シリア:―「手持ちのもので最善を尽くす」――内戦下の医療援助

2013年07月26日掲載

シリアでは、救急医療の必要な人が増え続けている。国境なき医師団(MSF)は国内で病院6ヵ所と診療所4ヵ所に加え、複数の移動診療プログラムを運営している。この医療活動で毎日数十人の命が救われていることは疑いない。一方、治安が極めて悪いため、活動範囲は限られている。医療の提供がごくわずかにしか行われていないか、またはまったく行われていない場所が各地にある。

内戦勃発から2013年6月末までに、シリア国内のMSFチームが行った診療は5万5000件、外科手術は2800件、分娩介助は1000件を超える。また、周辺各国のシリア人難民にも14万件以上の診療を提供している。

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基幹病院の周囲が戦線に

シリア国内の病院でやけど患者を治療するMSFチーム

シリアのMSF病院の1つで活動するスティーブ・ルービン外科医は「内戦前のシリアでは、質の高い保健医療が受けられました。シリアの人びとの多くが当時と同水準の医療を切望しています。ですが、MSF以外の医療施設が行っているのは"戦傷治療"です。そこで、唯一の選択肢であるMSFの施設に、その他の傷病者がやって来るのです」と説明する。

ルービン医師の病院はMSFの活動の典型だ。内戦前は、主要高速道を20分ほど走ったところに大きな基幹病院があった。基幹病院は今も存続しているが、その途中が内戦の最前線となり、多くの人が通院を阻まれている。代替となる基幹施設として、MSFは使用されていない養鶏場を仮設病院へと改築した。

爆弾の破片による負傷だけでなく、一般的な健康問題を抱える人も数え切れない。平時であれば完全に管理可能な病気でも、通常の保健医療が突然利用できなくなる戦時には瞬く間に人命を奪うことがある。糖尿病、高血圧、ぜんそく、周産期合併症のいずれについても悪影響が生じている。

ルービン医師は「私たちの手術室は空気膨張式テントです。必要なものすべてがそろっているわけではありませんが、何とかしています。こう自分に言い聞かせるのです。手持ちのもので最善を尽くそうと。そして、できるだけたくさんの命を救うのだと」と話す。

学校を診療所に改築、月4000件を診療

MSFは近隣の学校を改築し、外来診療施設も開設。他地域の激しい戦闘を逃れて来た大勢の人の集まる村々で週1回、移動診療も行っている。これらの活動を通じ、月平均約4000件の診療と約50件の外科手術を提供中だ。

この外来診療施設で救急部門を担当しているシリア人看護師は 「働き蜂のように働いています。この病院は紛争に起因する患者の受け入れだけでなく、風邪や救急、小児疾患などの一般的な健康問題から輸血まで、あらゆることに対応しています。通常の病院と遜色ありません」と話す。

包帯交換に訪れた女性(36歳)は、周辺地域ではなかなか医療が受けられないという。 「問題は"日常生活"が送れないことです。薬も、病院のような治療施設もありません。私の家族も、おじ2人と母をはじめ大勢が体調を崩していますが、なかなか治療を受けられません。この辺りでは薬が希少物資になってしまっているためです」と話す。

女性は一呼吸おき、こう言い添えた。
「この病院がここになかったら、私も今ごろ、生きてはいなかったでしょう」

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