ネパール: 震災から3ヵ月――MSF、活動を縮小へ

2015年07月24日掲載

MSFの移動診療を受ける被災者たち MSFの移動診療を受ける被災者たち

ネパールで2015年4月25日に起きた大地震から3ヵ月が経った。亡くなった人は8500人、負傷者は2万人と推定されており、国境なき医師団(MSF)は現在も被災地で医療援助を続けている。復興は道半ばで援助ニーズもまだ残っているものの、ネパール保健省などが独力で行えることも増えてきたため、MSFは活動を縮小しつつある。

ただ、数ヵ所の避難キャンプで疫学的モニタリングを継続する。また、複数の病院で外科処置と術後ケアの支援を続ける。震災への緊急対応予算は1018万9484ユーロ(約13億8169万4000円)で、これらは世界中の支援者からの寄付でまかなわれている。

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援助から取り残された山岳地帯へ

MSFから受け取った援助物資を運ぶ被災者 MSFから受け取った援助物資を運ぶ被災者

MSFは地震発生の48時間後にはカトマンズに到着しており、ヘリコプターでの調査を開始していた。また、別働のチームもインド北部から陸路で震源地に近いゴルカ郡に到着していた。現地では住民相互の援助が大々的に始まっていたため、MSFは援助が遅れがちな山岳地帯に注力した。5月12日にカトマンズ東部のドラカ郡とシンドゥパルチョーク郡の間を震源とする2度目の大地震が起きたため、MSFは活動規模を倍増させた。

MSFの被災地への移動手段は主にヘリコプターで、これまでに診療2500件以上、心理ケア7000件以上を提供した。また、急患対応は240件、理学療法セッションは1200件に上る。このほか食糧、テント、調理器具、衛生用品を約1万5000世帯に配布した。

モンスーンの前に仮設住宅を

ヘリで空路から、ロバで陸路から、被災地へ物資を運ぶ ヘリで空路から、ロバで陸路から、被災地へ物資を運ぶ

MSFが援助に向かった村では多くの家屋が全壊しており、豪雨をともなうモンスーン(季節風)が迫る中、テントなどの住居資材の配布と衛生活動は優先事項でもあり、時間との闘いでもあった。

MSFは家族用テント6000張、トタン板1万3000枚、住宅再建キット3000組を山岳地帯の集落に運び、より長期の使用に耐える住居再建を援助した。モンスーンの時期に入った時点では、ダディン郡、ヌワコット郡、ドラカ郡、ゴルカ郡、ブディ・ガンダキ渓谷で計約1万世帯に住居資材の配布を済ませていた。

患者をヘリで空路搬送

チュプチェットのMSF診療所から地域の中核病院へ転院することになった80歳の女性 チュプチェットのMSF診療所から地域の中核病院へ
転院することになった80歳の女性

震災直後には、緊急の医療援助が特に必要とされていた。山岳地帯からの空路搬送はネパール軍のヘリで行われた。重体の患者を優先的に搬送する活動が大規模に行われた一方、命に別状がないと判断された患者は村から動けない事態が続いていた。また、一部の病院は損壊がひどく、治療が行えない状況だった。

MSFはヘリによる移動診療を行い、急患を病院に搬送する役割も担った。この移動診療はゴルカ郡、ダディン郡、ヌワコット郡、ラスワ郡、シンドゥパルチョーク郡、ドラカ郡内で定期的に行われた。活動の重点は住民へのニーズ調査をもとに決定し、5歳未満の子ども、妊婦、心理ケアなどが中心となった。

追悼:ネパールの空から旅立った彼らへ

6月2日、移動診療の最中に起きた墜落事故で、MSFスタッフ3名とヘリコプターの操縦士が命を落とした。MSFは4名に深い哀悼の意を捧げ、MSFスタッフ3名の業績を振り返る追悼文を発表した。

地域医療を支えつつ復旧を支援

4月25日の地震から数日後、MSFの外科チームがバクタプル病院で活動を開始し、負傷者の治療のスピードアップに貢献した。5月3日にはダディン郡チュプチェットにテント式仮設診療所を設置。基礎診療、小手術、創傷感染に対応した。

ゴルカ郡アルガトでは5月8日に手術室、救急処置室、産科、蘇生室を備えた空気膨張式テント病院(20床)を設置。ネパール保健省が6月に病院の再建にこぎつけるまで、地域医療を支えた。このほかヌワコット郡のビダで保健省が運営していた野外病院の技術支援にあたった。

MSFは5月、カトマンズのネパール整形外科病院の支援にも着手した。ここは多くの負傷者の避難先となっている。MSFは医学的処置、理学療法、心理・社会面の支援で構成される術後ケアを7月末まで継続する予定だ。

現在も続く医療・人道援助

5月12日の地震の震源地であるドラカ郡では、チャリコット病院の外科部門の支援を続けている。またカトマンズの東に位置するカブレパランチョーク郡ドゥリケルの脊髄損傷リハビリセンターも支援している。いずれも支援期間は3ヵ月の予定だ。脊髄損傷リハビリセンターでは、地震で負傷した患者の術後ケアも行い、理学療法、創傷被覆、心理ケア、医学的な経過観察などの観点から強化している。

一方、カトマンズでもチーチパティ・キャンプの避難者7000人を対象に給水システムを設置。さらに、市内の多くの避難キャンプで衛生設備を立ち上げた。

MSFはモンスーンが過ぎるまでカトマンズで援助活動を続け、チーチパティほか2ヵ所のキャンプで保健省とともに感染症の流行に備える予定だ。これらのキャンプは今も人口過密で、不安定な生活環境となっている。

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