国連の「薬剤耐性に関する宣言」を歓迎――MSF必須医薬品キャンペーン

2016年10月07日掲載

国連総会で薬剤耐性に関するハイレベル会合が開かれ、2016年9月21日、「薬剤耐性に関する宣言」が承認された。これにより各国政府は「薬剤耐性によってさまざまな問題が起きている」との共通認識を持つ重要な1歩を踏み出したことになる。国境なき医師団(MSF)は宣言を評価し、世界的な取り組みとして実行されることを求める。なお、公衆衛生に関する議題が国連のハイレベル会合で取り上げられたのは今回でまだ4度目に過ぎない。

宣言では、すべての国において、保健医療体制や医療系人材・研究所の増強を図り、既存の抗菌薬の使用方法を改善すべきだとの認識が示された。さらに、既存の医療ツールの普及の必要性についても強調されている。

医療ツールの普及には、ワクチンの価格低減や、必要とするすべての人が入手可能な医薬品の開発が含まれている。MSFは従来、感染症の診断能力の向上、抗菌薬の使用法の改善、院内感染の予防、薬剤耐性の発現率の監視などを通じて薬剤耐性の制御に携わってきた。さらに、新たな診断ツール、治療法、治療薬などの開発サポートも続けていく。

また、薬剤耐性に関するハイレベル会合でも、「医薬品アクセスに関するハイレベル・パネル」の報告書と同様に、製薬業界に対して下記の分野でより高い透明性を確保するよう求めている。

  • 研究開発費と製品などの価格
  • 現行の研究開発資金調達方法と、企業が設定している救命ツールの対価を切り離すこと

「薬剤耐性に関する宣言」に対し、MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は下記の談話を発表した。

「薬剤耐性の世界的な対策に注力を」――MSFインターナショナル会長 ジョアンヌ・リュー

MSFは「薬剤耐性に関する宣言」を歓迎します。世界中で問題となっている感染症の薬剤耐性について、取り組みが必要だという各国の共通認識を示しているからです。各国政府には、自国の状況にあわせた計画を全面的に実施し、薬剤耐性の世界的な対策につなげていくことが求められます。

ヨルダンで受け入れている紛争被害者、パキスタンの新生児、ハイチのやけどの患者、南アフリカにいる多剤耐性結核の感染者など、最新の抗菌薬しか効かなくなった症例を世界各地で目にします。

医薬品の適切な使用、診断能力と精度の向上、抗菌薬の入手の安定といった点を徹底していくことが必要です。ただ、政府と製薬業界に今すぐできることがあります。例えば、肺炎予防ワクチンの価格を引き下げることで、より多くの子どもを肺炎から守ることができます。国内の医療政策を改訂し、医薬品や診断ツールをさらに利用しやすくすれば、薬剤耐性結核の治療・予防によい影響を及ぼします。

今回の宣言は、「医薬品アクセスに関するハイレベル・パネル」の報告書をさらに発展させた内容です。MSFは下記の点において宣言内容を好意的に受け止めています。

  • 医薬品の研究開発体制の限界が指摘されている
  • 公衆衛生上の取り組みの推進が含まれている
  • 薬剤耐性の対策として新たな抗菌薬・ワクチン・診断ツールの開発の重要性が指摘されている
  • 必要とする人のもとへそれらを普及させることの重要性を指摘している点

さらに、宣言が下記のことを呼びかけていることも喜ばしく思います。

  • 研究開発費と、企業によって設定された救命ツールの対価を切り離し、
  • 新製品創出に公的財源が充てられるときは、一般市民にリターンがあること。

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