イラク:戦闘が続くモスルの人道危機とMSFの取り組み

2017年04月28日掲載

紛争被害を受けてMSFの治療を受けた女の子(8歳)家族は空爆で命を奪われた 紛争被害を受けてMSFの治療を受けた女の子(8歳)
家族は空爆で命を奪われた

イラク北部のニネワ県モスル市で、政府軍が、一帯を支配している過激派武装勢力「イスラム国」への攻勢を強めている。その影響は民間人にも及んでいる。紛争に巻き込まれて負傷する人や、病院に行くことができずに容体が悪化する人が後を絶たない。

国境なき医師団(MSF)は県内各地で可能な限り、救命や母子保健を含む救急ケアを提供している。また、複数のチームが、チグリス川で隔てられている市街地の東部や西部、さらに郊外へと足を運び、医療・人道援助を提供している。モスルを脱出して避難キャンプに滞在している人びとに対しても、心理ケアを含む医療提供を行っている。

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産科医療を強化――モスル市街東部

モスルの病院で生まれた赤ちゃん モスルの病院で生まれた赤ちゃん

MSFはモスル市街東部で、救急処置室、手術室、産科・入院科を運営している。3月初旬の開設以来、3315人以上の患者を診察し、730人以上の紛争負傷者を治療した。3月5日の産科開設以降、帝王切開を78件行っている。また、出生者数は週平均で70人となっている。

3月19日には基礎的な救急医療を提供する施設(15床)も立ち上げ、安全な出産のサポートを強化した。この施設での出産はすでに92件にのぼっている。

医療ネットワークを拡大――モスル市街東部

紛争で破壊された町並み 紛争で破壊された町並み

さらに、3月26日には、市街東部の病院内に外科と緊急医療を行う救急処置室を開設した。市街西部で戦闘に巻き込まれた負傷者や、救急処置の必要な住民に対応している。また、より広範な医療ネットワークの一翼を担うために、外科機能と病棟(20床)も備えている。この救急処置室が完全オープンするのは5月上旬の予定で、ベッド数を50床に増やす予定だ。

この救急処置室で受け入れた患者はこれまでに199人。応急措置を補完する目的で、MSFはモスル地域の野外病院で治療を受けた負傷者を対象に、長期的な術後ケア、リハビリ、心理・社会面の支援を提供している。その対象となった60人のうち、25人が子どもや女性だった。

野外病院を運営――モスル郊外

モスル郊外に開設した野外病院 モスル郊外に開設した野外病院

モスルの南に位置するハマム・アル=アリルでは、手術室2室、救急処置室、集中治療室、入院棟を備えた外傷専門の野外病院を運営している。2月19日から4月8日までに救急処置室で受け入れた1480人以上の患者の約半数が子どもや女性で、その大半が戦闘に巻き込まれた負傷者だった。

集中栄養治療センターを開設――カイヤラ

重度の栄養失調でMSFのもとに運ばれてきた生後6ヵ月の女の子 重度の栄養失調でMSFのもとに運ばれてきた
生後6ヵ月の女の子

MSFはモスルの南60kmに位置するカイヤラにも病院(46床)を開設した。外科その他の緊急医療のための救急処置室と手術室を1室ずつ備えている。1月1日~4月15日に治療した患者は4322人。急患の約10%が入院治療を受けた。1月~3月の外科治療は合計229件だった。

また、モスル市街西部で発生した多数の死傷者が出た事件で、野外病院では対応しきれない重症患者を受け入れていた。4月中旬には重体の患者を受け入れる集中治療室(4床)も開設した。

市街西部から避難してきた子どもたちが重度栄養失調で運ばれてくるケースが3月上旬から増えてきた。そのため、3月末に、カイヤラ病院内に集中栄養治療センター(12床)を設置した。

また、精神保健診療所も2月から運営している。担当チームは精神科医1人、心理療法士2人、心理・社会カウンセラー1人で構成され、開所から4月10日までの間に191人に対応した。

心理・精神医学的ケアを提供――避難民キャンプ

モスルの南に位置するティクリート地区に設置されている一時避難キャンプ モスルの南に位置するティクリート地区に
設置されている一時避難キャンプ

MSFは国内避難民を対象とした緊急援助も行っている。アルビル県西部のハサンシャム、カゼル、チャマコルの各避難キャンプでは移動診療を実施。プライマリ・ヘルスケア、慢性疾患の治療、心理・精神医学的ケアを提供している。さらに2014年以降に避難した人が身を寄せているデバガなどの新設キャンプでも医療援助を提供している。

3月の診療は3512件で、精神保健相談は2292件だった。心理ケアを行う移動診療チームは複数あり、その活動先は合計17ヵ所に及ぶ。

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