リビア:非人間的な環境で拘束されている移民・難民の実情――MSF、緊急援助を継続

2016年12月20日掲載

移民・難民が拘束されている収容センター内 ※ プライバシー保護のため写真を加工しています 移民・難民が拘束されている収容センター内
※ プライバシー保護のため写真を加工しています

各地で続く紛争で国が分断されているリビア。不安定な情勢、経済の崩壊、そして法秩序の弱体化が、国民生活に苦難をもたらしている。その上、リビアは周辺諸国から逃れてきた数十万人規模の移民・難民(保護希望者)にとって目的地の1つ、もしくは欧州を目指すための通過点となっている。

その一方で、保護希望者の多くが、たとえ帰還の意思を持っても、その道が断たれてしまっている。リビア国内での保護体制は機能しておらず、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の関与は一定の範囲に限られている。そもそもリビアは難民条約の当事国ではない。

保護希望者は、治安維持軍、民兵、密航業者のネットワーク、犯罪集団、その他の個人から深刻な暴力や搾取にさらされている。地中海で捜索・救助活動にあたっている国境なき医師団(MSF)チームは、合計5万人を超える人びとを救出した。特に子どもの数が増加傾向にあり、これまでの最年少は8歳だった。

出航したもののリビア沿岸警備隊に拿捕(だほ)されたり、出航前に国内で拘束されたりした人びとは移民収容センターへ送られる。その多くは、かつて工場や倉庫だった建物で、不衛生で非人間的な環境だ。しかも、法律に基づかない形で長期間拘束されている。異議を申し立てる方法はなく、外の世界と接触する方法もないに等しく、医療を受けるすべもない。

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収容センターでの医療利用状況

水・食糧・衛生設備・医療……収容センターではあらゆるものが適切に配給されていない 水・食糧・衛生設備・医療……収容センターでは
あらゆるものが適切に配給されていない

MSFは現在、リビアの首都トリポリ市内と周辺地域にある7つの収容センターで移動診療を行っている。これらの収容センターは不法移民対策局(DCIM)の管轄下にあり、不法移民対抗局(AIIA)とも呼ばれている。

2016年7月に移動診療を始めてから、これまでに5579件の診療を行った。現在も週約500件の診療を行っている。その中には妊婦32人の産前健診や、5歳未満の子どもの診療計41件が含まれている。5歳未満のうちの数人は収容センターで生まれた子どもたちで、生後5時間で診察の対象となった赤ちゃんもいた。

急患が出た場合は、DCIMとの合意に基づいて、MSFが病院への搬送を手配する。これまでに計113人を専門治療が可能な医療機関に搬送した。そのうち7人は重度の精神疾患を発症していた。地域の医療施設はサハラ以南のアフリカ諸国からきた保護希望者を受け入れたがらない傾向にあり、急患の搬送には常に困難が伴う。

症例と拘束生活に関連性

水・食糧・衛生設備・医療……収容センターではあらゆるものが適切に配給されていない 水・食糧・衛生設備・医療……収容センターでは
あらゆるものが適切に配給されていない

MSFの患者には、呼吸器感染、急性水様性下痢、皮膚病、尿路感染症が多く見られる。これらの症状は収容センターの生活環境に関連している。衛生基準が満たされておらず、危険なほど混雑していて、自然光と換気も不足している。一部の施設では、1人あたりの空間が最小で0.41m²で、手足を伸ばして寝られないため、体の痛みを訴える人が多い。

収容センターでは食べ物も不足しているため、病気になりやすい。多くの人は体重が激減し、栄養不良の兆候が出ている。配給は1日平均で600~800キロカロリーしかなく、栄養バランスもとれていない。たいてい味付けなしのマカロニだけだ。時には1人分の配給を5人以上で分け合うこともある。大きなボウルにまとめて出されることもあり、その場合は、最も弱く、衰えた人が分け前にあずかれない。

海で悲劇的な事件に遭遇した人には、心理的応急処置(PFA)チームが心理ケアにあたっている。2016年10月27日には、漂流船が難破して少なくとも100人が水死する事故があった。このときもMSFは生存者29人のケアにあたっている。チームは精神科の診療や心理ケアを、保護希望者だけでなくトリポリ地域の住民にとっても身近で利用しやすいものとすることを目指している。

成人の栄養失調率が異常に上昇

成人の栄養失調も増えている。11月前半の検査で中程度から重度の栄養失調と判定された人は41人に上った。これはMSFが訪問した施設における全拘束者の3%にあたる。干ばつや自然災害の被災地以外で、これほど多くの成人が栄養失調になるのは異常事態だ。

拘束されている人びとは、安全な飲料水を確保することも難しい状況だ。1人1日あたり1リットルに満たないこともあり、多くの人が頭痛、便秘、脱水症状に陥っている。トイレやシャワーの利用も極度に制限されていて、衛生設備は粗悪なため、皮膚感染症、シラミ、疥癬(かいせん)、ノミ感染などの患者が増える原因となっている。

MSFは、数回にわたって衛生用品キットを配布している。貯水容器、バケツ、清掃用品を配布したケースもある。また、食糧在庫が尽きていた収容所では、MSFが地元の市場でパンとチーズを買って届けるほどの緊急事態となっていたケースもある。MSFは引き続き全ての関連当局に対し、質・量ともに充分な食事を提供するように働きかけていく。

劣悪な環境かつ無期限拘束のまま援助を続けるジレンマ

収容所では、人間が、尊厳を剥奪された状態で閉じ込められている。状況が早期改善する見込みはない。拘束されている人びとは、その理由も期間も知らされていない。そのような環境下で"援助"を続けることは、MSFにとっても苦渋の選択だ。

しかし、MSFだからこそ、収容所の環境改善に関してできることもある。拘束されている人びとが"人間"として尊重され、適切な食事と飲み物を受け取り、トイレやシャワーなど衛生設備の整った環境で過ごすことの重要性を、当局に対して毎日訴えている。

また、少なくとも妊婦、乳幼児を連れた母親、18歳未満の少年少女、身障者、健康問題を抱えている人を解放するように働きかけている。

MSFは引き続き、リビア国内で横行している保護希望者の無期限拘束に反対する。

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