フランス:MSF、移民・難民キャンプの移転を主導――劣悪な生活環境を改善へ

2016年03月10日掲載

中東やアフリカから欧州に渡り、安全な生活を求めて北上する移民・難民のうち、イギリスを目指す人びとがフランス北部の港町に滞留し、社会的・人道的問題となっている。

国境なき医師団(MSF)は、複数の移民・難民キャンプで医療・人道援助を続けている。グランド=サントに設置されているバロック・キャンプ(滞在者約2500人)も活動対象の1つだ。MSFは衛生インフラの改善と医療提供を行ってきたが、現在位置での取り組みには限界があると判断し、自治体と連携してキャンプの移転に踏み切った。

MSFは新キャンプの立ち上げと、2016年3月7日から始まった移転業務をサポート。新キャンプの管理・運営は自治体が選定した地元の援助団体に委託され、MSFは医療提供を続けていく。

2016年3月10日時点で、キャンプの移転作業は完了している。旧キャンプは無人となり、自治体による解体作業が始まった。新キャンプには1300人が移り、大半は木造の仮設住居への入居を完了した。十数名はテントでの生活となったが、数日中には仮設住居へ移れる見込み。MSFは1日あたり20軒のペースで仮設住居の設置を進めている。

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規準を下回る生活環境――仏政府は介入せず

ダウン症の息子(4歳)を抱いて自宅用テントに帰る滞在者 ダウン症の息子(4歳)を抱いて自宅用テントに帰る滞在者

バロック・キャンプの滞在者の出身国は、イラク、イラン、シリアのクルド人自治区が多数を占めている。また、アフガニスタン、クウェート、ベトナムの出身者も確認されている。

旧キャンプは、推定人口2500人に対し、トイレが42基、シャワーが48基、飲料水の給水ポイントが2ヵ所しかなく、夜間の照明もなかった。真冬は気温がマイナス7度にまで下がる環境だが、暖を取る手段はたき火しかなかった。こうした環境は、難民キャンプの設置基準を下回るものだ。

また、滞在者には子どもや妊婦など医療を必要としている人も多く含まれているが、フランス政府はキャンプへの介入を拒んできた。そのため、グランド=サントの首長は2015年12月、MSFに支援を要請した。

新キャンプはリニエールに設置された。移転に際し、滞在者にはMSFが事前に説明を行った。新規キャンプへの入居・退出は自由で、仮設住居は木造で提供される。また、住居区画ごとにトイレと温水シャワーを含む衛生設備が設置される。

また、子どもが100人以上いることから、地元の援助団体が学校や遊技場の設置を進めているほか、調理場も整備される予定。各世帯の生活の最低限のニーズを満たすだけでなく、公共生活の改善も目指す。MSFは他団体と協働し、新キャンプでも医療提供を行っていく。

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