ニジェール:E型肝炎が大流行。死者数を激減させた秘策とは?

2017年11月17日掲載

ニジェール南東部のディファ県では、2017年初めからE型肝炎が大流行してきた。国境なき医師団(MSF)による治療もあって、現在は収束しつつあるが、妊婦が感染すると、死に至る可能性もある。MSFは死亡率を抑えるため、早期発見や適切な医療手順の徹底、地域との連携などの対策を講じてきた。

未曾有の病気で死者が続出

E型肝炎患者を回診するロアンバ医師 E型肝炎患者を回診するロアンバ医師

「初めのうちは亡くなる患者さんがたくさんいました」。MSFの母子保健病院で働く産婦人科医、ロアンバは振り返る。異変が見られたのは今年初め。妊婦を中心に、重い容体で来院する患者が増え始めた。昏睡状態に陥って搬送されるケースもあり、多くの患者が命を落とした。

4月中旬、保健省がE型肝炎の流行を宣言。ディファ県でE型肝炎が確認されたのは初めてだった。ニジェール・ナイジェリア国境沿いに位置するこの地域には、紛争を逃れてきた24万7000人以上の避難者が身を寄せている。感染が広まる一因が、避難民キャンプの過密で不衛生な環境だ。E型肝炎は水を媒介に感染し、腎臓を侵し、適切に処置しなければ命に関わる。

流行宣言が出てから、MSFと保健省のスタッフは運営する診療所や小規模保健施設、その他の医院や村々で患者約1400人の治療をサポート。また、MSFの支援する母子保健病院でも重症患者を受け入れ、350人余りを治療した。

事態が素早く改善したわけ

地域ボランティアに健康教育を行うMSFスタッフ 地域ボランティアに健康教育を行うMSFスタッフ

「E型肝炎がまん延した要因を特定でき、状況は一変しました。それから感染率が大幅に下がったんです」とロアンバ医師。鍵は、ボランティアのネットワークを介した地域住民との連携と、給排水・衛生対策だという。

MSFは保健衛生スタッフを通じて地域のコミュニティへ働きかけた。一般の人でもE型肝炎の症状を見分けられるように、また、居住空間や飲用水を清潔に保てるように、スタッフが地域ボランティアを指導。その結果、地域住民もE型肝炎の症状が見られる患者を速やかに診療所へと搬送するようになった。その後、合併症を伴う患者はディファ市内の母子保健病院へと引き継ぐ。病院が受け入れる重症例は激減した。「患者が以前より軽い容体で受診するようになり、死亡例が大幅に減りました」とロアンバ医師は語る。

援助団体と保健省が対応を開始した4月に29%だった致死率は、10月には1.91%まで低下した(国連人道問題調整事務所(OCHA)調べ)。

今回、E型肝炎が流行したことで、難民・国内避難民が不安定な生活に直面しており、紛争被害者に対する援助がすぐに必要なことが浮き彫りになった。多くの避難者は、戦線が動くため、避難を繰り返している。一触即発の状況のため、援助団体の活動は難しい。医療の届かない人びとの間で致命的な集団疾病が発生する可能性も高まる。

MSFは2014年後半からディファ県で活動を開始し、過激派勢力「ボコ・ハラム」と政府軍の武力衝突を逃れた難民・国内避難民を支援している。県内11ヵ所の診療所で医療と心理ケアを行うほか、村落や避難者の滞在地で清潔な水の供給、トイレの設置、必須援助物資の配布に携わっている。また、保健省が運営するディファ市の中心的な母子保健病院を支援。リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する医療)、小児科、心理ケアのほか、重度急性栄養失調児の治療にもあたっている。

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