国際女性デー:深刻な性暴力被害、MSFができることは?

2016年03月08日掲載

注意:本記事は性暴力に関する情報を含んでおり、被害に遭われた経験をもつ方にフラッシュバックなどを引き起こすリスクがあります。

3月8日は国際女性デーです。

性暴力の被害にあって妊娠した女性MSFのもとで診療を受けている 性暴力の被害にあって妊娠した女性
MSFの診療を受けている(証言者とは直接関係ありません)

性暴力の問題はどの国でも、いずれの社会的階級でも、家庭でも、地域社会内でも起こり得る深刻な問題だ。特に、貧困地域や貧困層、紛争地、難民キャンプなどの避難場所、移住や避難の途上、自然災害の被災地などでの増加が目立つ。被害者の多くは若年層だ。

国境なき医師団(MSF)はこうした傾向を強く懸念している。性暴力問題への対応は複雑だ。被害者は長期にわたり、治療・心理面での影響を受け続ける。また、被害者の性別の割合は極端に「女性」に偏っている。MSFは2014年の1年間だけで、1万1000人以上の性暴力被害者を治療した。

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被害者の大半は18歳未満――全活動地で被害者対応を導入

性暴力の被害者が心理療法の一環で描いた"私の将来"
(ジンバブエ)
描いた少女(12歳)は手伝いを頼まれて向かった
近所の家で被害に遭った


描いた少年(14歳)はサッカーを観に行った
ショッピング・センターで被害に遭った

MSFは2014年、29ヵ国で性暴力の被害者に対応し、そのプロジェクト数は91に上った。被害者の大半は18歳未満だった。性別では90%以上が女性。一方、10%未満だが男性の被害者もいた。出身国別では、ケニア、コンゴ民主共和国、ジンバブエの3ヵ国だけで3分の2を占めていた。

MSFが被害者に提供している援助は治療と心理ケアで、すべて無償だ。また、守秘義務も徹底されている。被害者の苦しみを和らげ、心身の回復と日常生活の再開を手助けすることが目的だ。ただ、MSFが活動対象としている国・地域の多くでは、MSF以外の諸機関・団体からこのような援助を受ける機会が限られている。

そのため、MSFでは、性暴力被害への対応を、すべての婦人科関連の診療活動に含め取り組みを進めている。また、緊急対応の一環にも含めている。例えば、2014年には、中央アフリカ共和国で提供している全ての活動に、性暴力被害への対応を加えた。また、地域の小規模な診療所単位で看護師への研修を行い、心理面の応急措置を含めた1次治療を住民にとって身近な存在とするための取り組みも行っている。

地域での啓発活動を重視、被害者の社会的支援も

被害者が来院しやすくなるように、MSFの取り組みを知らせることにも力を入れている 被害者が来院しやすくなるように、
MSFの取り組みを知らせることにも力を入れている

MSFの診療記録は、全ての活動地で性暴力が存在していることを強く示唆している。被害者が来院しないからといって、被害者が存在していないわけではない。来院するまでの"障壁"は多いと思われる。そのためにも、アウトリーチ活動(※)でMSFの取り組みを伝えることが重要だ。さらに、性暴力被害を被害者の"堕落"に原因があるかのように扱う根強い偏見を断つためにも非常に重要だ。

  • 医療援助を必要としている人びとを見つけ出し、診察や治療を行う活動。

MSFは短期の社会的支援も行っている。これは、被害者が諸機関・団体から長期支援を受けられるようになるまでの"つなぎ"を目的としている。さらに、性暴力の診療に対する提言にも力を入れており、国・地域・援助団体などの専門家から一般人まで、幅広い対象に呼びかけている。

被害者の信頼を得るところから/ジュリアナ・ナンブロ(看護師)

MSFのジュリアナ・ナンブロ看護師ジンバブエの性暴力対策プロジェクトに従事している MSFのジュリアナ・ナンブロ看護師
ジンバブエの性暴力対策プロジェクトに従事している

MSFがジンバブエのムバレ地区で行っている性暴力対策プロジェクトに参加しています。泣いている性暴力の被害者を診療するのは簡単なことではありません。人道精神に満ちた強い心が必要です。

被害者が笑顔を見せるようになると、順調に回復していると思う人もいるでしょう。しかし、内面ではずっと苦しみながら、気丈にふるまっているだけということもあるのです。完全に信頼できると思える人に体験を打ち明けられるようになるまで地獄のような日々が続くのです。

ムバレ地区の診療所で被害者への包括的な治療と心理ケアを提供することは、私のナース・カウンセラーの経験の中でも簡単なことではありませんでした。つらい体験をし、明るい未来への希望を失ってしまった人に接するのですから。被害者は自尊心を傷つけられ、身近な人に裏切られ、自分の存在意義や他者への信頼を失っているのです。

人生のさまざまな機会が失われたと悲観する被害者は大勢います。例えば、望まない妊娠、HIVの感染、性感染症、身体の傷、心的外傷、学校に通えなくなるなどのことで苦しめられているのです。

被害者と心を通わせるためには、傾聴を心がけ、思いやりと人道的な心を持っていなくてはなりません。信頼関係を築くことができれば、相手は心を開いてくれます。その瞬間から、被害者が抱えている問題についてより深く理解できるようになるのです。

「私は前に進んでいます」/マリアさん(仮名、コロンビア出身)

性暴力の被害に遭い、MSFのもとで治療を続けている女性(証言者とは直接関係ありません) 性暴力の被害に遭い、MSFのもとで治療を続けている女性
(証言者とは直接関係ありません)

あの男たちは飲み物をおごってくれると言ってきたのです。こんなことになるなんて思いもせず、飲んで、意識がなくなって、気がついたときには服を着ていませんでした。何人から暴行されたか分からないほど……。

私はMSFの病院に入院しました。守秘義務が徹底されていて、ほかの病院よりも安全だと思ったからです。入院してからも眠れない日が続き、いつも泣いていました。

今はずいぶんよくなりました。事件の前の私に戻れているような気がします。事件の記憶はもう必要ありません。二度と立ち直れないと思っていた時期もありましたが、神のご加護もあって恐怖は消えました。

私は前に進んでいます。人生はもう終わったと思っていましたが、そうではなかったのです。

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