イエメン:イッブ州での救命活動開始から1年――多くの日本人スタッフも支える

2017年03月14日掲載

負傷した幼児に腹部超音波検査を実施する関聡志医師 負傷した幼児に腹部超音波検査を実施する関聡志医師

長期にわたる紛争で地域医療が危機に直面しているイエメン。国境なき医師団(MSF)が、南西部イッブ州ティ・アス・スファル地区にある総合病院で医療援助活動を開始してから1年が経過した。MSFが保健省と連携し、急患対応や手術などを行うこの病院には、日本からも多くのスタッフが活動に参加している。その数は、2015年末からの準備期間を含めると、総勢12人におよび、一般外科医、内科医、麻酔科医、整形外科医、手術室看護師などが、紛争地に多くみられる外傷症例などを含む救急医療ニーズに対応している。

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戦線と隣り合わせ

足を銃で撃たれて手術を受けた5歳の男の子 足を銃で撃たれて手術を受けた5歳の男の子

地元ではアル・カイダ病院とも呼ばれる同病院は、イエメン国内にある他の多くの病院同様、2015年3月に始まった紛争のため、財政難に陥っていた。地域には50万人近い住民が暮らすほか、わずか20km先にある隣のタイズ州から戦闘を逃れてきた人も暮らしている。MSFは、イッブとタイズ両州から来る患者を受け入れ、1週間に平均250件の救急診療を行っている。

首都サヌアを拠点に、同病院の運営を指揮する活動責任者の井田覚は、「紛争のぼっ発以降、イエメンでは医療ニーズが爆発的に増えたため、MSFは救急・基礎医療を受けづらくなっている人びとへの援助活動を増やしています。ティ・アス・スファルでの活動は、拡大策の一環です」と話し、「質の高い救急と外科医療の確保、病院における集団災害対策(マスカジュアリティー・マネジメント)の強化、最重症例の入院治療」をプロジェクトの目標として挙げる。

MSFはこの病院で54床の入院病棟を運営。小児と成人用集中治療室に加えて、外傷例や帝王切開を扱う救命手術も行っている。10ヵ月余りで、MSFは6081人の患者を救急処置室で治療、2117件の手術を実施し、1498人の患者に入院治療を行った。プロジェクト開始以降、救急処置室と手術室で扱う症例はそれぞれ1.5倍と5倍に増加した。

専門医療スタッフによって手術と救急が可能に

通訳を介し手術前に患者の母親と話す白川優子看護師 通訳を介し手術前に患者の母親と話す白川優子看護師

この病院の院長であるイエメン保健省のサミール・アル・アリキ医師は、「院内の医療機器を動かす専門医療スタッフが不足していたため、この病院でできる診療はごく限られていました。MSFは手術室と救急処置室を稼働させて救命診療を行うほか、必要な医薬品と医療物資も提供してくれています」と話す。

MSFは現在、同病院において一般外科医、整形外科医、麻酔科医などの専門医療スタッフの常駐を徹底するとともに、州都イッブにあるアル・タウラ病院の救急処置室でも救命救急診療にあたっている。

MSFはイエメンではイッブ州、タイズ州、サアダ州、ハッジャ州、アムラン州、アデン州、アッダリ州、サヌア州で活動。MSFが行う全ての診療は無償で、患者を宗教、部族、政治信条や政治的な関わりで差別することなく治療している。2015年3月以降、イエメン国内にあるMSFの運営医療施設か支援先病院では、合計5万人以上の紛争負傷者と暴力に遭った患者が治療を受けた。

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