ウガンダ:難民の到着続き、行政対応が限界に――MSF、医療援助を提供

2016年11月22日掲載

アフリカ中央部の内陸国ウガンダ(地図)。北隣の南スーダンの内戦から逃れ、難民 となってこの地にとどまる人が増え続けている。大エクアトリア地域出身のローズさん(37歳)もその1人だ。1ヵ月前、5人の子どもを連れて避難してきた。

「お隣さんは男たちに家から引きずり出され、拉致されてめった切りにされました。ほかの家族も連れ去られ、次は自分の番ではないかと……」

ウガンダ北部には、ローズさんのような人がここ3ヵ月間で17万2000人も到着した。誰もが悲惨体験をしたり、脅迫されたりしている。国境なき医師団(MSF)はキャンプ内に診療所を設置。また、移動診療も開始して医療ニーズに対応している。

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水と食糧の確保が最大の課題

MSFが運び込んだ飲料水用の給水車

ウガンダ政府はユンベの町の一角に難民の受け入れ用地を確保した。ビディ・ビディ難民キャンプと名づけられたこの区域はすぐにいっぱいになった。政府は新たに用地を確保して難民キャンプを造成しているが、受け入れ手続きや保護サービスの運営は追いついていない。

人びとは住む場所が確保できなかったり、確保できたとしても他の家族と一緒に狭い空間を共有したりしている。また、食糧と水の入手に日々苦闘している。

その結果、病気になる人も増え続けている。MSFはキャンプ内で外来診療所を開設し、移動診療も始めた。給排水・衛生活動の専門家は各所にトイレを設置。また、キャンプ内での給水量を増やし、1日あたり6万6000リットルの水をタンクローリーで運び込んでいる。

南スーダンの首都ジュバでは2016年7月8日、戦闘が再燃した。その1ヵ月後、首都は小康状態となったが、紛争は周辺地域に飛び火した。

過酷な体験を抱えて

ビディ・ビディのMSF外来診療所に来院したビスタさんが、おぞましい体験について証言する。

「畑仕事をしていたときに銃声が聞こえ、やぶに隠れました。逃げる途中に流れ弾が小指にあたって砕けてしまいました。出血がひどく、薬草を摘んで包帯代わりにしました」

「1ヵ月ほど経ったある日、ご近所さんだった女性と一緒に食べ物を取りに帰りました。見つからないように慎重にしたつもりでしたが、彼女が武装兵に見つかってしまい、襲われて強姦されてしまいました。彼女の叫び声で何が起きたかさとりました。私は地面に伏せ、やぶまではって帰りました。自宅を見たのはそれが最後です」

家族、隣人、友人が目の前で撃たれた人、夫が職場から帰ってこなかったと話す人もいる。武装兵に拉致された可能性が高い。

避難する際に家財を持ち出したり家族の帰宅を待ったりする時間すらなかった人、ウガンダまで徒歩でやってきた人も多い。武装兵に見つからないようにやぶに隠れながら、9日間かけて国境を越えて来た人もいる。

環境整備が追いつかない状況に

給水ポイントで給水車を待つ人びと

ウガンダにたどりついた人はバスに乗せられ受付センターへ向かう。ここで難民登録をし、居住スペースの割り当てを受け、蚊帳、自宅建設用の道具、台所用品、食糧、貯水容器を受け取る。

世界各地で難民となっている人びとに比べると、この保護サービスはしっかりしていると言える。しかし、到着数の急増で生活環境の整備が追いつかず、キャンプ内の環境はよいとは言えない。

MSFの外来診療所で看護チームリーダーを務めるエノシュは、「当初は特に環境がひどく、人びとが苦しむ姿は見るに堪えないほどでした。生活の場を追われ、異国でコレラなどの病気になっているのですから……」と話す。

人びとは、自力で仮設住居を建て、そこを清潔に保とうと格闘している。食糧配給は大混乱で、給水タンクの脇にはタンクローリーの到着を待つ人の長い行列ができている。

MSF診療の6割はマラリア

MSF診療所で診察を受ける母子
子どもの高熱と下痢がおさまらないという

劣悪な生活環境と清潔な飲料水の不足は、マラリア、呼吸器感染、皮膚感染、下痢、赤痢などのまん延を引き起こしている。MSFはコレラ感染が複数発生していることも確認している。

また、エノシュによると診療件数の6割はマラリアで、毎日70~200人ほどを治療しているという。「人びとに割り当てられた区画はやぶの中で、蚊帳をつるす場所がないことが多いのです。MSFはマラリア治療を提供しつつ、殺虫剤をまくなどして蚊の繁殖地を破壊できないか調べているところです」

このほか、キャンプ内の“ゾーン2”に滞在している約4万人に対し、恒久的な飲料水源を設置する方法を検討している。給水ポンプで地下水をくみ上げる方法や、給水パイプを通す方法などが候補にあがっている。

それでも“平和”がありがたい

患者にわたす薬を仕分けるMSFの薬剤師

毎日のように新たな到着があり、キャンプは拡大し続けている。生活環境の改善が必要なことは明らかだ。ただ、到着した人びとは、深い心の傷となるような体験をした末にたどりついたこのキャンプに、“平和”を見出して安心を感じてもいる。銃声が聞こえないこの地域で、生活再建にとりかかることができる。それがゼロからの出発だとしても……。

難民の1人であるメアリーさん(37歳)はMSF診療所から近隣の病院への移送を待っている。南スーダンでの生活に比べれば、キャンプでの生活は「けっこういいほうだ」と感じている。

「国では、家は焼かれ、大勢が亡くなり、ストレスに満ちていましたから。ウガンダでも楽ではありませんが、なんとかやっていけています。充分な食べ物が手に入らないことが主な問題ではありますが、とにかくここは平和ですから。しかも、MSFが活動してくれているので、家族が必要としている薬を無償でいただけるのですから」

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