マリ:北部で人道援助を阻む新たな武力衝突

2016年08月08日掲載

子どもたちを対象に季節性マラリアの化学的予防(SMC)を実施した 子どもたちを対象に季節性マラリアの
化学的予防(SMC)を実施した

暴力的事態が再燃したマリ北部に関して、同国で国境なき医師団(MSF)活動責任者を務めるコム・ニヨムガボに現状を聞いた。

北部の状況は?

マリ北部では2012年以降、深刻な危機が起きています。地域の独立を求めて始まったものが、時とともに宗教運動や密売ルートの縄張り争い、資源不足を背景とした地域住民の搾取と犯罪行為も内包するものへと変容していったのです。

アルジェ和平協定署名から1年を経ても大きな進展はありません。もし成果があったとしても、昨今の多様な勢力間の戦闘再燃で台無しにされてしまいそうです。北端のキダル州では、2016年7月21日に武力衝突が発生し、少なくとも50人が死亡、82人が負傷。その1週間前にもガオ州でデモが暴動化し、複数の人が亡くなり、およそ30人がけがを負いました。これらの出来事は部分的には、たびたびの和平協定にも関わらず、実際に日常の中で状況改善が見られないことへの地域住民のいら立ちを反映しています。

その一方で、人道援助団体に対する犯罪行為も続いています。そうした現状が人道援助の派遣に著しい影響を及ぼし、武装勢力間の衝突と犯罪の増加によって人道援助従事者が地域住民に援助を届けることが制限されているのです。

地域住民の主なニーズは?

現地では主に医療へのアクセス、栄養失調などの食糧不足に関連する問題、水と住居の確保に関して、人道援助が求められています。

北部地域は国の統治が完全には及んでおらず、紛争ぼっ発後、保健医療システムが崩壊してしまいました。

容易に医療が利用できない、特に難しい境遇の人びともいます。たとえば、キダル州やガオ州のアンソンゴ圏北部の住民は移動生活者で、1年のうち何ヵ月かを医療のない牧草地で過ごします。

マリ北部でのMSFの活動内容は?

MSFが支援するアンソンゴ圏の中核病院 MSFが支援するアンソンゴ圏の中核病院

ガオ州のアンソンゴ圏では紛争ぼっ発当初の2012年から、キダル州では2015年から活動してきました。これらの地域は国内でも紛争の影響が特に深刻な場所です。MSFは武力紛争の影響が及んだ住民に無償で質の高い医療の提供を継続し、1次・2次医療でよく見られる疾病の治療、致命的な小児疾患を予防するためのワクチン接種、季節性マラリアの化学的予防(SMC)、急患への対応など、紛争被害者のための医療に注力しています。

アンソンゴ圏では、中核病院の診療、小児・成人患者の受け入れ、周産期ケア、栄養治療、外科を支援するとともに、この病院と周辺の都市圏外の診療所との患者紹介システムも確立。さらに9~12月の期間限定で、主に5歳未満児と、この時期に地域を巡る移動生活者の妊婦を対象としたプログラムを立ち上げました。

こうした地域の住民は、保健医療の専門家と接触するまで大変な長距離(多くの場合、少なくとも50km)を移動しなければなりませんが、これも約5年の紛争で弱体化しています。

同じくアンソンゴ圏で開始したSMCの目的は、マラリア流行のピークの季節に子どもたちを守ることにあります。現在、安全上の理由で進捗していませんが、キダル州でもこのSMCを実践する予定です。

キダル州での活動についてご説明ください。

キダル州にはマリ政府の統治が及んでいません。治安の乱れのせいで、州内にはごくわずかな数の人道援助団体しかいないです。そして、昨今の戦闘が状況をさらに悪化させています。それでもMSFは2015年から、現地NGOのSOLISA(Solidarité pour le Sahel:サヘル地帯のための連帯)と連携し、州都のキダル市の診療所2軒と郊外の多数の医療施設の支援を続けています。

MSFの活動は、北部ではガオ州とキダル州のほか、トンブクトゥ州で、また南部でもシカソ州で行なっています。

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