いま、地中海で起きていること――MSFによる救助活動開始から100日

2015年08月28日掲載

中東やアフリカから欧州へ、難民認定を求めて地中海をわたってくる人びとが後を絶ちません。古い漁船や屋根もないような簡素な木造船に、身動きが取れないほどの人数が乗り込んでいる船内では、体調を崩したりけがをしたりしてもどうしようもできません。

国境なき医師団(MSF)は、こうした危険な航海が増えていることから、2015年5月に地中海沿岸諸国や他のNGOと連携して救助活動を開始しました。それから100日、ここまでの取り組みの結果と危険な航海を決意せざるを得なかった人びとの声をお伝えします。

MSFが救助した船に乗っていた人数(2015年5月~8月)

MSFに救助されたり、自力でギリシャやイタリアにたどり着いたりした人びとの証言から、多くの人が過酷な船旅を経験していることがわかっています。航海中に亡くなった人も少なくありません。

どうにか欧州に到着した人びとも、難民として登録されなければ"不法入国"扱いになってしまいます。そこで、難民登録を受けられる可能性がある国を目指し、多くの人が過酷な旅を続けています。

しかし、その道中もまた過酷です。ギリシャ・マケドニア国境付近では、国境警備が強化されたために先へ進めなくなった人が大勢滞留しているところへ、連日、新たな到着が続く事態となっています。MSFはこうした地域にもチームを派遣し、診療・心理ケア・救援物資の配布などを行っています。

私たちはなぜ危険な航海を決意したのか――アマさん(38歳)の証言

危険な航海を経てギリシャにたどり着いたアマさん(右)と長男(左) 危険な航海を経てギリシャに
たどり着いたアマさん(右)と長男(左)

私と夫(49歳)はシリアの首都ダマスカスの出身です。長男(22歳)、15歳、10歳の子どもたち3人を連れ、トルコから地中海をわたってギリシャのコス島にたどり着きました。長男は身体が不自由で歩くことができず、介護が必要です。

シリアからトルコまでやってきて、ここから合法的に欧州に入りたかったのです。しかし、手を尽くしましたがだめでした。どこからの助けもなく、最後の手段が密航だったのです。密航業者に接触し、事情を説明しました。航海の間、長男を寝かせるベッドが必要だったのです。

業者には「手配できないこともない」と言われました。請求された費用は、家族全員分で計1万ドル(約120万円)。業者の言い値を受け入れるしかありませんでした。

船は闇にまぎれて出港し、4時間後、ギリシャのコス島についたのです。夫は長男を背負い、海岸から険しい土道をよじ登っていきました。疲れ果てている父親の背中で、長男は「僕をここに置いていってよ!」と言っているのが聞こえました。

大変な状況でしたが、幸運なことに道中で同じくシリアから逃れてきた若者たちに出会ったのです。彼らが私たち一家に手を差し伸べてくれました。最終的に、海岸から街にたどり着くまで14~15kmほどは歩いたように思います。

フォトギャラリー:欧州での安全な生活を夢見て……

中東や北アフリカから欧州まで、古い漁船や時にはゴムボートで、命がけで地中海をわたってくる人びとがいます。終わらない紛争や抜け出せない極度の貧困で身の危険を感じた人びとが、生き延びて安全な生活を手に入れるための"最後の手段"と考えているのです。その航海途中で亡くなる人、体調を崩す人も後を絶ちません。救助された人びとの様子とMSFの取り組みを写真でお伝えします。

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