも、たった1年で2500人の名前が載った。

治療を無事に終える人を増やすため、MSFは簡易な分散型治療モデルを利用して、患者が治療を受けやすいようにした。患者は自分の暮らす地域の近くで、月に1回治療を受ければよい。

メーラトの病院でC型肝炎の治療を待つ患者
メーラトの病院でC型肝炎の治療を待つ患者

この病院では、直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)と呼ばれる最新世代のC型肝炎治療薬を使っている。最新のC型肝炎薬は価格が非常に高く、世界中にいる数百万人の患者にとって手が届かない。インドでは他の国よりも比較的安く手に入るが、それでも多くの患者が治療をあきらめている。この病院はウッタルプラデシュ州で唯一、無償でC型肝炎の診療をしているため、メーラト周辺部からも多くの患者が治療にやって来る。

「聞いたこともない病気だった」

治癒したナインパルさんは息子たちにもこの病気について教えている
治癒したナインパルさんは息子たちにもこの病気について教えている

ナインパル・バッティさんは2014年にC型肝炎に感染していると分かったが、費用が高すぎて治療は受けられなかった。MSFで無償の治療を受け、2017年11月に治癒宣言が出た。「C型肝炎がどれほど危険なのか知りませんでした。今では、よくわかっています。他の誰もC型肝炎にならないように、できることを全てやっています」と語る。

「息子たちには、どういう風にC型肝炎が広まるか教え、理髪店に行くときは、私も息子たちもカミソリの刃を必ず変えてもらっています」

C型肝炎と知り「ものすごく怖かった」と語るファティマさんと義母のラビアさん
C型肝炎と知り「ものすごく怖かった」と語るファティマさんと義母のラビアさん

主婦のファティマさん(仮名)も、MSFでC型肝炎の治療を終えた。「自分がこの病気だと知って、ものすごく怖くなりました。C型肝炎なんて聞いたことがなかったんです。間違った情報を広めて怖がらせる人もいます。でも治った今は、皆に怖がる必要はないと教えています。皆、検査を受けるべきで、もしC型肝炎になっていると分ったら、治療を受けるべきです」

ファティマさんが治療を受けている間に、義理の母のラビアさん(仮名)もC型肝炎と診断され、現在治療を受けている。

C型肝炎は人生を狂わせる

プロジェクト開始時から治療に携わっているゴーシュ医師
プロジェクト開始時から治療に携わっているゴーシュ医師

スヴァンティー・ゴーシュ医師はコルカタ出身で、2017年1月にMSFがC型肝炎プロジェクトを開始したときから活動している。

「2017年は、C型肝炎がただの病気ではないとつくづく思い知らされました。この病気はさまざまな面で患者の人生に影響を及ぼしています。この病気のために結婚できない若い女性や、国外で起業したくてもビザが下りない若い男性を見てきました」

「患者さんに治癒証明書をお渡しできる日は医師として本当に嬉しく、患者さんと同じくらい喜びを感じます。5年ほど前にC型肝炎と診断されたビジノル出身の60歳の男性がいました。彼は、治療を途中で投げ出していました。あまりに費用が高かったからです。2017年にMSFで治療を再開できました。治癒したとき、生きてこの日を迎えるとは思っていなかったよ、と言ってくれました」

治療を続けて力を取り戻す

治癒して、仕事に戻ることができた建設作業員のアンクシュさん
治癒して、仕事に戻ることができた建設作業員のアンクシュさん

アンクシュさん(30歳)はウッタルプラデシュ州ムザファルナガル区から来た建設作業員で、2015年にC型肝炎と診断された。 食欲がなくなり、疲れやすくなった。

「それまで、C型肝炎なんて聞いたことはありませんでした。陽性だと分かったときは衝撃でした。この新しい病気は一体なんなのか、私だけがなっている、と、あれこれ考えました。その後、私の村で80%の人がこの病気だと知りました。姉や妹もこの病気だったのです」

アンクシュさんは2017年10月に治癒し、再び仕事ができるようになった。アンクシュさんが治癒して力を取り戻す様子を見て、姉妹も治療を最後までやりとげようという気持ちになっている。

MSFのカウンセラーから治癒を伝えられたギータさん
MSFのカウンセラーから治癒を伝えられたギータさん

ギータさんはこの日、MSFのカウンセラーからC型肝炎が治癒したと伝えられた。

「カウンセラーさんに、必ずよくなるから薬を飲み続けて、と言われ、そうしました。自分でも変化がわかるくらい、健康になっていくのを感じました。いろいろと薬の副作用が出るかもしれないと言われて怖かったです。それでも治療を続け、もうこの病気はなくなりました。本当に嬉しいです」

治療以上に大事な予防

2億人が暮らす都市メーラト。PLシャルマ区立病院には多くの患者が訪れる
2億人が暮らす都市メーラト。PLシャルマ区立病院には多くの患者が訪れる

メーラトはウッタルプラデシュ州でも有数の大都市で、2億人が暮らしている。都市部は地域の半分ほどで、多くの人は日雇い労働と農作業で生計を立てている。

MSFでC型肝炎の治療を受けに来る患者の大半は、安全でない輸血や十分に消毒されていない医療器具を使った治療など、無資格の医師や伝統的治療師による医療行為で感染したと見られている。

この病気に関する情報は不足していて、どのよう感染するのか人びとは知らない。そこで、健康教育が重要な役割を果たす。感染経路、病気の進行、予防法や、検査と治療を受ける場所について、地域に知らせる活動だ。

C型肝炎について、正しい知識を伝える健康教育は重要な活動のひとつ
C型肝炎について、正しい知識を伝える健康教育は重要な活動のひとつ

ワジム・アーメドはMSFの健康教育担当で、この病院で毎日、健康教育講座を開き、C型肝炎がどのように感染し、どうしたら予防できるか、治療法はどのようなものかを人びとに教えている。

「C型肝炎にはさまざまな“都市伝説”があります。多くの人は、汚染された水や食べ物を口にすると感染する、空気からも感染すると考えています。健康教育担当の私がこの病気について正しい情報を伝え、教えていくことで、人びとが自分で予防できるようにしていくことが大切です」とワジムは話す。

必要な人が誰でも治療を受けられるように

患者がより治療を受けやすくなるよう、MSFはインド政府に働きかけを行っている
患者がより治療を受けやすくなるよう、MSFはインド政府に働きかけを行っている

MSFは、必要な人は誰でもC型肝炎治療を手頃な価格で受けられるべきだと考えている。インドのパイロット・プロジェクトでは分散型の治療モデルを利用し、患者がより簡単に、無事に治療を終えるようにしている。

さらに、この分散型アプローチを全国的なC型肝炎対応計画で採用するよう、インド政府に呼びかけている。2030年までにC型肝炎を撲滅することを最終的な目標として、現在、この対応計画の策定を行っている。

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