ボリビア:シャーガス病媒介虫の駆逐を目的とした情報システムを開発

2016年11月10日掲載

シャーガス病対策の新技術ではモバイル通信機器を活用する シャーガス病対策の新技術ではモバイル通信機器を活用する

国境なき医師団(MSF)は2016年、「eMOCHA」と名付けた中央情報システムの導入をボリビアのナルシソ・カンペロ県下の3つの行政区で進めている。

この技術革新により、「サシガメ」(※)や「キッシング・バグ」と呼ばれるシャーガス病を媒介する昆虫の生息場所をショートメッセージサービス(SMS)で通報できるようになった。素早く効率的な駆除につながることが期待される。

  • 「サシガメ」はサシガメ科の昆虫の総称で、シャーガス病は主に中南米に生息している種類が媒介する。

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報告に1ヵ月 ⇒ 携帯の無償SMSですぐに通報

サシガメがすみかとする家の壁の隙間などに消毒液を散布していく サシガメがすみかとする家の壁の隙間などに
消毒液を散布していく

GPSの位置情報の参照技術を用いた基盤が開発されたことで、リアルタイムでサシガメの生息場所を特定できるようになった。携帯電話の無償のSMSでeMOCHAに通報する仕組みだ。eMOCHAに寄せられた情報に基づき、サシガメの生息場所となっている家屋の消毒する。

同時に、技士が訪問して家庭の構成人数やこれまでの消毒回数などを調べ、スマートフォンのアプリケーションで送信する。それらは、サシガメが生息している家屋の周辺の疫学的な監視と缶制御に有益な補完データとなる。以前はサシガメの存在を報告するだけで1ヵ月もかかってたため、新システムは画期的だ。

「プライマリ・ヘルス・ケア」の手法で取り組みを普及

都市部から遠く離れた地域でも同一の対策がとれるように「プライマリ・ヘルス・ケア」の手法を活用している 都市部から遠く離れた地域でも同一の対策がとれるように
「プライマリ・ヘルス・ケア」の手法を活用している

試験プロジェクトの結果は良好だ。今後、試験範囲の3つの行政区以外でも実用可能か、また、シャーガス病以外の疾病の把握も可能かを見極める。このプロジェクトは、2015年にMSFと保健省がシャーガス病対策として共同で着手した包括的保健モデルの枠組みの中で進められている。

さらにMSFは、行政区の中心地から最も離れた地域にいるシャーガス病患者の診療も、「プライマリ・ヘルス・ケア」(※)で可能であることを証明した。チュキサカ県モンテアグドでは、地域社会を対象に研修と周知活動を行うとともに、地元の診療所17軒の保健医療従事者を技術支援。陽性患者の効率的な特定を可能にする簡易検査などの診断と、シャーガス病の有害な合併症の治療・処置の両面を後押ししている。

  • 健康を基本的人権として位置づけ、それ達成するための取り組みにおいて、個人の主体的な参加や自己決定権を保障する考え方およびその手法

この取り組みによって、2015年は3284人が検査を受けた。そのうち1165人がシャーガス病と診断され、223人が治療を開始した。2016年1月~8月には、3096人が検査を受けた。そのうち673人の感染が確認され、393人が治療を始めた。感染者の約30%に循環器系の合併症が現れることから、MSFは心電計7台、簡易検査キット1720回分、噴霧器5台の寄贈も行った。

すべてのシャーガス病患者に治療を

治療を受けている人の割合を高めるためにさらなる対策を進めている 治療を受けている人の割合を高めるために
さらなる対策を進めている

MSFがボリビアで活動を始めたのは1986年。過去30年間の半分をシャーガス病対策に費やしてきた。これまでで通算7000人以上の患者が治療を受けている。ボリビアはシャーガス病の有病率が世界最悪の水準だが、最貧困地域でも予防・抑制活動が実践されている。

「シャーガス病対策連合(Chagas Coalition)」によると、ボリビアの人口の6.1%、実数にして60万人以上が感染者で、さらに50万人がリスク集団だという。また、ボリビア国家シャーガス病プログラム(PNCH)によると、2015年は2万3717人が陽性診断を受けている。しかし、治療を開始しているのはその1割にとどまっているという。

MSFは、シャーガス病とその合併症について、これまで以上に包括的な対策を確実に提供できる体制を望んでいる。その達成に向けて、対策が進められている3つの行政区以外の流行地域でも参照できるように、保健省と共同で手順書を作成している。

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