パプアニューギニア:結核対策の開始から1年、見えてきた課題

2015年07月29日掲載

活動責任者を務めたバンジャマン・ゴーダン

結核の罹患率の高さが問題となっているパプアニューギニアで、国境なき医師団(MSF)は同国保健当局と連携し、結核対策プログラムを進めている。湾岸州の州都ケレマでは活動を立ち上げてから1年が経過、首都ポートモレスビーでは4ヵ月前から活動を開始した。両拠点では、結核治療モデルの確立(特に湾岸州では孤立地域でのモデル確立)や、感染制御・診断技術の改善、診断・治療の早期開始ならびに患者の治療継続のサポートなどに力を入れてきた。

MSFが保健当局との緊密な連携の上で、結核対策の戦略を推し進めてきた結果、政府は結核治療を向上させる仕組みづくりに一層の関心を寄せてきている。同国でMSFの活動責任者を務めたバンジャマン・ゴーダンは、MSFと政府、地域コミュニティの信頼関係が深まってきたとみる一方で、「対策を進める上での課題も見えてきた」と話す。

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より良い人材を求めて

母親に付き添われてケレマの病院で
結核の検査を受ける少女

最も頭を悩ませていることは、活動を支える現地採用のスタッフの確保だ。同国では保健・医療従事者の数がそもそも少なく、人材が集まりにくい傾向にある。さらに、800以上の異なる部族で構成されるパプアニューギニア特有の地域性や、家賃や物価が高いことも、多くの人が出身地から離れた場所での暮らしや就労を好まないことに影響している。

そこで、MSFは大学などに出向き、学生を対象に結核の問題やMSFの取り組みに関する説明会を行っている。早い段階からMSFの活動に関心を持ってもらうことで、将来的な人材確保を安定化させる狙いがある。

また、地域住民を結核患者の「治療サポーター」として雇用したり、既存の診療所よりも遠隔地域に 「救護所」を設置するなどして、現地スタッフが働きやすい環境で活動を補完できる仕組みを試みている。

啓発活動で意識改革

一方、結核に関する正しい知識や、診断や治療に関する情報の普及の遅れや、根強い偏見が残っていることも結核対策の進展を阻む要因となっている。MSFは住民に対し、結核の治療が受けられること、早期の診断と治療開始が重要であることについて啓発活動に取り組んでいる。しかし、多種族、多言語という特性からマスメディアの数が少なく、ラジオのみが公共の情報源としての主要な役割を果たしている地域が多く、効率のよい啓発活動を行うには課題が多いのも実情だ。

MSFはパプアニューギニアで1993年から活動。現在は湾岸州および首都ポートモレスビーで結核対策プログラムを展開。保健省および国家結核対策プログラム(NTP)と緊密に連携し、同国の他地域でも導入できる効果的で持続可能な結核プログラムの確立を目指している。結核対策以外では、南ハイランド州タリとポートモレスビーで、家庭内暴力・性暴力被害者のためのプログラムを提供している。

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