ヨルダン:シリアとの国境閉鎖で、医療の空白は3ヵ月以上に

2016年09月27日掲載

バームの非公式国内避難民キャンプ バームの非公式国内避難民キャンプ

2016年6月にヨルダンがシリアとの国境を閉鎖してから3ヵ月が経過した。シリア・ヨルダン国境線上の2つの要衝では、紛争を逃れてきた大勢のシリア人が、必須医療も受けられずにいる。国境なき医師団(MSF)はヨルダン政府に対し、国境地帯での人道援助規制を解除し、シリア人が自国では望めない救命治療の機会を得られるよう改めて求めている。2つの要衝であるヨルダン北東部の砂漠地帯と南部ラムサから状況を報告する。

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バーム:草木も生えない過酷な地

ヨルダン北東部、シリアとの国境沿いの砂漠地帯に、通称「バーム」と呼ばれる土でできた長い壁(土塁)にはさまれた場所がある。そこには紛争を逃れてきた7万5000人余りのシリア人が滞留を余儀なくされている。全体の4分の3は女性と子どもたちだ。2016年5月、MSFは現地で緊急医療援助を開始し、栄養失調と小児の下痢を中心に広範な医療ニーズを確認していた。

しかし6月21日、バーム付近での自動車爆弾爆発により人命が失われたのをきっかけに、ヨルダン政府はシリア国境を全面閉鎖。MSFは活動開始後わずか23日でバームにおける活動の全面休止を言い渡された。この国境閉鎖で、足止め状態の人びとの状況はさらに悪化、水と食糧は足りず、生活環境も不衛生となっている。これまでに給水が複数回、食糧支援が1回あったものの、医療は6月以降、一切受けられずにいる。MSFは、百日せきと疑われる呼吸器疾患流行の報告も受けているが、現地入りが一切認められず、疾病の特定も患者の治療もできていない。

ヨルダンでMSF活動責任者を務めるルイス・エギルスは、「シリア人は草木も生えない過酷な砂漠地帯のバームで足止め状態です。夏には気温が50℃を超え、冬も厳しく寒い場所です。良質な医療の提供を含む、十分で継続的な人道支援が、何よりもまず必要です」と訴える。

MSFはシリア人の医療ニーズに直接応じられるよう、人道援助規制の解除と、医療チームの立ち入り許可をヨルダン政府に要請している。一方、このシリア人たちのシリア国内への強制送還や、平等な医療の提供を妨げる施策は一切容認しないことを強調。バームで進退きわまった人びとの危機的状況への長期的な解決策を改めて求めている。

ラムサ:わずか5km先にいる患者

バームから西に250km、もう一端のシリア・ヨルダン国境では、シリア南部からやってきた紛争負傷者が、ヨルダンの都市ラムサにあるMSF救急外科病院への移動を阻まれている。ラムサ病院救急処置室のMSFスタッフは活動を開始した2013年9月から国境が封鎖された2016年6月までの間、2400人以上のシリア人を診療したが、現在は手術室も病棟ももぬけの殻に近い。

MSFプロジェクト・コーディネーターのミカエル・タロッティは、「現在、ラムサ病院はほとんど無人で患者は9人だけですが、シリア人負傷者がわずか5km先で国境封鎖により治療を受けられずにいることはわかっています。死傷者の増加が続く傍らで、この病院の救急処置室と手術室は閑散としており、大変な無力感を覚えています」と嘆く。

緊急搬送の必要がありながら、ヨルダン入国を認められなかったシリア人紛争負傷者はMSFが把握しているだけでも6月21日以降で56人。そのうち11人が3~14歳の子どもだった。MSFは、シリア・ヨルダン国境において紛争負傷者の医療搬送が速やかに再開されるようヨルダン政府に求めている。

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