カンボジア:MSFの治療で見えてきたC型肝炎の感染状況

2017年01月27日掲載

MSFの治療提供を通じてC型肝炎の感染状況が見えてきた MSFの治療提供を通じて
C型肝炎の感染状況が見えてきた

国境なき医師団(MSF)はカンボジアで、2016年10月からC型肝炎の治療を無償提供している。このプロジェクトが始まった時点では、MSFが治療を通して何を見出すのか、誰もはっきりとはわからない状況だった。

MSFは首都プノンペンのプレア・コサマク病院と連携し、病院内にC型肝炎クリニックを開設。以来、患者数は増え続け、待機者リストは3200人を超えた。それだけでなく、患者の背景や出身地など感染状況の把握につながるさまざまなことが明らかとなった。

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ビタミン剤を処方、「これ以上はできない」

待合室に入りきれず廊下に並ぶ患者たち 待合室に入りきれず廊下に並ぶ患者たち

フォンさん(58歳)は5年前、ベトナムでC型肝炎の確定診断を受けた。ただ、処方されたのは肝機能を改善するためのビタミン剤。ベトナムでもカンボジアでもこれ以上のことはできないと伝えられたという。

彼女には現在、孫もいる。MSFがプノンペンでC型肝炎の診療を無償提供していると知って受診した。より希望が持てる診断が出ることを期待している。

プレア・コサマク病院内に設置されたC型肝炎クリニックには、肝臓内科から患者が紹介されてくる。フォンさんのようなカンボジアの人はクリニックの外廊下にもつめかけ、ここも待合室代わりになっている。

感染者数は人口の2~5%、有病率は不明

このクリニックができるまで、C型肝炎の検査や治療を受けられるのは、プノンペン市内の私立病院や国外の病院での診療費を支払える人だけだった。

カンボジアの感染者数は人口の2%から5%とみられているが、その有病率は不明だ。世界保健機関(WHO)によると、世界全体の慢性C型肝炎の患者数1億3000万人から1億5000万人とみられ、毎年約70万人が関連疾患で命を落としている。

治療薬と診断法の研究・開発に注力

MSFはC型肝炎プログラムを保健省と連携して進めている。最も効果の高い薬と迅速診断法を用いた診療の確立を目指している。また、治療拠点の分散化と診療の普及を進めるために、簡易版治療モデルの考案も行う。

さらに「必須医薬品キャンペーン」はカンボジアの国内外に働きかけ、国の対策として行う際に障壁となる財政的な課題の解消に尽力している。財政的な課題とは、具体的には治療実施計画書としてまとめられる診療方法のコストや、診断に必要な医療機器の費用を指す。

MSFが気づいた予想外の事実

C型肝炎の診療を受ける女性 C型肝炎の診療を受ける女性

プレア・コサマク病院では2016年5月から、HIV感染者を対象に、C型肝炎感染のスクリーニングと診断を行うプログラムが開始されていた。それが10月からは、C型肝炎の単独感染についてのスクリーニングも受けられるようになった。

MSFの活動責任者を務めるマイケル・ルペは、「HIVとC型肝炎の2重感染が、病院の症例数の中で最も割合が少ないと気づいたことがきっかけです」と話す。

この予想外の事態に加えて、ルペはプロジェクトの開始早々、単独感染患者の年代層にも衝撃を受けたという。「陽性患者のかなりの部分を中高年層が占め、40歳以上が全体の91%、年代層の中央値は55歳でした」

治療の待機者3200人以上に

スタッフ数と検査の迅速化がまだ十分ではなく待機者は3200人以上にのぼっている スタッフ数と検査の迅速化がまだ十分ではなく
待機者は3200人以上にのぼっている

MSFのもとにクリニックに紹介されてくる患者数もまた急速に増加している。プレア・コサマク病院の肝臓内科の下にMSFのクリニックが位置している。そこに毎日、約100人が来院している。

スタッフ数が限られ、迅速診断の体制もまだ整っていないため、検査や治療がニーズに追いついていないのが実情だ。

2016年12月末時点では、治療を受けた患者が307人で、待機者リストには183人が記載されていた。現在は、3200人以上が待機している。

フォンさんの自宅からプノンペンの病院までは約70kmの道のりだ。父にも慢性肝臓疾患があり、C型肝炎ではないかと疑っているという。

ルペは「この国では、C型肝炎治療の無償提供はこれが初ケースです。多くの患者がいることや、その属性などさまざまなことが分かりました。フォンさんのように感染していることを知っている人もいますが、たいていの人はC型肝炎――静かに命を奪っていくこの病気について、まだ何も知らない状況です」と指摘する。

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