チュニジア/リビア: MSFと漁業者、漂流船の救助で協力

2015年09月22日掲載

海難救助研修の一環で行われた模擬訓練 海難救助研修の一環で行われた模擬訓練

欧州を目指して簡素な漁船やゴムボートに乗り組み、地中海を漂流して救助される難民が後を絶たない問題で、国境なき医師団(MSF)は、イタリアの対岸に位置するチュニジアリビアの漁業者や諸機関・団体を対象に、海難救助の能力を高めるための研修を行った。

チュニジアは密出国ポイントの1つとなっており、地元の漁業者が漂流船を救助するケースが増えている。そのため、MSFは港町のザルジスで研修を開催。6日間で116人が参加した。

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MSF・赤新月社・漁業者が連携

MSFの研修を受ける漁業者たち MSFの研修を受ける漁業者たち

2015年8月27日、チュニジアの隣国リビアのズワラー沖で木造船が転覆し、200人が水死した。MSFは感染制御のための物資を提供し、MSFの研修を受けたリビア赤新月社が遺体の管理を引き受けた。また、8月30日には、130人が乗っていた船がチュニジアの漁業者によって救助された。この漁業者もMSFから研修を受けていた。ザルジスに運ばれた130人は、そこでMSFの診療を受けた。

MSFの研修コーディネーターを務めるヴィエット・ヴァンドルメルは「縁まで隙間なく人が乗っている船が沈みつつあるとき、その救助は多くのリスクを伴う危険な作業となります。乗船者のなかには」泳げなくてパニックになっている人も含まれています。命を落とされた方のご遺体は尊厳をもって扱われなければなりません。また、地域社会の健康に影響を与えてもなりません。MSFと、リビアやチュニジアの関係者は、意見交換などを通して遭難者の救助体制を拡充しています。漁業者が困難な状況での救助に直面しながらもモチベーションを保っていることに感銘を受けています」と話す。

「私たちには人命救助の義務があると思っていますから」

チュニジア・ザルジスの港 チュニジア・ザルジスの港

チュニジアの漁業者は以前から、大勢の人を乗せた漂流船から人びとを救助し、自分たちの漁船に乗船させて命を救ってきた。MSFの研修を受けた人のなかには、いつも操縦しているボートよりもはるかに大きな全長40mの船で、数日間単位で外洋に出て捜索・救難活動を行っている人もいる。

ザルジス出身の漁業者、ヌルディン・アシュルムテントさんは「漂流船や遺体を見かけることが増えましたね。5年ほど前に12人の遺体が浜に打ち上げられていたのが最初だったかな。網を引き上げたら遺体が入っていたこともある。丁重に弔って埋葬しているよ」と証言する。

漁業者は研修で救助作業の手順を教わる。漂流船との交信方法、イタリアの海上救助調整本部(MRCC)への応援要請、救命胴衣など救助と保護に必要な機材の使用方法、感染予防のために体液との接触を防ぐ方法などについて学んでいるのだ。

漁船に整備工として乗船しているヤネス・ベシリヤネスは、満員のボートが沈みかけているところに遭遇したことがある。「置き去りにするわけにはいかず、一緒に仕事をしていた漁船2隻に連絡をとって助けを呼びました。みなで力をあわせて救助し、人びとを3隻のボートに振り分けました。救助した人びとは大変おびえていて、落ち着かせてあげなければなりませんでした。救難活動でロスした操業時間を数時間におよび、その分は損失となるわけですが、私たちには人命救助の義務があると思っていますから」と話す。

リビア沿岸でも救助件数が増加

一方、リビア沿岸も欧州への移住を望む人びとの出航ポイントとなっている。そのため、地元の漁業者が漂流船に遭遇するケースが増えている。

進んで救助活動に協力している漁業者がいる一方で、「リビア領海には近づきたくない」と話す漁業者もいる。密出国の斡旋業者に船が襲撃される事態を恐れているのだ。

地中海を渡って欧州を目指した人びとの犠牲者総数は調べようもないが、今年だけで少なくとも2498人の死亡が確認されている。

ヴァンドルメルは「悲劇はこれからも繰り返されるでしょう。欧州へ避難しようと必死になっている人は大勢いるでしょうから。捜索・救助活動で命は助かりますが、これは長期的な解決策ではありません。EUは、安全で合法的に欧州に移動できる方法を打ち出し、人びとが命を賭けて危険な航海をしなくてもすむように対策立てる必要があります」と話す。

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