レソト: 無償の産科医療で効果、妊産婦死亡率が大幅減

2015年11月11日掲載

MSFの無償の産科医療で妊産婦死亡率が大幅に低減した MSFの無償の産科医療で
妊産婦死亡率が大幅に低減した

アフリカ南部、周囲を南アフリカ共和国に囲まれている内陸国レソト。妊産婦死亡率が世界で最も高い国の1つだ。国境なき医師団(MSF)はこの国で、病院で安全に分娩する医療を無償で提供し、陣痛や出産時の死亡率を大幅に減らすことに成功した。

この活動により、MSFの母子保健・産科医療プログラムは、比較的低いコストで大きな効果を得ることができる公衆衛生上の取り組みとして位置づけられることが明らかとなった。

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病院での出産数が45%増

MSFがロマ病院で無償の母子保健・産科医療を開始してから1年足らず。この病院で出産する女性は45%増となった。この結果は、出産費用が支払えないために来院できなかった女性が多くいたことを裏づけている。レソトでは、推定で女性の40%が、専門技能を持つ助産師などの介助がない状況で自宅出産している。

レソトと南アフリカ共和国でMSFの副医療コーディネーターを務めるアミール・シュロフィ医師は「命を生み出すために、別の命を引き換えにする必要はないはずです。しかしレソトでは、出産は大変な経済的負担をとるか、命を落とすリスクをとるか、という選択になっているのです。診療所レベルと、病院レベルの両方で無償の母子保健・産科医療を受けられれば、比較的低いコストで公衆衛生上の大きな効果を得られるのです」と話す。

レソト全土で出産費負担をゼロに

世界銀行の統計では、赤ちゃん10万人あたりの死産数は推定600人~1200人とされている。また、妊産婦死亡は多くの場合、出産前後の合併症が原因となっている。敗血症(34%)、中絶後の合併症(20%)、閉そく分娩・遷延分娩(14%)、妊娠高血圧症候群(12%)などが合併症の上位を占めている。これらは病院レベルの医療体制があれば管理できるものだ。

病院で出産するには、子ども1人あたり最低でも10ドルが必要となる。レソトの農村部では1ヵ月分の収入に相当する額だ。MSFの試算では、こうした状況を改善するために無償の母子保健・産科医療を導入しても、保健分野の人口1人あたりの支出増は1%未満で済む。

レソトでMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるイェスパー・ヒルデブラント・ブリックスは「MSFの取り組みは、病院出産の自己負担ゼロが大きな効果につながることを明らかにしました。MSFは現在、レソト全域で病院出産の自己負担をゼロとするように現地政府に働きかけています」と話す。

MSFは2006年にレソトで活動を開始。HIV、結核、母子保健・産科医療分野で保健省を支援している。ロマ病院でのプログラムは軌道に乗り、引継ぎへと向かっている。プログラムの終了後、2015年末までにレソトを離れる予定だ。

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