世界マラリアデー: 効果的な対策のための5つのポイント

2016年04月25日掲載

4月25日は世界マラリアデーです。

MSFのマラリア検査を受ける子ども(中央アフリカ共和国) MSFのマラリア検査を受ける子ども(中央アフリカ共和国)

マラリアの患者数・死亡者数は15年間で着実に減少し続けている。ただ、現在も毎年40万人以上が命を落としていることもまた現実だ。最も深刻な地域はアフリカで、マラリアで亡くなった人に占める割合は90%に達する。また、年齢別では、死亡者数の70%が子どもだ(世界保健機関・2015年統計)。

マラリア対策の多くの課題に取り組み、予防・診断・治療を改善していくためには、複数の戦略を組み合わせて実行することが必要だ。本記事では、MSFが特に重視している5つのポイントに注目した。

MSFは2015年、世界各地で計約200万人にのぼるマラリア患者を治療した。また、ニジェール、マリ、チャドの子ども計50万人以上に季節性マラリアの化学的予防(SMC)を行った。

1. 気候変動の影響

マラリアの検査・診療で列をなす人びと(南スーダン) マラリアの検査・診療で列をなす人びと
(南スーダン)

MSFは医療援助活動を通じて、2012年、2014年、2015年にマラリア患者数が大幅に増加したことを確認している。コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、ウガンダ、マリなど主にサハラ以南のアフリカ諸国でみられた傾向だ。例えば、南スーダンのイダでは、2015年にMSF診療所で治療を受けた患者数が前年比3倍増(7500人から約2万人)となった。

さまざまな原因が考えられるが、気温の上昇と雨量増加につながるエル・ニーニョ現象が大きく関わっていると考えられている。以前はマラリアがなかった地域でも症例が増えているのだ。

2.殺虫剤への耐性

マラリア対策の主軸は病気を媒介する蚊の駆除だ。殺虫剤をしみこませた蚊帳を使うこと、住宅内外に殺虫剤をまくこと、蚊の幼虫であるボウフラが住みかとする水たまりなどをなくすことが挙げられる。

世界保健機関(WHO)によると、2014年にはアフリカの人口の半数以上が殺虫剤入りの蚊帳を手に入れられる状況だった。2000年にはわずか2%だったことを考えると飛躍的な増加だ。

ところが、殺虫剤の成分「ピレスロイド」に耐性を持つ蚊が出現したのだ。この新事実に関する研究発表はまだ限定的だが、MSFのもとにはすでに、「殺虫剤の効果が落ちた」との報告が届いている。ただ、複ピレスロイド系殺虫剤の成分を含む蚊帳は現在も流通し続けている。

3.予防:有効だが長持ちしない戦略

MSFのもとで栄養治療を受ける1歳半の子ども(チャド)
MSFのもとで栄養治療を受ける1歳半の子ども
(チャド)

MSFは、2012年にマリとチャドで、最初の季節性マラリアの化学的予防(SMC)を大々的に展開した。この予防策はサハラ砂漠南縁のサヘル地帯に位置する13ヵ国で国家政策に反映された。2016年には1500万人以上の子どもがこの予防策を受ける見込みだ。

SMCは、感染率が高くなる時期にあわせ、予防的に抗マラリア薬を投与することで高い効果を上げている。通常のマラリアで最大80%、重症マラリアで最大70%も症例数を減らせたことが報告されている。また、栄養状態の診察や治療、各種の予防接種など他の医療活動とSMCを組み合わせることで、マラリア単独での対策時よりも多くの子どもを診察することができ、乳児死亡率の改善にもつなげられる。

ただ、SMCは永続的なマラリア対策ではない。治療薬の効果は、投与してから数週間で失われるためだ。

4. 原虫は抗マラリア薬に耐性を獲得

マリで行われたSMCの様子 マリで行われたSMCの様子

WHOは2001年以降、マラリア治療にアルテミシニンと他の抗マラリア薬を併用する治療法(ACT)を推奨している。アルテミシニンは中国で古くから漢方薬として使われていた薬草成分だ。それまでの治療薬の主成分であるクロロキンやスルファドキシン/ピリメタミン合剤に対し、耐性を持つ原虫が現れたことから、ACTが取って代わったのだ。

その結果、15年間でマラリアによる死亡件数は大幅に減少した。しかし2000年代ですでに、東南アジアや中南米で、アルテミシニンに耐性を示す原虫が報告され始めた。アルテミシニンのみで他の薬と併用しない単剤療法、偽造など劣悪な品質の薬剤が出回ったこと、症状が消えた段階で完治を待たずに治療を中断することが、耐性の発現を早めているとみられる。アルテミシニンの代替薬は数年間登場しないとみられ、公衆衛生上の新たな大問題となっている。

5. 有効なワクチンの探求は続く

マラリア予防ワクチンの開発も続けられている。数十年にわたる研究の結果、ワクチン「RTS,S」が臨床試験を完了した。だが効果は限定的だった。重症マラリアには特に効果が薄かったのだ。使用法も複雑で、投与は全4回、しかも3回目と4回目の間に18ヵ月空ける必要があった。

2015年10月、WHOの戦略的諮問委員会(SAGE)は、小規模な試験的プログラムで新ワクチンを導入し、使用条件を研究することを勧告した。MSFはこの研究に参加を希望していない。新ワクチンを貧困国に導入するのは困難だとみているからだ。また、予防効果が低く、安全性情報が限られていることも重視した。MSFは今後も安全、有効、安価で、途上国でも使用しやすいワクチンを求めていく。

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