パレスチナ:ガザ紛争から1年――占領による非人道的な状況続く

2015年07月08日掲載

やけどを負いMSFの診療所で手術を受けた3歳の女の子
(2015年4月撮影)

パレスチナ・ガザ地区で51日間に及んだ紛争の勃発から1年が経過した。国境なき医師団(MSF)の診療所には現在も、イスラエル軍の攻撃で大怪我を負った何百人ものパレスチナ人が、複雑な再建外科手術とリハビリを求めて来院している。ガザ地区では患者の多くが子どもたちであり、人口のほとんどが人道援助に頼って生活している。ヨルダン川西岸地区(以下西岸地区)では日常的な嫌がらせや暴力によって心理的障害を患う人が絶えない。

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ガザ地区――被害者の多くは子ども

ガザの封鎖と包囲が続く中、紛争はつい先日終わったばかりのように見える。MSFの20年に及ぶガザと西岸地区での医療活動の歴史の中で、イスラエル軍の占領による苦しみがこれほど人びとの生活の一部になり、占領の終結だけがパレスチナ人の苦しみを和らげる方法であるとこれほど痛切に感じられたことはない。

1年前の軍事作戦による死者数は恐るべきものだ。2200人以上が死亡、1万1000人以上が負傷し、その内約7000人は女性と子どもだった。ガザと西岸地区でMSFの活動責任者を務めるエルワン・グリヨンは「ガザの8歳児は生まれた時からここが封鎖された状態しか知りません。また、既に4回もの軍事作戦を経験しています。そのうち2つは実に破壊的なもので、衝撃的な数の民間人の命を無差別に奪いました。紛争に関連した手術とリハビリを必要とする患者の大多数は、18歳未満の子どもたちです」と話す。

MSFの診療所は今も紛争で負った傷の合併症に苦しむパレスチナ人で満員だ。また、仮設住居や壊れた自宅で生活せざるを得ないために暖房や調理中の事故で重度のやけどを負った子どもたちも多い。紛争によって1万2000軒の家が損壊したほか、70ヵ所以上の医療施設が被害を受けた。

イスラエルによるガザ封鎖の影響で、物資の供給は止まっている。がれきと化した住宅の再建に必要な建設資材も手に入らない。イスラエルはセメントなどの建設資材を、転用可品目、つまり武器製造に使用される恐れがあるとして輸入に厳格な制限を課しているため、ガザでは再建される家がほとんどない状況となっている。

封鎖の結果、人びとは今もひどく危険な環境で暮らし、人口の80%が少なくとも生活の一部を人道援助に頼っている。失業率は全体で40%以上、若年層では60%以上に達し記録的な高さとなっている。

西岸地区――占領による心理的障害が顕著に

家に帰る途中に爆弾で負傷した34歳の女性
(2015年4月撮影)

国際社会で注目を集めてきたのは主にガザの紛争と今も続く封鎖による荒廃だが、西岸地区の占領もまた別の形の抑圧となって公衆衛生に悪影響をもたらしている。現在、イスラエル人による入植、検問所の設置、軍隊配備によって、パレスチナ人が住めるのは西岸地区の40%未満となっている。それに加え、絶え間ない侮辱や嫌がらせ、入植者が罰されることのない一方的な暴力、財産の搾取、当局による不当拘留などにさらされており、MSF心理ケアプログラムも、心理的障害を訴える患者で一杯となっている。

グリヨンは「スタッフからの話を聞くと、事実を述べるだけでも入植者やイスラエル軍は非難に値すると分かります。毎日のように患者を診ていますが、実に3分の1は13歳未満で、常に不安や恐怖を抱えています。イスラエル軍による夜襲や入植者からの暴力を受けているためです。一家全員同じ症状を抱えているケースを過去10年間診てきました。何も変わっていません」と話す。

非人道的な占領に緊急に取り組むべき

占領が続き政治的解決が全く進んでいないことで、ガザと西岸地区に住むパレスチナ人は、終わりのない暴力のループから抜け出せずにいる。この問題は、緊急に取り組む必要があり、「安全保障」の名のもとにイスラエルがとった措置は人道面への影響によって判断されなければならない。また、これらの政策を、明確にあるいは暗黙のうちに支持してきた国や国際機関も、この政策がもたらした人道的な損失を考慮しなくてはならない。イスラエルによる占領は、否定の余地がないほど甚大な被害をもたらしているからだ。

MSFフランス会長メゴ・テルジアン医師は「ガザと西岸地区の現状に関する責任について、パレスチナとイスラエルを同等に扱うことは誤りで、占領下のパレスチナで起きている暴力は誰の責任であるかという現実が見えにくくなるだけでしょう。『自己防衛』という巧言で領土を掌握して非人間的な占領を続けるイスラエルとその国際的支持者は、パレスチナ人を来る日も来る日も傷つけるシステムの体系化に手を貸し、暮らしと希望を脅かすとともに同じ未来を確約し続けているのです」と話す。

MSFは1989年からガザ地区で継続的に活動している。同地の医療体制では対応できない専門診療や、紛争による直接あるいは間接的な被害者に対応している。これまでに行ってきた医療活動は外科、術後ケア、包帯交換、心理ケア、作業療法と理学療法、手外科リハビリなど。西岸地区では心理ケア活動を運営。東エルサレムでは2011年から、ジェニン、ヘブロン、ナブルス、カルキリヤの行政区域では2000年から活動している。

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