地中海:相次ぐ海難事故、4日間で2000人を救助――安全・合法の移動手段を

2016年10月05日掲載

疲労と安心で眠りにつく救助された人びと 疲労と安心で眠りにつく救助された人びと

中東やアフリカから地中海を渡って欧州を目指す移民・難民の海難事故が多発しており、国境なき医師団(MSF)は現在も3隻体制で捜索・救助活動を行っている。2016年10月3日には、11隻のボートから計約2000人を救助した。

救助した人の中にはイタリア本土への医療搬送を必要とする患者もいた。その中には妊婦も含まれていたが、症状が重く、搬送される前に息を引き取った。

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水中に投げ出され、もれた燃料で化学やけども

捜索・救助船で食事の配給を受ける人びと 捜索・救助船で食事の配給を受ける人びと

捜索・救助船の1つのディグニティ・ワン号でMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるニコラス・パパクリソストムーは「救助現場に到着してみると、人びとは水中に投げ出されていて、おぼれかけている人もいました。恐ろしい光景でした」と振り返る。同船には213人が救助された。

「誰もがおびえていました。もれた燃料で化学やけどを負っている人も多くいました。危険な容態の人から順に医療搬送を続けている最中に、1人の妊婦が亡くなりました。2016年のこの時代に、このような危険な旅しか選択肢がないなんて、あってはならないことです」

この集中的な救助活動は、捜索・救助船の1つのバーボン・アルゴス号が復帰した直後に起きた。8月17日にリビア沿岸警備隊との事件に巻き込まれて以降、船は待機状態にあったのだ。 同船はこの日だけで8回の救助を行い、合計1019人を救助した。また、もう1つの捜索・救助船のアクエリアス号も720人を救助した。

捜索・救助活動は「必須だが不完全な解答」

アクエリアス号はMSFと市民団体「SOSメディテラネ」が共同運航している アクエリアス号はMSFと市民団体「SOSメディテラネ」が
共同運航している

救助された人びとはごく小さい木造船にすし詰め状態で乗り込んでいた。船内では医療チームが、命に別状のない患者の治療にあたっている。アクエリアス号からは、「救助者の多くをエリトリア人が占めており、栄養状態が深刻だ」との報告が上がっている。

イタリアでMSFの活動責任者を務めるトマソ・ファブリは「安全で合法的な移動手段がないために、数百人単位の人びとが地中海で命を落とし続けています」と指摘する。

「捜索・救助活動は"不完全な解答"ではありますが、MSFのような独立した団体が地中海でどれほど必要とされているかをよく表しています。 でも、はっきりさせておきましょう。捜索・救助だけでは不十分です。安全で合法的な移動手段が今すぐ必要です。地中海での死亡事故を食い止めるにはそれしかありません」

MSFは、2016年4月21日に今年度の活動を開始して以降、捜索・救助船3隻で100回以上にわたる活動を行い、半年間で合計1万4547人を救助した。一方、少なくとも3230人が命を落としていることも確認している。現状では捜索・救助が必須の活動ではあるが、こうした事態を解消する唯一の有効策は安全で合法的な移動手段を用意することだ。MSFはこの主張を今後も続けていく。

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