シリア:空爆か地雷か――ラッカ住民が直面する恐るべき選択

2017年06月13日掲載

マンビジの避難キャンプを巡回するMSFスタッフ

過激派組織「イスラム国」の拠点となっているシリアのラッカで戦闘が激化している。市域や郊外の村の住民たちは、激しい爆撃に耐えてとどまるか、交戦中の戦線と地雷原を横切って避難するかの選択を迫られている。

国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーターを務めるパック・レインダースは、「大人たちは恐るべき選択に直面しています」と話す。「子どもたちを激化する暴力や空爆にさらすことを覚悟してラッカにとどまるか、地雷原を横断したり十字砲火に巻き込まれたりする危険があると知りつつ戦線の向こう側へ避難するか、です」

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夜中に地雷原を移動する

夏の日差しを避けるために木陰に身を寄せる避難者

避難を決意したとしても、「イスラム国」の支配下にあるラッカから脱出することは難しい。捕まれば処罰されるからだ。脱出してきた人びとの間では、賄賂が唯一の解決策だったとも語られている。

ラッカ出身の男性(65歳)は「(避難ルートになっている)アイン・イサへの道は地雷だらけでした」と話す。「2 ヵ月がかりでラッカ脱出の準備が整い、他の5家族と一緒に出発しました。道中で空爆にあってけがをしてしまいました。同行の子どもたちのうち2人は、夜中の移動中に地雷を踏んでしまい、重軽傷を負いました」

避難者の多くは安全な北部を目指す。目的地はアイン・イサ、マンビジ、マフムードゥリ、タル・アブヤドなどで、ラッカから半径120km圏内にある。だが、ヨルダンとシリアの国境を分かつ長大な土塁地帯「バーム」に向かう人もいる。ラッカからは700kmも離れている上に、人道援助がほとんど届いていない地域だ。

1度も予防接種を受けていない子どもたちも

避難キャンプ内の診療所で診察を受ける女性

また、内戦が続いているこの6年間に何度も避難している人も多い。彼らは主にパルミラやデイル・ハフェルなどの出身だ。診療所の機能停止、人道援助の不足、国境封鎖などで出国することもできず、健康を損ねたまま医療を受けられていない人も多い。避難者はもともと弱い立場に置かれている上に、避難先(主に仮設キャンプ)での過酷な生活でさらに追い詰められている。

避難者の一部は一時滞在キャンプに滞在していたり、町の周辺の木陰で野宿したりしている。レインダースは「車で走っているといたるところでテントや人を見かけます。生きるためのぎりぎりの生活です。多くは農民で、羊や家財などを自宅に残してきたり、何も持たずに避難してきたりしているのです」と説明する。

MSFは避難キャンプに診療所を設置したほか、ラッカ県内の数軒の病院で活動している。そこでは救急医療や子どもを対象とした予防接種を提供している。5月末から6月初めの約1週間で、5歳未満の子ども1070人に予防接種を実施した。多くの子どもはそれまで1度も接種を受けたことがなかった。

一方、レインダースは「急性水様性下痢、呼吸器感染、家族の死やショッキングな出来事による心の病気、自分自身も殺害されるのではと恐れて来院する方なども多くいます」と報告する。

MSFは現在、戦線付近で救護所設置も進めている。戦闘で負傷した人の救命率を高め、MSFの支援先病院へ移送して治療や手術を受けられるようにすることが目的だ。

MSFはすべての紛争当事者とその同盟勢力に対し、ラッカの民間人を保護し、避難者が安全な場所へ到達できるようにすることを求める。また、シリア周辺国に対しても、人道援助提供者がシリアに入国することを可能とするとともに、地雷撤去の人道的活動をシリア北部で実施するように求める。さらに、国際援助団体に対し、ラッカからの避難者への援助拡充を強く求める。

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