イエメン:アブス病院の空爆は「過失」ではすまされない

2017年01月10日掲載

アブス病院の爆撃後、まだ使える医療機器などを探すスタッフ アブス病院の爆撃後、まだ使える医療機器などを探すスタッフ

国境なき医師団(MSF)は、イエメン2016年8月15日に発生した支援先病院への爆撃について、爆撃の当事者が発表した声明に強い懸念を表明する。爆撃を受けたのはイエメン北西部ハッジャ県のアブス病院で、患者やスタッフ19人が亡くなった。声明はサウジアラビア主導の有志連合の合同事実調査チーム(JIAT)マンスール報道官が2016年12月に発表したもので、"武装したフーシ派幹部が集結しているとの情報にもとづいて、病院とは判別できない建物の隣にあった車両を爆撃した"とし、"故意ではない過失"だったと結論付けた。

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アブス病院は、元より医療へのアクセスの無い周辺地域の避難民ら数千人の人びとにとって命綱と呼べる病院だった。アブス病院が爆撃によって破壊されたことにより、最も近い病院は最低でも車で3時間はかかることになってしまった。

爆撃被害を受けたMSFは、直後からサウジアラビア国内でJIATおよび軍と協議を重ねてきた。MSFは一連の出来事について独自に事実調査も行っており、その内容をサウジアラビア当局に通知している。しかし、マンスール報道官の声明には協議内容は反映されていない。

JIATの声明を受け、MSFが強調したい点は以下のとおり。

  • アブス病院は識別のための大きなロゴ(縦2m×横5m)が屋上に描かれていた。医療施設としての機能を維持し、所在地も周知されていた。
  • 標的となった車両は爆撃の時点で既に病院敷地内にあった。少なくとも1人の負傷者を搬送してきていた。人ごみを避けながら時速10kmほどで徐行して病院に到着し、爆撃直前の数分間は救急処置室の入り口わきに駐車されていた。
  • JIATの声明では死亡者7人となっているが、実際にはMSFの病院スタッフ1人を含む19人が亡くなり、さらに24人が負傷した。
  • アブス病院のGPS座標は2015年7月以降、最長でも3ヵ月ごとに繰り返しサウジ主導の有志連合に通知されていた。爆撃の5日前の8月10日にも、アブス病院ほかイエメン国内のMSFの全活動地のGPS座標が共有されている。

MSFはこの出来事を「過失」ではないと判断している。紛争下でも病院および民生施設が保護の対象であることを軽視した戦闘の結果と考えている。

紛争当事者は、移動する標的への空爆に至る前にその周囲を確認し、民間人の失命と病院の損害を避けるために可能な限りの予防的措置を講じるべきだ。アブス病院への空爆からは、そうした措置に対する著しい、そして受け入れがたい軽視が見て取れる。

アブス病院爆撃についてサウジアラビアには弁解の余地はない。MSFはこの攻撃に関するJIATの公式の釈明を決して認めない。国際人道法侵害の疑いは第三者機関が調査すべきだと、今回の声明を受け、改めて強調する。

なぜ、命を救う場所に爆弾が降りそそぐのか。

「病院を撃つな!」キャンペーン特設サイトもあわせてご参照ください。

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