ハイチ: ハリケーン直撃から2ヵ月、被災地の現状は?

2016年12月07日掲載

祖母に連れられてMSFの診察を受けにきた5歳の男の子

ハイチ南西部が大型ハリケーン「マシュー」で被災して2ヵ月。現地では今も、多くの被災者が仮設住居で生活し、食糧や飲用水が不足している状況に耐えている。都市圏から遠い一部地域には、緊急援助が届いていないところもある。

被災地で緊急援助を続けている国境なき医師団(MSF)は、特にグランダンス県、南県、ニップ県の生活条件の悪化を懸念している。

特に、コレラ対策は急務だ。ニップ県ではMSFの対策も奏功し、コレラの集団感染を回避できたとみている。一方、他の被災地は依然として対策が必要な状況だ。

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被災地で子どもたちが呼吸器疾患に

移動診療の順番待ちをする被災者たち

MSFは南県とグランダンス県で、子どもたちの健康状態を把握するための移動診療を開始した。MSF医療コーディネーターのキアラ・ブルツィオによると、これまでに、呼吸器系の疾患がある5歳未満の子ども163人を診療した。そのうち60%が上気道感染症で、5%が肺炎または気管支炎だった。

ブルツィオは「適切な住居の不足と山間部の夜の寒さが原因だと考えられます」と話す。また、呼吸器系疾患以外では、清潔な水が手に入らないことによる下痢や皮ふ感染症が多くみられるという。

飲用水の確保がさらに深刻化

MSFが設置した給水ポイント

ハイチでは以前から、多くの自治体が慢性的な飲用水の不足に悩まされていた。今回のハリケーン被害で状況はさらに深刻化している。水道網が破壊され、貯水設備は砂でいっぱいになってしまった

MSFは2010年のハイチ大地震の際にも緊急援助を行い、現在に至るまで復興途上にあるハイチの医療を支えている。中でも、コレラ対策に力を入れてきた。MSFプロジェクト・コーディネーターのスチュアート・ガーマンは、ハリケーン被害によってこうした状況が変わったという。

「被災したニップ県バラデールでは給排水・衛生分野復旧の担い手がおらず、やむなくMSFが水道網を修理し、地元の1万世帯に浄水剤を配る緊急対応に乗り出したのです」(スチュアート・ガーマン)

仮設住居で生活する被災者は異常気象の影響を受けやすい。学校などの公立施設が避難所になっている地域では、地域住民が使用終了を行政に求める動きもある。いずれのケースも、被災者はほかに行き先がない。被災者が長期滞在できるように対策が必要だ。

コレラの新患が急増

コレラ治療センターに入院した3歳の女の子

コレラ感染の疑いがあり、南県ポルタピマンのMSFコレラ治療センター(CTC)に入院した患者は、2016年11月第1~3週の計7人から、第4週だけで12人にまで増加。さらに12月第1週には、地域住民も含め1日平均7人が新規患者としてCTCに入院した。11月後半の3週に比べても、新規症例の急増がわかる。新規患者はMSFの経口補水センターに運ばれたのち、専用の救急車2台でCTCに搬送される。ト

一方、10月4日には保健省と協力し、ニップ県バラデールにもCTC(20床)を設置した。ここを拠点に、現在までに首都圏のコレラ患者190人以上を治療した。また、ゴナーブ島でのコレラ流行にも対応できるように、観測・迅速対応チーム1班を派遣している。

ガーマンは「コレラとの闘いは何よりもまず、患者の死を回避するための医学的治療と、不安定な環境で過ごす人びとへの給水網の改善といった予防策の結束にかかっています」と話す。

ニップ県では現在、緊急援助活動を終了する準備を進めている。ガーマンは「心配していたコレラの集団感染が、ニップ県では発生しませんでした。未然に防げた理由の1つが、MSFの予防策です。ただし、他地域では現在も緊急援助が必要です」(スチュアート・ガーマン)

MSFの主な緊急援助実績(被災から7週間で集計)

移動診療のための物資を運び込むMSFスタッフ
医療援助
  • ニップ県、グランダンス県、南県で4500人以上を診療
  • 南県とグランダンス県の移動診療で外傷計800件、呼吸器感染症、下痢の症例を治療
  • 救助ヘリでの搬送30人、そのうち18人をポルトープランス市タバル地区のMSF外傷センターで受け入れ
  • ポルピタマン病院を支援し、10月31日以降で14件の分娩介助などを提供
コレラ治療
  • ポルタピマンにCTCを設置し、360件を治療
  • バラデールにCTC(19床)を設置
  • ポルトープランス市ディキニ地区のCTCで、保健省を支援して190人のコレラ患者に対応
給排水・衛生管理
  • グランダンス県モウォン、シャンベラン、ダム・マリ、アンスデノー、レジワ、アブリコの各地のCTCで、病院衛生分野の支援を提供
  • 南県の1400世帯に仮設住居を設置
  • ポルタピマンの渓流域で衛生用品キット4500組を配布
  • 飲用水を配給、南県で345万9000リットル、グランダンス県で159万2000リットル、バラデールで3242万4000リットル、フォン・トルテュで218万4000リットル
  • 公共給水設備を復旧、バラデールで17基、フォン・トルテュで7基の合計24基
  • ポルタピマンの集水設備2基を修理
  • ニップ県下のバラデールとグランブーカン、南県、グランダンス県で家庭用の浄水剤合計450万錠を配布
物資の配布
  • グランダンス県カイミート島 の850世帯に雨どいのパイプや板金などの修復用建材、調理キット、衛生用品キット、貯水容器、毛布を配布

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