シリア:極寒の冬、再び戦闘が......避難を繰り返す家族の苦しみ

2018年02月05日掲載

建設中のテント脇に腰掛ける子どもたち。清潔な水はなく、さびた ドラム缶から水を飲む
建設中のテント脇に腰掛ける子どもたち。
清潔な水はなく、さびたドラム缶から水を飲む

シリア北部では昨年12月中旬から戦闘が再燃し、ハマー県北西部、アレッポ南部、イドリブ県南部で空爆や砲撃が激化。7年近く紛争に苦しんできた現地の人びとが深刻な被害を受けている。

数万世帯が北西のトルコ国境に向けて避難した。凍える冬の気候のなか、過密状態のテントや仮設住居で暮らす。

6人の子どもを抱えるアブー・ムスタファさん(37歳)は、着の身着のままでトルコ国境近くの町サルマダに避難した。アブーさんほか20世帯で資金をかき集め、約1000米ドル(約10万9590円)の小さな農地を借りた。

地元農家から借りた土地にテントを建てるアブーさん一家
地元農家から借りた土地にテントを建てるアブーさん一家。
公式キャンプに入れず、賃料を支払うほか手段はない

「他にどうしようもなかった。寝る場所が必要だったから」と語るアブーさん。他の家族と協力し合い、毛布とビニールシートで鉄柱を覆っただけの仮設テントを建てた。床はなく、濡れて霜柱が立った地面から守ってくれるものはない。

アブーさんは「どこにいても寒さが染み入ります」と漏らした。

トラックに荷物を積んで避難する人びと
トラックに荷物を積んで避難する人びと

多くの人は、ほとんど身一つで逃げてきた。一方、後で売って食いつなげるよう、農機具や電化製品などの家財をトラックやトラクターに積み上げて避難してきた家庭もある。住民が集団避難した後、たくさんの村がゴーストタウン化しているという。

付近の公式キャンプは定員をオーバーし、避難民は広域160ヵ所に点在する一時居住地に身を寄せるほかない。平均6人の家族が3~4組、同じテントの下で寝起きしている状態だ。

数世帯が同居するテントに家財は収まらず、野ざらしに置かれている
数世帯が同居するテントに家財は収まらず、野ざらしに置かれている

非公式キャンプでは仮設住居や食糧がごくわずかしか手に入らず、医療や衛生管理も不足している。多くの人道援助団体がシリアでの活動を縮小しつつあるなか、過密状態のキャンプで雨や寒さにさらされ、状況は悪化してしまう。

国境なき医師団(MSF)移動診療チームのモハメド・ヤークプ医師は先日トルコ国境付近にあるアル・ラーマン・キャンプを訪問した。以前から70世帯が生活していたところに、新たに避難してきた44世帯が加わった。人口が急増したことによって、もともと設備の乏しいキャンプに大きな負荷がかかっている。

アル・ラーマン・キャンプで診療するMSF医師
アル・ラーマン・キャンプで診療するMSF医師

「避難者の健康状態は大変厳しい状況です。呼吸器感染症が非常に多くみられます。道路で野宿しながら1週間かけて到着した家族もいました」とヤークプ医師は話す。

「慢性疾患の患者の多くが、薬を丸1ヵ月飲んでいません。糖尿病と高血圧患者も数え切れないほどいます。子どもたちはもう何年も予防接種を受けていません」

このキャンプではヤークプ医師が1日約45件、同じチームの助産師が約15件診療している。

焚き火で暖をとる子どもたち
焚き火で暖をとる子どもたち

MSFは毛布・保温マット、衛生用品などの入った越冬支援キットを1000世帯超に配給。さらに、地域の中核病院の対応能力を上げるため、医療物資を寄贈したり、救急車の整備・燃料の供給を支援したりしている。

向こう数週間のうちにMSFは予防接種のアウトリーチ活動(※)を拡大するほか、差し迫ったニーズのある場所へ救援物資を効率よく配布し続けられるよう、他団体と連携する予定だ。

  • 医療援助を必要としている人びとを見つけ出し、診察や治療を行う活動。

その間にも空爆はやむことなく続き、人びとはさらなる避難を迫られている。

「ある非公式キャンプは、私たちが訪問した数日後に攻撃され、人びとはまた引っ越しを余儀なくされました」。シリア北部でプロジェクト・コーディネーターを務めるズヘール・カンジョウはこう話す 。

「避難者が暮らす仮設テントは、人が住むには不適切です。雨が降れば水浸しで、泥だらけになります。悲惨な状況です」

MSFはシリア北部で5つの病院と3つの移動診療チームを運営するほか、提携医療施設5ヵ所を支援している。また、MSFスタッフ自らが立ち入れない地域の約50施設も遠隔支援。MSFは、安全と公平性について確約を得られていない「イスラム国(IS)」の支配地域と、活動認可が現在も得られていないシリア政府統治地域では活動できていない。政治的圧力からの独立性を守るため、シリアでの活動にはどの国の政府からの資金も投入されていない。

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