タジキスタン: パーティーと新薬に希望をこめて――結核と闘う子どもたち

2016年11月11日掲載

2ヵ月に1度のパーティーでダンスを楽しむ子どもたち 2ヵ月に1度のパーティーでダンスを楽しむ子どもたち

タジキスタンの首都ドゥシャンベにあるマチトン小児病院。結核でこの病院に入院している子どもたちや、自宅やコミュニティ・センターで療養を続けている子どもたちがパーティーを開いている。ダンス、歌、アニメのキャラクターとのふれあいなど子どもたちが大好きなことばかり。主催しているのは国境なき医師団(MSF)だ。

実はこのパーティー、子どもの結核患者の向けの治療プログラムの一種で、集団セラピーも行われる。2ヵ月ごとに開いていて、前回の9月開催では約40人の子どもたちと保護者が参加した。目的は、長期入院の子どもの不安を軽くすることだ。

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自分は独りじゃない!と思える時間

誕生日のお祝いを受ける子どもたち 誕生日のお祝いを受ける子どもたち

パーティーは入院生活の息抜きになるし、心の支えを感じる場にもなる。集団セラピーでは、子どもたちはそれぞれ自分のことについて話す。自分と同じ結核治療を受けている子どもたちと交流するきっかけにもなる。薬の飲み方を教えるスタッフが司会者で、副作用で気分が悪くなったときにどうするか、治療が長く続くことについての説明、治療中でも楽しく生活することの大切さなどを伝えていく。

パーティーはまったくの手作りで、MSFと保健省のスタッフが数週間前から準備する。来賓の招待、物品の注文、着ぐるみパフォーマーの手配に至るまで自分たちでこなしていく。

前回から今回までの間に誕生日を迎えた子どもたちには特別なプレゼントが贈られる。たいていは実用品で、化粧品などが入っていることもある。ほかの出席者にもプレゼント袋が配られる。

MSFの新薬導入をきっかけに

デラマニドを導入して初となる患者の
治療方針を話し合うスタッフたち
デラマニドを導入して初となる患者の
治療方針を話し合うスタッフたち

MSFは首都ドゥシャンベで提供している結核対策プロジェクトに、50年以上ぶりに開発された新薬「デラマニド」を導入した。保健省と数ヵ月にわたって協議し、実現した取り組みだ。

きっかけはMSF主催で2015年に開催した「第1回東欧・中央アジア結核シンポジウム」だ。その会場で、複数の結核治療薬が効かなくなる多剤耐性結核(MDR-TB)および超多剤耐性結核(XDR-TB)の治療にデラマニドを導入し、成功したケースが報告された。

シンポジウムに参加していたタジキスタン政府は、MSFに国内でのデラマニドの使用を許可。同時に、国内に持ち込めるようにするために、人道目的での輸入も認めた。MSFは2015年にも、タジキスタンで初となる結核新薬「ベダキリン」の輸入を認められた。今回のデラマニド導入で成果がさらに拡大している。

デラマニドとベダキリン、半世紀ぶりにこの2つの新薬が登場したことで、効果的な治療法がなかったMDR-TBとXDR-TBの患者に希望の光が差した。タジキスタンのようにMDR-TBの流行が拡大している国で新薬を流通させることは、患者の治療と感染制御の2つの観点から不可欠だ。

より適切な治療を目指して

デラマニド導入で希望の光が差し
笑顔を見せる患者とスタッフ
デラマニド導入で希望の光が差し
笑顔を見せる患者とスタッフ

新薬導入はMSFのプロジェクトの主目的だ。この取り組みを成功させることで、タジキスタンの国家結核プログラムにおける新薬調達を後押しする狙いもある。さらにタジキスタンにとどまらず、より広域的な利用拡大へとつながるだろう。そのためには、東欧や中央アジアでMSFが行っている結核対策プロジェクトとの連携強化も求められる。

タジキスタンでは、MSFが2011年に活動を始めるまで、薬剤耐性結核(DR-TB)の小児患者は、効果的な治療を受けられなかった。DR-TBには第一選択治療が効かないからだ。

MSFは保健省に協力し、結核の子どもと同居している家庭内の接触者を治療。できるだけ外来対応として患者・保護者の負担を減らすとともに、つらく長い治療を最後まで続けられるように、栄養補助や心理・社会的支援も提供している。

また、治療のさらなる適切化を図るため、患者ごとのニーズに応じて薬を配合するなど、子ども用のMDR-TB治療薬の処方も行っている。

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